強制不妊、賠償認めず 「憲法保護の自由侵害」東京地裁

社会・くらし
2020/6/30 14:26 (2020/6/30 17:30更新)
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旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして、東京都の男性(77)が国に3千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。伊藤正晴裁判長は手術について「憲法で保護された自由を侵害する」と指摘した一方、20年で賠償請求権が消える「除斥期間」を理由に請求を退けた。原告側の弁護団は控訴する方針を示した。

東京地裁が原告の請求を棄却し、掲げられた「不当判決」の垂れ幕(30日、東京地裁前)

手術を受けた男女24人が全国8地裁に起こした訴訟の1つで、判決は2件目。1件目の2019年5月の仙台地裁判決は旧法を違憲と認めた一方、国の賠償責任は認めなかった。東京地裁判決は旧法の違憲性については言及しなかった。

今回の原告の男性は1957年春ごろに宮城県内の病院で旧法に基づいて不妊手術を受けた。手術の公的な記録は廃棄されたが、手術の形跡を認めた医師の意見書を基に18年5月に提訴した。

判決は、男性には遺伝性の疾患などは認められず、手術は誤りだったとして国に対する損害賠償請求権を認めた。実子をもつかどうかという意思決定は幸福追求権を定める憲法13条で保護される自由に当たるとし、強制不妊手術は「自由を侵害する」と指摘した。

そのうえで不法行為から20年たつと損害賠償の請求権が消える除斥期間を巡り、期間が始まる起算点を検討した。手術を受けた人々が被害を訴え出る難しさを考慮したとしても、差別的条項を削除して旧法が改正された96年には提訴は可能だったと判断し、除斥期間が経過したと結論づけた。

原告は救済策や被害回復の立法措置を怠ったとして厚生労働相や国会に責任があるとも主張したが、判決は訴えを退けた。

旧優生保護法は「不良な子孫の出生防止」を掲げ、知的障害や精神疾患などを理由に不妊手術を認めた。不妊手術を受けたのは約2万5千人で、うち約1万6500人は強制だったとされる。

不妊手術を巡る訴訟などを背景として19年4月、一時金320万円を被害者に支給する救済法が議員立法で成立した。「反省し、心から深くおわびする」との文言や、国による立法過程や被害実態の調査が盛り込まれ、衆参両院の事務局は今年6月に調査を始めた。

菅義偉官房長官は30日の記者会見で、判決について「国家賠償法上の責任の有無に関する国の主張が認められた」と語った。旧法の下で優生手術などを受けた人に対し一時金を支給する法律が昨年4月に施行されたと説明した上で「着実な支給に向け全力で取り組む」と述べた。

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