累計利益38億円のスゴ腕個人 乱高下相場にこう挑む
下落にも目配り 損失の拡大を防ぐ

日経マネー特集
2020/7/2 2:00
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コロナ関連や米中貿易戦争のニュースで株価が乱高下する相場が続いている。こうした難しい相場にスゴ腕の個人投資家はどう立ち向かっているのか。株式投資で40億円近い利益を上げてきた専業投資家に緊急インタビューした。

「今は相場の方向性を読むことよりも、個々の銘柄の業績動向を分析することに集中している」

日経平均株価が前週末比で500円超下落し、心理的な節目とされる2万2000円を割り込んだ6月29日の夕方。東京都内で会った専業投資家のテスタさん(ハンドルネーム)はこう話した。

テスタさんは、株の売買を翌日に持ち越さず、1日のうちに完結させるデイトレーダーの間ではスター的な存在だ。10~30円といったわずかな値動きを捉えて分や秒の単位で株を売買し、利益を積み上げていく。「スキャルピング」と呼ばれるこうした投資を実践して、億円単位の資産を築いた。ツイッターのフォロワー数は、16万人近くに上る(7月1日時点)。

テスタさんのツイッターアカウントの画面

テスタさんのツイッターアカウントの画面

投入できる資金量が限られるスキャルピングだけでは、膨らんだ資産を運用しきれなくなったため、2013年から時間軸の異なる他の投資手法も徐々に手掛けてきた。18年からはグロース(成長)株投資を本格的に展開。企業の業績などのファンダメンタルズ(基礎的条件)を分析して、業績の拡大が続く成長企業の株を買って中長期で保有し、値上がり益を狙ってきた。19年は10億円を超す利益を計上。2005年に800万円の元手で始めた株式投資で上げた利益の累計は、売却によって確定してきた分が約38億円。現在の取引の含み益を入れると、40億円以上になるという。

■コロナショック後の投資を悔やむ

冒頭の発言で相場の方向性は読まないと語ったのは、足元の株式相場が新型コロナウイルスの関連ニュースで乱高下を繰り返し、先行きのはっきりしない不安定な状態にあるから。だが、それだけではない。コロナショック後に実施した自身の投資に対する反省もあってのことだ。

テスタさんは、昨年と同様に成長株の買い持ち一辺倒で20年の投資をスタートさせた。コロナショックが起きる直前には、感染拡大に伴う相場の下落を警戒して、日経平均の先物を売り建てた。先物の売り建てでは、日経平均が下落すると利益が出る。この投資で、相場の下落によって保有株に生じる損失を軽減しようとしたのだ。しかし、意に反して日経平均は上昇。テスタさんはこれを受けて先物を買い戻し、売買を終了した。

そのままコロナショックの暴落に直面する。「コロナの影響は長引く」と考えたテスタさんは、保有株の中でコロナの影響を大きく受ける可能性が高い銘柄を投げ売りした。日経平均が1万9000円を割ったところで再び先物を売り建てて約3億円の利益を出したものの、運用資産はショック前から最大で約8億円も減少した。割合にすると2~3割の減少だったという。

この後、テスタさんはコロナ対策の外出自粛などを追い風にして業績を伸ばす企業の株を買う一方で、コロナの影響が大きいと見られる銘柄を空売りしたり、先物を売り建てたりして、相場の下落で利益を出すことを狙った。

「過去に経験したリーマン・ショックや東日本大震災の後の相場は、一度底を打って上昇した後、再び二番底に向かって下落した。今回もそうなるだろうと考えて、空売りや先物の売り建てのウエートを大きくした」と振り返る。

ところが、これが「裏目に出た」(テスタさん)。株式市場は予想とは反対に急回復。6月8日には2万3000円台を回復した。新たに購入した銘柄は値上がりしたものの、ショックによる負けを取り返すには至らなかった。

「相場の先行きは予測できないから読まないことを信条として、日経平均株価の予想を聞かれても『分からない』と答えてきた。それにもかかわらず、リーマンや震災の後の相場展開が強く思い出されて、相場の先行きを読んだ取引をして失敗した」と悔やむ。

■成長株では四半期決算による上昇を見込む

この反省から、テスタさんは自身の投資をすぐに見直した。相場の下落で利益を出す個別銘柄の空売りや先物の売り建ての比重が大きくなっていたのを修正。成長株の値上がりで利益を出す取引と、空売りや先物の売り建てによる取引の金額が同じになるようにした。

「今は空売りや先物の売り建てで利益を上げようとは考えていない。成長株の売買で生じる損失を軽減するのが目的だ」

テスタさんはこう説明し、次のように続ける。「今のところ、日本は他国に比べて新型コロナの感染者が少なく済んでいる。それが日本企業の再評価につながって、日本株が大きく上昇する可能性もある。一方で、感染が再拡大して大きく下落する可能性も残っている。今は値上がり期待の成長株投資と空売り、先物の売り建てのどちらかの比重を高めることはできない」

成長株投資では、コロナの影響が軽微もしくは追い風で、業績を伸ばす可能性のある銘柄を保有している。その一つが、フィリピン人講師によるマンツーマンの英会話レッスンをインターネット上で提供しているレアジョブ(6096)。これは、コロナの影響を追い風にする銘柄という見立てだ。「コロナの感染が再拡大して、外出が再び制限されても、それによって自宅で英会話を勉強する人が増えて業績が伸びる」と分析する。

一方、コロナの影響が軽微とみて保有している銘柄の一つが、自治体向けに様々なサービスを提供しているホープ(6195)だ。自治体の発注は景気動向に左右されずに安定していることに加えて、同社の主業の一つである自治体向けの電力小売りでは、電力の販売価格が変動せずに一定である点にも着目した。

「値上がり期待の銘柄は、いずれも8月に発表される4~6月期決算で良好な数字が出て、それで大きく上昇するとみて購入した。決算が発表される前に株価が想定した水準まで上がってしまえば、発表を待たずに売却して利益を確定する」とテスタさんは話す。

■「資産が4割減ったら引退」を守る

「リーマン・ショックや震災の直後の相場では、今回ほどには資産は大きく減らなかった。資産が減るスピードも経験したことのない速さ。資産が4割減少したら、株式投資から足を洗うと決めているが、それが少し現実になる可能性が出てきて、苦しい状態が続いた。引退せずに済んで、ほっとしている」

テスタさんは取材の終盤にこうした心情を吐露した。「株式投資はやはり楽しい。まだ続けたいから、コロナが収束しても、成長株一本やりには戻らず、空売りと先物の売り建てでヘッジをかけ続けるかもしれない」

株式投資は生涯続けられるのではないのか。こう水を向けると、「株における自分の能力が衰えてきているのを感じている」とテスタさんは漏らした。

「若い頃に比べて、世の中の動向に対する感度が下がってきている。例えば、任天堂の新作ゲーム『あつまれ どうぶつの森』がヒットしたが、どうぶつの森シリーズはプレーしたことがなく、今回の流行にもついていけなかった。力の衰えを感じながらも、それにあらがって勝ち続けようとしている。ずっと勝ってきたからといって、投資が楽になることはない。いつも苦しんでいるからこそ、うまくいったときに喜びを感じられる」と続ける。

「いつかやめなければならないときが来る。やめずにずるずると続けたら、資産を全て失いかねない。4割減ったら引退というのは必ず守りたい」

取材の最後に出た「投資をいつどうやめるか」という引き際の問題。これも、全ての投資家が考えなければならない重要な問いである。

(中野目純一)

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