霧中の与信コスト、北洋・道銀が警戒する「隠れ倒産」

2020/6/29 18:45
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北洋銀行と北海道銀行は2021年3月期、両行で総額80億円(前期は46億円)の与信費用を織り込んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大で警戒していた融資先の倒産ドミノは起きていないが、警戒するのは休廃業を含むいわば「隠れ倒産」。両行とも企業の経営悪化の先に待つ危機の深刻度を計りかねている。

北海道では観光客が少ない状態が続き観光業への打撃が大きい(札幌市の大通公園)

北海道では観光客が少ない状態が続き観光業への打撃が大きい(札幌市の大通公園)

「今の状況を見れば与信コストの増加は避けられない」。北海道銀の笹原晶博頭取は5月の決算会見でこう述べた。今期の与信費用は前期比85%増の50億円を見込んでいる。19年に公表した中期経営計画では20年度の与信費用を25億円と見積もっており、当初予定の2倍に膨らんでいる。

北洋銀は新型コロナの影響を加味しない前提で、21年3月期の与信関連費用を前期比58%増の30億円とした。ただ安田光春頭取も「コロナウイルスの影響が長期化すれば債務者区分のランクダウンは避けられない企業が出てくるだろう」と説明し、今後の状況次第で引き当てを積み増す可能性を否定しない。

銀行は取引先の業績が悪化し返済能力に懸念があると判断すれば債務者区分を引き下げ、備えとして追加の引き当てを計上する必要がある。北海道の企業は全国よりも早くから新型コロナの影響を受けている。訪日観光客に依存してきた産業構造も追い打ちをかけており、引当金の積み増しは避けられそうにない。

今期に見込む80億円は14年3月期(99億円)に匹敵する規模だが、リーマン・ショック後の09年3月期(650億円)や東日本大震災直後の11年3月期(180億円)と比べると少ない。コロナ危機によって実際に倒産した企業が現段階では、過去の危機に比べると少ないためだ。

東京商工リサーチ北海道支社によると、20年1~5月の道内の倒産件数は88件で前年同期と比べ9件少ない。北洋銀の安田頭取は「企業は資金繰りに詰まって倒産するということはあるが、赤字だけで倒産することはない」と説明する。

金融機関は実質無利子・無担保の融資を続け、北海道などの自治体も独自の融資枠で資金繰りを支援している。東京商工リサーチによると、道内の中小企業の4社に1社が金融支援を利用した。資金繰り支援の豊富なメニューが企業の当座の資金需要を満たしている。金融機関による下支えが続くうちは倒産の急増はないとの見方は根強い。

とはいえ、倒産が少なくても銀行の与信費用の膨張につながる恐れがあるのが休廃業の増加だ。支払いの遅れがないまま経営者が相次いで事業をたたんだ結果、19年の道内の休廃業・解散は倒産の10.5倍にあたる2219件に達した。同年の全国の水準(5.2倍)と比較しても、北海道の多さは突出している。

北海道では新型コロナの感染拡大前から後継者難に悩む経営者が多く、訪日外国人客の戻りが遅れれば「コロナ廃業」に拍車をかけかねない。北海道M&A協会(札幌市)の荒木俊和代表理事は「融資を受けても企業業績は改善しておらず、借金は徐々に増えている。体力のない中小企業の休廃業が増える可能性がある」と警鐘を鳴らす。

2020年3月期決算で地銀2行は新型コロナウイルスの感染拡大による保有株式の減損や売却損を計上し、減益となった。低金利で消耗戦を強いられてきた地銀にとって、さらに利益を圧迫する信用コストの増加は重い。「コロナが長引くほど企業の体力を奪い、その影響が信用コストにも跳ねてくる」と笹原頭取。行く先には濃い霧が立ちこめている。

(塩崎健太郎)

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