ソニー総会、新社名で新たな船出へ 複合経営を徹底

2020/6/26 17:27
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ソニーが複合事業をまとめる経営体制の総仕上げに入る。26日には都内で株主総会を開き、2021年4月に社名を「ソニーグループ」とする定款変更を可決した。本社から祖業のエレクトロニクスを分離し、本体は複数事業を管理する役割に徹する。グループ横断で相乗効果を発揮し、新型コロナウイルス流行拡大など変化の激しい外部環境への耐性を強める。

新社名「ソニーグループ」を評価する株主が多かった

「ソニーグループのミッションは経営資源の配分や人材、技術への投資だ」。ソニーの吉田憲一郎会長兼社長はグランドプリンスホテル新高輪(東京・港)の会場で、社名変更の意味を「本社機能に特化する」と説明した。コロナ対策で人数制限があるなか、出席した222人の株主が経営陣の言葉に耳を傾けた。

社名変更の狙いは「エレキの要素を本社から分離する」(吉田氏)ことだという。約60年の歴史を持つ「ソニー株式会社」はエレキ事業を統括する中間持ち株会社に引き継ぐ。株主の男性(52)は「社名変更は実態に合っている。エレキ事業をソニーと呼ぶのは違和感ない」と話した。

「『ソニー株式会社』に対するアタッチメント(愛着)が強すぎる」。吉田氏はソネット(現ソニーネットワークコミュニケーションズ)社長から13年にソニーに戻ったときに、こう感じたという。社名変更にあたっては本社をグループ経営に集中させる一方で、ソニーのブランドを培った祖業への配慮も見せた。

エレキ事業がソニー全体に占める割合は下がっている。20年3月期ではエレキ事業の営業利益が873億円と、全体の1割程度にとどまった。テレビやデジタルカメラなどで構成するエレキ事業はコロナの影響が直撃しており、21年3月期の営業利益は20年3月期比最大7割減になる見通しだ。

今後の成長をけん引するのは安定収益を見込めるリカーリング(継続課金)のビジネスモデルだ。定額制でコンテンツを配信するゲーム事業や音楽事業が収益を下支えする。ソニー全体の今期の営業利益は少なくとも3割減る見通しだが、エレキ単体に比べればマイナス幅は小さい。これはゲームや音楽の貢献だ。

吉田氏が社名変更とともに決めたのが金融事業の取り込みだ。約65%を出資するソニーフィナンシャルホールディングスをTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化する。株主総会では「金融事業はエレキやエンタメに並ぶコア事業と位置づけている」と強調した。

ソニーはグループの技術を組み合わせ、金融事業の強化に挑む。すでに人工知能(AI)で運転を分析し、安全運転なら保険料を安くするサービスは手がけている。ソニーの十時裕樹副社長は株主の質問で完全子会社化の意義について「上場子会社は少数株主への配慮が必要だ。完全子会社ならば思い切った経営判断ができる」と答えた。

これまでのソニーは複数事業を抱えて企業価値を損なう「コングロマリット・ディスカウント」を指摘されてきた。米投資ファンドのサード・ポイントは非中核事業を切り離すべきだと主張した。しかしコロナ禍で世界の企業業績が悪化するなかでは、事業の多様性を保って変化に耐性を持つ「複合経営」は結果的に強さを発揮している。

ソニーは1958年に東京通信工業から社名を変更した。盛田昭夫氏は「ソニー電子工業」などエレキ企業であることを示す案に反対し、世界で通じる「SONY」を選んだ。「盛田さんが多様性の原点だと思っている」と話す吉田氏にとって、約60年ぶりの社名変更はSONYの理想を実現するための大きな一歩でもある。

(清水孝輔)

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