完全失業者、緩やかに増加 5月の休業者なお423万人
雇用が一段と悪化してきた。5月の完全失業率(季節調整値)は2.9%と前月比0.3ポイント悪化し、完全失業者数は197万人と同19万人増えた。総務省によると、4月に600万人近くまで膨らんだ休業者の約7%が5月に職を失った。潜在的な失業リスクを抱えた休業者は423万人となお高水準で、今後も失業者や労働市場から退出する人が増える恐れがある。
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5月の就業者数は全体で前年同月に比べて76万人減った。業種別

にみると、「宿泊業、飲食サービス業」(38万人減)、「卸売業、小売業」(29万人減)、「生活関連サービス、娯楽」(29万人減)で大きく減少した。新型コロナウイルスの感染防止対策による外出や営業の自粛で大きな打撃を受けた業種で雇用の吸収力が落ちている。
特に影響が大きいのは非正規労働の雇用者で、前年同月比61万人減と3カ月連続で減少した。雇用形態でみると、パート(37万人減)やアルバイト(31万人減)で働く人の減り方が大きい。企業は契約更新の見送りなどで非正規から雇用調整を始めている。
職についておらず、職探しもしていない非労働力人口は前年同月から37万人増えた。このうち半分が女性だ。子供の休校に合わせてパートの仕事などを見合わせた可能性がある。
非労働力人口は65歳以上でも20万人増えた。経済活動停滞で仕事を失ったケースのほか、コロナ感染で重症化するリスクを警戒して自ら働くのを控えた高齢者も少なくないとみられる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「非正規の契約更改は3カ月や半年単位が多い。6月末時点で休業者から失業者に転じる人が増えるおそれがある」と指摘する。

5月は正規雇用の就業者も1万人減と8カ月ぶりの減少に転じた。正社員は非正規と比べると雇用がなお守られているものの、経営が悪化した企業で雇用調整の動きが少しずつ広がりつつある。
それを映すのは、雇用が維持されているものの仕事を休んでいる休業者の動向だ。5月の休業者は過去最多に膨らんだ4月に比べて174万人減ったが、4月時点の休業者で5月も休業を続けているのはおよそ5割。1.7%は完全失業者となり、4.9%は仕事を失った後、職探しそのものをやめて労働市場から退出したという。合わせて約7%が職を失ったことになる。

ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「休業者は4月よりは減ったが、かなりの部分が今後失業者として顕在化する可能性が高い」と指摘。「経済活動の落ち込みはあまりに大きく、失業率は20年末ごろに4%程度まで上昇するだろう」とみている。
人手不足感が強かった企業の採用意欲にも悪化の兆しは出ている。厚生労働省が30日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.12ポイント低い1.20倍となり、4年10カ月ぶりの低い水準まで落ち込んだ。

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