/

中国、橋梁などを常時見守り AI活用で安全管理

中国のテック企業「観雲智能(Guan Yun-Tech)」は、センサー、データ収集・無線通信モジュール、クラウド型データ分析プラットフォームを一体化したシステムを開発した。同システムは、橋梁やトンネル、ダム、石油・ガスパイプライン、風力発電設備などインフラ施設の構造安全性をリアルタイムでモニタリングする。中国では橋梁の崩落事故などをきっかけにインフラの安全確保のニーズが高まっており、こうした安全監視システムの市場規模は今後1000億元(約1兆5000億円)に達するとの見方もある。

中国広東省にあるつり橋「虎門大橋」で今年5月、橋桁が上下に大きく波打つ現象が発生した。この問題の原因とされた仮設の防護壁を撤去することで解決したが、それ以前にも江蘇省無錫市で昨年10月、高架橋の崩落事故が起こり、多数の死傷者を出している。中国では2007年から12年までに37基の橋梁が崩落しているが、その6割は竣工後20年未満だった。中国では今後崩落の恐れがある橋梁はさらに10万基以上あるとされ、その安全確保は急務だ。

風の影響や交通荷重などによる部材の変形・変位をリアルタイムでモニタリングする(観雲智能提供)

だが、風などの自然環境や交通荷重、応力などによる部材の変形・変位をリアルタイムにモニタリングすれば、橋梁の構造安全性を随時評価することが可能だ。

観雲智能は2017年に米国で設立され、その前後に米国の政府機関、工業界によるスタートアップ支援基金、個人投資家などから出資を受けた。2019年9月には山東省済南市に本社を移転、中国国内市場の開拓に注力している。先ごろ山東省政府から数百万元(数千万円)のスタートアップ支援資金を調達し、さらに現在新たな資金調達を進めている。

創業者、劉昊CEOは、デラウェア大学のアントレプレナーシップ分野のポストドクターで、同大学で機械工学と計算機・電子工学の理系修士号(MSc)、経営学修士(MBA)を、ニューヨーク州立大学で機械工学の博士号を取得し、米ボーイング社の航空機の構造のヘルスモニタリング事業にも携わった。共同創業者の戴宏波CTOは、デラウェア大学複合材料センターのポストドクターで、構造工学博士。米運輸省や連邦高速道路局、国立衛生研究所などで複数のプロジェクトに参加し、土木構造・材料・機械工学などの研究に10年近く携わってきた経験を持つ。

同社のシステムは風などの自然の力や交通荷重、応力などによる部材の変形・変位をリアルタイムに検知して、橋梁などインフラ施設の構造安全性を随時評価するもの。センサーはナノ材料を用いた多機能性複合材料で構成されており、モニタリング対象に装着または内蔵することができる。また、自社開発した移動可能な低消費電力のデータ収集装置でセンサーからのデータをリアルタイムに集め、IoTモジュールからクラウド型データサービスプラットフォームに伝送する。クラウド型データ分析プラットフォームでは人工知能(AI)アルゴリズムによって収集したビッグデータを解析し、構造安全性に危険が生じた際に警報を発する仕組みとなっている。同社のセンサーは、米国ではすでに橋梁やパイプライン、航空機などの分野で実用化されている。

飛行機の部品の安全性を検査するイメージ(観雲智能提供)

観雲智能の主力はソフトウエア及びデバイスを統合したリアルタイム監視のソリューションだ。劉CEOによると、高速鉄道の架線網に対するモニタリングでは従来、多くの部分を目視による巡回検査に頼り、一部を小型無人機や列車に搭載されたカメラで撮影し、マシンビジョン技術によって故障箇所の識別と分析を行っている。一方、同社ではセンサーやIoT設備などを設置して、リアルタイムで構造物の動的応答情報を感知、記録、伝送させ、安全上の問題があった場合は警報を発する仕組みを構築している。

市場にはセンサーやデータ分析を利用した構造物検査機器メーカーもあるが、これらのメーカーは、観雲智能のような一体化した統合システムを自社開発できておらず比較にはならない。一方、観雲智能はセンサーとIoT設備およびクラウド型データ分析プラットフォームそれぞれの特長を生かし連携させることにより、モニタリングシステムの感度を上げ、反応速度をミリ秒単位に短縮し、精度は業界平均の95%を上回る99%に達している。

インフラや交通、エネルギーなどに関わる大型構造物の構造ヘルスモニタリングは、1兆元(約15兆円)規模の市場を形成する可能性がある。観雲智能のモニタリングサブシステムの販売価格は1万5000元(約22万5000円)で、各基本ユニットには10のサブシステムが含まれる。中国国内で崩落の危機にあるとされる約10万基の橋について、1基ごとに10~20の基本ユニットが必要と仮定して試算すると、全体の市場規模は1000億元(約1兆5000億円)に達する計算になる。橋梁以外にも、インフラ関連ではトンネルとパイプライン、ダム、交通関連では航空機の構造部と高速鉄道の送電網、風力発電用風車などが構造強度モニタリングの対象となる。これら全てが観雲智能のターゲットとなる。

観雲智能は、橋梁など個別化の必要が大きい分野には特注製品を、パイプラインなど標準化が必要な分野には汎用型製品を提供している。劉CEOは、特注製品のカスタマイズでは、主にセンサーがカバーする面積や範囲などを調整し、納期を2週間以内としていると説明。現在のところ、デバイスに関するコアテクノロジーの一部は自社開発しているが、一部は提携企業に委託しているという。

「36Kr ジャパン」のサイトはこちら(https://36kr.jp/)

中国語原文はこちら(https://36kr.com/p/718406762678401)

 日本経済新聞社は、中国をはじめアジアの新興企業の情報に強みをもつスタートアップ情報サイト「36Kr」を運営する36Krホールディングスに出資しています。同社の発行するスタートアップやテクノロジーに関する日本語の記事を、日経電子版に週2回掲載します。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン