堅調なREIT 逆張りで急上昇したホテル系には懸念も
アイビー総研代表・関大介

日経マネー連載
REIT
日経マネー
増やす
2020/6/30 2:00
保存
共有
印刷
その他

不動産投資信託(REIT)は、インカムゲイン狙いの投資家に人気のある投資商品だ。オフィスビルやマンションなどの不動産物件に投資し、賃料や不動産の売却益を得て、それらの収入から分配金を投資家に還元する。分配金を定期的に受け取るインカムゲインだけでなく、REIT自体の価格が上昇すれば、売却益によるキャピタルゲインを得ることもできる。最新動向をREITウオッチャーの関大介氏が解説する。

国内REITの相場が堅調だ。新型コロナウイルス感染の再拡大や米中貿易戦争の再燃で国内外の株式市場が乱高下を繰り返す中、REITの価格は一定の範囲の中で推移している。価格が安定している状況で、株の配当に相当する分配金を着実に受け取れる国内REITの投資妙味が増している。一方で、一部の銘柄には異常な価格上昇も見られる。この点には注意したい。

【関連記事】
REIT、投資に妙味 コロナで進む選別 物件見極め
「新常態」REITの需要動向は(市場点描)
「経済再開買い」に変調、景気敏感資産に売り

コロナショックで暴落した後、株に比べて出遅れていた国内REITの価格は、5月に入って上昇に転じた。国内REITの総合的な値動きを示す東証REIT指数は、5月末に1700台に回復。米国株の暴落があっても1700前後で推移し、底堅い。この堅調さは私の想定を上回るものだ。

■緩和マネーがREITの価格も押し上げる

この相場状況は、コロナ禍を受けた世界的な金融緩和の「たまもの」だろう。過剰流動性に支えられた投資家は、足元の企業の業績がどうあっても、今後の業績回復を期待してリスク資産にマネーを投じている。

日本株を見るとそれが鮮明だ。東京証券取引所の調べによると、2021年3月期の企業業績の予想は半数以上が未定、もしくは非開示となっている。株価の裏付けとなる業績予想が示されていないのに、日経平均株価は、3月19日に付けた年初来安値から5400円余りも上昇した(6月29日時点)。投資家が今期業績の悪化を既に織り込んでいて、来期以降の回復に期待して投資しているからだ。

REITの強みは、収益と分配金の額が安定している点にある。業績の伸びが重視される株ほどには、業績予想は重視されない。それでもREITの相場が堅調な背景には、株と同様に来期業績の回復に対する期待があるように感じられる。

それが顕著に表れているのが、ホテルなどの宿泊施設を投資対象にしたホテル系REITだ。ホテル系REITは宿泊施設を保有し、それを運営会社に貸して賃料を受け取っている。業績が悪化する懸念は、オフィスや住宅を投資対象にしたREITに比べて強い。それにもかかわらず、株価に相当する投資口価格が急回復しているのだ。

下のグラフは、ホテル系6銘柄の価格の平均値を算出して、その推移を東証REIT指数や、マンションなどの住宅を投資対象としたREITの値動きを示す東証REIT住宅指数と比較したものだ。

東証REIT指数が年初来安値を付けた3月19日からの推移を見ると、ホテル系REITの価格上昇が、東証REIT指数やREITの中で堅調とみられている住宅型のREITを大きく上回っている。

ホテル系REITの個々の銘柄について価格上昇率を見ると、今期の業績予想を開示していないジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)の2倍を筆頭に、どの銘柄も1.5倍以上になっている。

■業績悪化で減配が相次ぐ

ホテル系REITの銘柄は、インバウンド(訪日外国人)の増加の恩恵を受けるとして注目されてきた。後述するが、ホテルの利益が一定の水準を上回ると急激に収益が伸びる仕組みがあるため、分配金の増加にも期待が持てる業態でもある。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で宿泊施設の経営環境は急激に悪化した。ホテル系REITの6銘柄の収益も大幅に悪化し、分配金を減らす動きが相次いでいる。例えばホテルの運営会社から受け取る賃料を減免したインヴィンシブル投資法人(8963)の場合、今期の営業利益は前期に比べて9割も減少する見通しだ。それに伴って、今月末に投資家に支払う分配金を、2月に公表した1812円から30円に変更した。減配率は実に98.3%に及ぶ。

ここで業績悪化の背景を説明する前に、ホテル系REITの収益構造について触れておこう。宿泊施設の運営会社から受け取る賃料には、「固定賃料」と「変動賃料」の2種類がある。固定賃料は、宿泊の売り上げの増減にかかわらず、契約期間中は一定額の支払いが保証されている。一方で変動賃料は、宿泊施設の収益が一定以上になると、増収分に応じて固定賃料に上乗せして支払われる。

コロナ禍で宿泊者数が激減したことで、後者の変動賃料が大きく目減りしようとしている。例えば、大江戸温泉リート投資法人(3472)。同投資法人の収益において変動賃料が占める比率は7%以下と低い。ホテル系のREITの中では収益の安定性が高いと言える。それにもかかわらず、20年11月期の分配金は前期比で18.3%減る見通しだ。

ホテルの宿泊に収益を依存する銘柄はさらに厳しい。変動賃料比率が約3割に達するいちごホテルリート投資法人(3463)の場合、21年1月期に支払う分配金の予想額は、前期に比べて72.3%減る見通しとなっている。

このような大幅な減配となれば、価格低迷が長期化するのが自然だ。しかし、いちごホテルリートの投資口価格は逆に上昇している。いちごホテルリートを保有している投資家は、目先の業績悪化よりもその後の業績回復を織り込んでいると考えられる。

■逆張り投資は報われるのか?

では、投資家の期待通りにホテル系REITの収益は回復するのか。

結論から言えば、あまり期待はできない。コロナ禍を受け、政府は国内観光客向けに旅行クーポンを付与するなどの旅行喚起策を検討している。ただ、ホテル系のREITがその恩恵を受けられるかどうかは微妙だ。

まず、ホテル系REITの大半は、ビジネスホテルを投資対象の中心としている。旅行喚起策の恩恵に浴するリゾートホテルの割合は、星野リゾート・リート投資法人(3287)と大江戸温泉リートを除いて低い。さらに、社員の出張を抑制する企業の姿勢が長引いて、ビジネスホテルへの逆風が続く可能性は高い。

もともとホテル系REITは、他の用途の不動産に投資しているREITに比べて、収益が一度悪化すると立ち直るまでに時間がかかる傾向がある。需要低迷が長期化するなら、インヴィンシブルのように変動賃料だけでなく固定賃料も減免する動きが相次ぐかもしれない。そう考えると、ホテル系REITの投資口価格が高値圏にあるうちに、いったんは売却して利益確定することも視野に入れるべきだろう。

関大介(せき・だいすけ)
不動産証券化コンサルティング及び情報提供を行うアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。

[日経マネー2020年8月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年8月号 勝ち組投資家に学ぶ ここからの稼ぎ方&勝負株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/6/19)
価格 : 780円(税込み)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]