スペシャル

フォローする

選手育成に励む伊達さん、将来はテニスアカデミーも

2020/7/2 3:00
保存
共有
印刷
その他

女子テニスの元世界ランキング4位、伊達公子さんがヨネックスと共に女子ジュニア育成に乗り出して1年。「やりたいことがどんどん増えていった。でも1人でできることは限られると思っていた」ところに、協力を申し出たのが日本テニス協会(JTA)とJTAの公式スポンサーになった大正製薬だった。今春から両者も育成プロジェクトに参加、国際テニス連盟(ITF)公認のジュニア大会「リポビタン国際ジュニア Supported by 伊達公子×YONEX PROJECT」(11月30日~12月6日、松山市)の新設が決まった。

ジュニア選手対象のキャンプで永沢亜桜香さん(右)を指導する伊達さん(6月20日)=共同

ジュニア選手対象のキャンプで永沢亜桜香さん(右)を指導する伊達さん(6月20日)=共同

4回目のジュニア合宿を終えてすぐ、新型コロナウイルスによる活動の自粛が社会のあらゆる局面に広がった。それから、自宅で相当トレーニングを積んだのだろう。5回目の合宿となった6月、伊達さんは鍛え抜いた体で登場。手術後のリハビリ中だった前回の合宿ではテニスができなかった。「今回テニスをすることがモチベーションだった」と、ジュニアたちと本気で打っていた。

民間組織としてスタートしたジュニア育成プロジェクト。伊達さんが「いい」と思った選手を推し、自分がやりたい指導ができる。ただ問題もあった。今後、海外遠征に行くようになったら、遠征先でサポートしてくれるコーチやトレーナーなど、「後押ししてもらえる力が必要になる。現場を一番見ている人たちだし、JTAの組織力は魅力的だった」。今のJTA強化担当者たちが世代的に近く、練習したこともある仲間だったのも大きかっただろう。

科学的トレーニングは飛躍的に進化し、海外選手の映像も気軽に見ることができる。「実力とか技術的に持っているもののレベルが高い子は、今の方がいっぱいいる。なのに(海外に出て)ライバルのレベルが一歩上がり、壁にぶち当たったときに伸び悩んでしまう」。原因はコートサーフェスの差だったり、遠征の日程に計画性がなかったり、戦い方だったり……。それらの組み立て方を教えるのにJTA組織の力は大きい。

今の日本の女子選手は「海外で壁にぶち当たったときに伸び悩んでしまう」と話す伊達さん

今の日本の女子選手は「海外で壁にぶち当たったときに伸び悩んでしまう」と話す伊達さん

「伊達が次の夢にジュニア育成を掲げてくれた。なんとか手伝いたいと思っていた」と土橋登志久JTA強化本部長。3月の合宿を視察し、伊達さんの覚悟も感じていた。「戦績にこだわらず才能を見抜く力はやっぱりすごい。世界で上にいくには何が必要か、計画的に考え、伝えるのは誰にでもできることではない」。ずっと日本を拠点にしながら世界で戦った伊達さんのノウハウを学べる利点もJTAにはある。

JTAにジュニア強化選手はいるものの、育成の場はない。世界基準のコートを備え、常駐コーチを抱えるにはコストがかかる。提携を結ぶフランステニス連盟の言葉も引っかかっていた。フランスはテニスのナショナルトレーニングセンターを持つが、「男子は全寮制で伸びるけれど、女子はテニスに集中できないケースが多い。女子は家族と生活し、定期的に合宿する方がいい」という。年4回の濃密な合宿に絞り、あとは個別にフォローアップする伊達さん方式は、ピタリとはまった。

伊達さんの第1次現役時代の1990年代、世界トップ100に日本女子が10人も名を連ねた時期があった。しかし、96年の伊達さん引退後、少しずつ減り始める。2009年に杉山愛さんが引退すると、トップ50に短期間だけ入るものの、常駐できる選手がいなくなってしまった。今や女子の方が勢いがあったことを知らないファンも多い。

米国育ちの大坂なおみ(日清食品)は別とし、日本女子が苦戦しているのは、「身長がある程度ないと、今の女子テニスはフィジカル的に苦しいというのが一つ。また(相手に)研究されると行き詰まってしまう選手が多い。『これだ』という武器がないと、(上に居続けるのは)難しくなってしまう」。08年に現役復帰した伊達さんが17年まで現役を続けた時の感想だ。

自身が監修した新ラケット「アストレル」を手にする伊達さん

自身が監修した新ラケット「アストレル」を手にする伊達さん

このプロジェクトでは、「何でもいいから特徴のある」選手を選ぶよう心がけてきた。それを武器に、しかも弱点がかすんでしまうような突き抜けた武器にまでしなければいけない。その可能性まで見いだすのは「すごく難しい。この1年で学んだことですね」。長いスパンで考えているプロジェクトなので、指導者として壁にぶち当たるのも想定内だろう。

将来的にはアカデミーのようなものを持つという考えもゼロではない。「コートを整備し、トップ選手を指導できるコーチを育てる、そういう環境整備をやりたい。そういう意味でアカデミーに興味がある。お金をどーんと、土地をどーんと出してくれればすぐにでもやると思う。募集中です」

交通の便がよく、東京と地方に1カ所ずつあればベスト。クラウドファンディングは「中途半端なのは嫌なので……」使いたくないそう。ハードルは高いが、その並外れて高い「目標を設定し、計画を立て、実行する力」を思うと、数年後には「伊達公子アカデミー」ができている気もする。

(原真子)

「スポーツ」のツイッターアカウントを開設しました。

スペシャルをMyニュースでまとめ読み
フォローする

保存
共有
印刷
その他

テニスのコラム

電子版トップスポーツトップ

スペシャル 一覧

フォローする
紅白戦でサーブを打つ高橋(奥)。2月、今年の代表登録選手に高校生で唯一選ばれた(日本バレーボール協会提供)日本バレーボール協会提供


 2021年夏の東京五輪に向けて再始動したバレーボール男子日本代表で、期待の新星が早くも存在感を示している。1月の全日本高校選手権(春高バレー)を制した京都・東山高出身のアタッカー、高橋藍(らん、日体 …続き (8/6)

桃田(右下)は地元香川県の子供たちとオンライン上で交流した(UDN SPORTS提供)UDN SPORTS提供


 新型コロナウイルス感染拡大の影響でスポーツ活動が制限される中、SNS(交流サイト)や動画投稿サイト「ユーチューブ」などオンラインツールを活用して自身の近況を発信したり、ファンと交流したりするアスリー …続き (8/4)

Tリーグは3月に予定されていた2019~20年シーズンのファイナルが中止になった(東京・両国国技館で行われた昨年のファイナルの様子)共同

 新型コロナウイルスの影響で大会中止が続いたり、秋にリーグ開幕を控えたりする五輪競技で、試合開催に向けて工夫をこらす動きが広がっている。「密」を避けて無観客としながら、オンラインで映像を配信。ファンの …続き (7/31)

ハイライト・スポーツ

[PR]