米保守派、最高裁に不満噴出 中絶制限に違憲判決で

トランプ政権
北米
2020/6/30 18:30
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ロバーツ米最高裁長官はリベラル派に同調するケースが増えている=ロイター

ロバーツ米最高裁長官はリベラル派に同調するケースが増えている=ロイター

【ワシントン=中村亮】米連邦最高裁判所でリベラル派寄りの判決が相次いでいることに保守派が不満を募らせている。トランプ大統領は11月の大統領選で政権交代が起きれば最高裁のリベラル化が進むと危機感をあおり支持基盤である保守派の求心力を保つ構えだ。

最高裁は6月29日、南部ルイジアナ州で人工妊娠中絶を事実上大きく制限する州法は違憲との判決を下した。州法は中絶を実施する医療施設に対し、問題が起きた際に近くの病院に患者を受け入れてもらう協定を義務付けている。実際には協定に賛同する病院は少なく、中絶が困難になっているとの批判が出ていた。

米国では中絶の是非は保守派とリベラル派を二分する社会問題だ。今回の判決は中絶に反対する保守派の敗北になる。反中絶団体「スーザン・B・アンソニー・リスト」は29日、米メディアに寄稿し「判決は生命を大切にする運動にとって激しい失望になった」と指摘。同様の団体「生命のための聖職者」も「(判決は)中絶が女性に与える痛みを中絶賛成派が無視していることを再認識させた」と批判した。

保守派にとって衝撃が大きいのは、最高裁が保守に傾き、中絶反対が鮮明になるとの期待が大きかったからだ。最高裁は1973年に中絶を権利として認める歴史的判決を下し、各州が中絶を完全に禁止することは難しい。

そのため保守色が強い州では、胎児の心拍が確認できるようになった時点で中絶を禁止するなど、中絶を制限する法律を独自に制定。保守派は裁判になっても最高裁がこうした制限を認めるとの見方が出ていた。

ルイジアナ州の中絶規制法の判決のカギを握ったのは、保守派の判事とみられてきたジョン・ロバーツ長官だ。ロバーツ氏は中絶規制法に反対した理由について、2016年に南部テキサス州の同様の法律を最高裁が違憲とした判断に従ったと説明。中絶反対との立場は堅持している可能性が高く、中絶を巡って今後もリベラル寄りの判断を示すかは不透明だ。

ただ、ロバーツ氏は不法移民対策や職場でのLGBT(性的少数者)差別をめぐる判決でもリベラル派に同調した。保守派からはロバーツ氏について「もはや信用できない」(保守派団体関係者)との不満が募る。LGBT差別をめぐる判決では、保守派のニール・ゴーサッチ判事もリベラル派と足並みをそろえ、保守派から猛反発を浴びた。

調査会社ユーガブなどが6月21~23日に実施した世論調査によると、最高裁の支持率は共和党員の間で51%と1週間前に比べて17ポイントも下がった。リベラル寄りの判決が相次いだことが影響したとみられ、中絶をめぐる判決で一段と下がる公算が大きい。一方で民主党員による最高裁の支持率は56%と同26ポイント上がり、共和党員を上回った。

トランプ氏の選挙陣営は29日の声明で中絶をめぐる判決に関し「選挙で選ばれていない判事5人が民主的に決まった政策に政治的な意図を持ち込んだ」と批判した。「保守派判事の指名で記録を持つトランプ大統領を再選させることの重要性が浮き彫りになった」と強調した。

声明には大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利すれば最高裁のリベラル化が進むと警鐘を鳴らし、保守派の支持をつなぎとめる狙いがある。新型コロナウイルスや黒人差別反対運動への対応が不評で支持率が下がっており、個人の生活に深く関わる最高裁に保守派の関心をそらす思惑もありそうだ。

CNNテレビの調査によると、16年の大統領選で投票した有権者のうち70%が最高裁の判事任命を重要なトピックにあげた。11月の大統領選に向けて最高裁の行方にも有権者の大きな関心が集まる。

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