シャープ、戴会長・野村社長体制が始動
液晶分社化、復活目指す 家電の世界ブランドに

2020/6/29 21:15
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株主総会を経て就任した野村勝明新社長

株主総会を経て就任した野村勝明新社長

シャープは29日、株主総会を開き、取締役選任などを決議した。決議を経て野村勝明氏は社長兼最高執行責任者(COO)、戴正呉氏は会長兼最高経営責任者(CEO)に就いた。2016年に鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り、両者はシャープの経営再建を進めてきた。コロナ禍で再度業績が悪化する中、シャープを「家電の世界ブランド」として復活させる考えだ。

「新型コロナウイルスで大きな影響を受け、非常に厳しい状態となった。さらなる成長に向けてワンシャープで取り組む」。株主総会の冒頭、戴会長は台北市の拠点からモニターを通じてあいさつした。コロナ禍で内外の移動が難しく、戴会長は台湾にとどまったまま。まさに非常事態が続いている。

なぜ野村氏を社長に任命したのか――。株主から質問された戴会長は「お互いの考え方や仕事のやり方を熟知し、シャープの事業にも管理にも精通している」と話した。さらに「会長の私は海外に使う時間を増やし、野村さんには日本のビジネスをしっかり展開してもらいたい」と役割を説明した。

戴会長は当初、社長候補に別の人材を探していたとされる。だがコロナ禍で過去に業績回復を果たした戴・野村の二頭体制で「守り」を固める必要性が高まった。野村社長は経理畑が長く、コスト管理のノウハウには強みを持つ。今後、事業所の統廃合などを検討する上で、シャープ生え抜きとして社内をまとめ上げる手腕や求心力も必要となる。

「2月以降コロナの影響を受けたが、必ず業績を回復させる」。株主総会の壇上、野村社長は決意を語った。シャープは鴻海の傘下で生産の海外移転など改革を進めて業績は回復してきた。だが、コロナ禍で中小型の液晶パネルなどの販売が落ち込み、20年1~3月期は四半期ベースでは約4年ぶりの営業赤字に転落した。

総会後に開いた経営説明会では、野村社長は「これまで副社長として(顧客など)各社の社長らと話をしてきた。今後もしっかりと取り組んでいく」とトップ外交を強化する意欲を示した。

中長期の成長にはコスト削減に加え、鴻海流のダイナミックな経営改革が欠かせない。鴻海は生産子会社を分社化して株式市場に上場して資金を調達した実績がある。

シャープは5月末にディスプレーとカメラモジュール事業の分社化を発表した。その狙いを株主に聞かれると「次世代ディスプレーの技術開発に備え、他社からの出資による外部資金の調達を視野に入れる」(野村社長)と強調した。

ディスプレー事業などの分社化後にシャープに残るのは、家電など自社ブランドを冠する事業だ。戴会長はこうした製品やサービスをネットであらゆるモノがつながるIoTや人工知能(AI)技術を活用して育成し、「世界を変える。シャープをグローバルブランド企業にする」と株主に訴えた。日本では健康関連で新規事業を検討していることも明らかにした。

もっとも低迷する株価には株主から苦言が出ていた。シャープは5月下旬までに予定していた21年3月期から3年間の中期経営計画の発表を延期し、今回の総会でも中計の発表時期は示さなかった。果たしてコロナ禍を乗り越え、新たな成長シナリオを描けるか。非常事態下で経営改革を進める実行力が問われている。

▼アナリストの見方

 東海東京調査センター 石野雅彦シニアアナリスト 「成長戦略に疑問」
 収益力は回復したものの、現在の成長戦略には疑問がある。例えばシャープは米国でテレビに再参入する方針を明らかにしている。中国勢との価格競争が激しい市場で本当に稼げるのか。独自の技術を持った商品やサービスなどシャープブランドを育てる戦略と矛盾する。野村勝明副社長は社長に昇格したが、戴正呉会長は最高経営責任者(CEO)として残る。体制に大きな変化はないとみている。

 大和証券 栄哲史アナリスト 「家電磨き安定感を」
 大口顧客の米アップルはディスプレーに有機ELの採用を進め、シャープの液晶パネルは厳しい状況だ。将来的な成長には次世代ディスプレーの開発が重要だが、過大投資のリスクがつきまとう。技術の強みをどう出すか、どの企業と協業するか、ディスプレーの分社化戦略には多くの課題がある。一方、家電事業はコスト削減などで収益力が高まり、ヒット商品も生んでいる。こうした分野をさらに磨けば「ブランド企業」として経営の安定感が増す。

(栗原健太)

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