現金受領の「告白」相次ぐ 河井夫妻買収事件めぐり

社会・くらし
2020/6/26 18:46
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現金受領を認め、陳謝する児玉浩安芸高田市長(26日、広島県安芸高田市)

現金受領を認め、陳謝する児玉浩安芸高田市長(26日、広島県安芸高田市)

2019年7月の参院選を巡る公職選挙法違反事件で、前法相の河井克行容疑者(57)らに買収された疑いがある地元議員や首長が現金受領を認め始めた。提供先の全容が判明し「告白」に追い込まれた形だ。首長の辞職も相次ぐなど事件の影響が広がっている。

「不徳の致すところ」。広島県安芸高田市の児玉浩市長(57)は26日、事件を巡り初めて記者会見を開き、県議時代の19年3~5月に克行前法相から計60万円を受領したことを認めた。「反省を示す」と丸刈りにし、授受を否定していたことについては「捜査機関に止められた」と述べた。進退は明言しなかった。

現金授受の際に「(参院選への)協力を匂わせるようなやり取りがあった」ことも明かした。

この日は同市議会の先川和幸議長(73)ら市議3人も記者会見し、現金10万~20万円の受領を認めた。先川氏は「市長と議長の市政の両輪がご迷惑をおかけし、どう釈明すれば良いか分からない」とうなだれた。

河井夫妻は参院議員の案里容疑者(46)の選挙運動の依頼に対する報酬として94人に約2570万円を配り、買収した疑いがある。東京地検特捜部は提供先の内訳を発表しなかったが、関係者によると、内訳は広島県議や県内の市・町議だった38人と首長2人に計1680万円、元議員や後援会関係者ら54人に計約890万円とされる。

26日までに地元議員と首長の少なくとも計10人が記者会見などで受領を認めた。前法相から30万円を受け取った広島市の石橋竜史市議(48)は25日、「胸ポケットに強引に封筒をねじ込まれた。『内緒だよ』と言われ、言えなかった」と話した。

議員らからは「断ろうとしたが無理だった」という趣旨の発言が目立つ。当選7回の前法相は広島政界で顔が広く、地元政界関係者は「資金力や政治力で地方議員とは圧倒的な差がある。現金の提供を固辞して関係が悪化するのを避けたい気持ちは分かる」と明かす。

不透明な現金の授受が常態化していた疑いも浮上した。広島市の沖宗正明市議(69)は26日、過去にも前法相から当選祝いとして約5万円を受け取り、政治資金収支報告書に記載しなかったことを明らかにした。「政治活動に使っていないこともあり、政治家同士のやりとりは(報告書に)載せていない」と話した。

案里議員の陣営関係者によると、買収されたとされる議員の中には前法相から定期的に現金を受け取っていた議員が複数いたという。関係者は「カネが絡むなれ合いの関係が続く中、違法な現金も受け取ってしまう体質になっていたのではないか」と話した。

公選法には買収された側も処罰規定があり、法定刑は3年以下の懲役か禁錮、または50万円以下の罰金と定める。検察側は現金を受け取ったとされる94人について、金額や悪質性、公職の辞職などの対応を踏まえ、立件の可否を慎重に検討するとみられる。

今回の事件では現金の受領を認めた同県安芸太田町の小坂真治町長(当時)が辞職。同県三原市の天満祥典市長(73)も辞職を表明した。

地方自治に詳しい山梨学院大の江藤俊昭教授は「金銭授受が事実ならば有権者への裏切りで、民主主義を踏みにじる重大な不正行為。起訴が見送られたとしても辞職も含め責任の取り方を考えるべきだ」と指摘。「なぜ受け取ったのか説明を尽くし、再発防止策を提言するなどの対応が求められる」と話した。

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