名古屋駅前の路線価、27年ぶり高さ コロナ前1月時点

2020/7/1 11:00
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国税庁が1日発表した愛知、岐阜、三重県の路線価(2020年初時点)によると、名古屋市内で最も高かったのはJR名古屋駅前の1平方メートルあたり1248万円だった。オフィス需要の活況を背景に、1993年(1500万円)以来の水準となる。春先以降、新型コロナウイルスの流行で経済活動は停滞しており今後、地価に影響が出る可能性がある。

中部3県でトップだった名古屋駅前(名古屋市中村区)

中部3県でトップだった名古屋駅前(名古屋市中村区)

路線価は主要道路に面した土地の1月1日時点の評価額で、相続税や贈与税を算定する基準となる。

JR名古屋駅前(名古屋市中村区名駅1丁目)の伸び率は前年比13%と、前回調査(10.4%)からさらに上昇した。不動産テナント仲介大手の三鬼商事によると、19年は年間を通じて駅前のオフィス需給が逼迫し、空室率は2%を切っていた。川口真弥名古屋支店長は「コロナ禍前の19年末までは空きビルが高価格ですぐに売却されるなど、駅周辺の需要は高かった」という。

栄地区は商業施設を備えた高層ビルの建設構想、金山地区ではターミナル駅としてマンションの建設計画が相次いでいる。路線価は全般に堅調だったが、一等地の地価上昇には一服感が見られる。

前回調査で23.5%と高かった名古屋三越栄本店前(名古屋市中区栄3丁目)の伸び率は、10.4%に鈍化。21.9%だった金山地区(名古屋市熱田区金山町1丁目)も9.8%だった。三幸エステート名古屋支店の妹尾哲也支店長は「これまで価格の急激な上昇が続いてきた反動もあり、ここにきて伸び幅が縮まった」とみる。

愛知県全体では1.9%と8年連続の上昇だった。駅前再開発が進む郊外の人気が高い。JR刈谷駅前(刈谷市桜町1丁目)と名古屋鉄道の豊田市駅前(豊田市西町1丁目)が6~7%台と高水準で伸び続けている。

半面、岐阜は0.6%減で12年連続、三重は0.8%減で28年連続の下落だった。急上昇するのは訪日外国人(インバウンド)に人気のホテル、飲食店が並ぶ地域にとどまる。JR高山駅東側(岐阜県高山市上三之町)の伸び率が10%と、前年から5ポイント超上がった。伊勢神宮付近(三重県伊勢市宇治今在家町)は6.7%だった。コロナ禍で観光需要の回復が鈍いなか今後、地価の下落につながる懸念がありそうだ。

■コロナ禍にリニア延期、地価一服の懸念も

8年連続で上昇してきた愛知県の路線価に先行き不透明感が出ている。新型コロナウイルスの脅威で景気の後退懸念が強まり、再開発の後ろ盾だったリニア中央新幹線は2027年開業が危うい情勢だ。

地価は景気変動にやや遅れて上下する傾向がある。08年秋のリーマン・ショックを受け、JR名古屋駅前の路線価は09年に08年比4%減の1平方メートルあたり728万円、さらに10年には20%減の581万円まで下がった。リーマン直前の好況期にオフィスビルが大量供給された反動も、その後の地価安に拍車をかけた。

足元も当時と状況が似ているとの見方は多い。コロナ禍で4~5月を中心にサービス業で需要が激減した。景気悪化を見越し、ABホテルが岐阜県内で2店舗の出店計画を中止。居酒屋やステーキ店を運営するアトムは、名古屋市内の2店舗を閉める方針を決めた。

移動制限が全面的に解除された6月19日以降も、観光や個人消費の回復は鈍い。テレワークを継続する企業は多く、出張や会食の需要は底ばいが続く。不動産鑑定士の小森洋志氏は「サービス業へのダメージを考えると、リーマン当時より不動産価格の下落は速まる可能性がある」と話す。

リニアの開業遅れも影を落とす。名古屋市内を中心に、リニアの27年開業を前提に進んできた再開発プロジェクトは多い。今後、人やモノの流れが当初の期待ほど伸びなければ、不動産の採算ラインは下がる。三鬼商事の川口真弥名古屋支店長は「リニア開業はまだ先の話とはいえ、景気が悪い中で不動産市況の停滞に追い打ちをかけかねない」と分析する。

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