タイ最大与党党首に首相元上官 保守派台頭へ

2020/6/27 21:50
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【バンコク=村松洋兵】タイの最大与党「国民国家の力党」は27日の党総会で、プラユット首相の陸軍時代の上官であるプラウィット副首相を新党首に選出した。これを受け首相は7月中にも内閣改造を実施する見通しだ。政権内で保守派が台頭し、政策が内向き志向になる可能性がある。

政権発足時の記念撮影に臨む(前列左から)プラウィット氏、プラユット氏、ソムキット氏(2019年7月、バンコク)=石井理恵撮影

同党は元陸軍司令官の首相を支える親軍政党で、民政復帰に向けた2019年の総選挙の際に設立された。約20党からなる連立与党の中核を占める。党首は軍政の色を薄める狙いで学者出身のウッタマ財務相が務めていた。人事を巡る不満などから党幹部18人が6月初めに辞任し、規約に基づき党首選を実施した。

プラウィット氏は首相と同じ陸軍主流派の出身だ。国軍トップの陸軍司令官経験者で、首相の先輩に当たる。政権に大きな影響力を持ち、治安部門を担当する。最大与党の党首就任で政権の軍政色が強まる。

プラウィット氏は18年の中国人を乗せた観光船の沈没事故で、中国人経営者に責任があるという趣旨の発言をして物議を醸した。過去には資産隠し疑惑も浮上し批判を浴びている。

党首交代の背景には首相が学者出身のソムキット副首相を重用し、経済政策を一任してきたことへの党内の不満がある。政府予算を握る財務相のウッタマ氏はソムキット氏の弟子だ。エネルギー相など利権を持つ経済閣僚ポストをソムキット派が占めたため、軍部や他の派閥から内閣改造を求める声が強まっていた。

首相は7月中にも内閣改造に踏み切る見通しだ。ソムキット派は一掃されるとの見方が強い。

ソムキット氏は開放的な経済政策を推進し、タイの環太平洋経済連携協定(TPP)加盟に意欲を示してきた。2月に西村康稔経済財政・再生相と会い、TPP参加申請について「4月ごろにも決定できるよう調整している」と述べていた。

だが、国内産業の保護を求める保守派の反発が強まり、国内手続きは進んでいない。首相は5月下旬、下院にTPP参加に関する特別委員会を設けて、参加の是非を判断すると決めた。保守派が主導権を握れば参加機運はしぼみかねない。

ソムキット氏はバンコク東方の経済特区「東部経済回廊(EEC)」に外資企業を誘致し、次世代産業を振興する成長戦略の司令塔でもある。閣僚交代で経済政策が混乱すれば、20年にマイナス8%成長と予想されるタイ経済の回復が遅れる恐れがある。同氏は24日「アイデアも実行力もない者は経済政策を担うべきではない」と述べ、内閣改造をけん制した。

プラユット連立政権は7月16日に発足から1年を迎える。新型コロナウイルスを巡っては非常事態宣言の発令で感染の封じ込めに成功したとの評価がある一方、権力維持に利用しているとの批判も上がる。最大与党の党首に陸軍出身者が就いたことで、強権的な政治手法が強まり、民主化が逆戻りする懸念がある。

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