老いてなお豊かな人生描くブラジル映画 南部を舞台に

文化往来
2020/7/2 2:00
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映画「ぶあいそうな手紙」の場面(C)CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019

映画「ぶあいそうな手紙」の場面(C)CASA DE CINEMA DE PORTO ALEGRE 2019

老いをどう生きるか。そんな普遍的なテーマを温かくユーモアに包んで描いたブラジル映画「ぶあいそうな手紙」が日本公開される。脚本も務めたアナ・ルイーザ・アゼヴェード監督は「私自身、昔から身近にいつも高齢者がいて彼らから面白い話を聞きながら暮らしてきた」と語り、監督の老いへの興味から今回の映画が生まれたという。

物語の主人公は78歳で一人暮らしのエルネスト(ホルヘ・ボラーニ)。隣国ウルグアイから移住して46年、視力が失われつつあるエルネストにウルグアイ時代の旧友の妻から手紙が届く。偶然出会った今どきの若い女性、ビア(ガブリエラ・ポエステル)に手紙の読み書きを頼んだことからエルネストの人生が変わり始める。

アナ・ルイーザ・アゼヴェード監督

アナ・ルイーザ・アゼヴェード監督

「私には94歳の父と88歳の母がいるが、彼らのように『老いを楽しむ』と決め込んだ人たちがいる一方、これからの人生を諦めてしまうお年寄りもいる。たとえ『諦めるしかない』と思い込んでいても、ビアのような若い人たちの目から見ると、お年寄りの人生にもまだまだ可能性がある。それを感じてもらえる作品にしたいと思った」と監督。頑固だが本好きで教養もあるエルネストに出会ったことで、刹那的に暮らしてきた23歳のビアの人生にも変化が訪れる。「エルネストは目減りする年金に頭を悩ませ、ビアはその日暮らしを余儀なくされている。2人とも経済的には困窮しているが、助け合うことで互いを変えていく。23歳でも78歳でも人生の可能性はたくさんある」と監督は訴える。

映画の舞台となったブラジル南部ポルトアレグレは、監督自身が生まれ育ち、今も活動拠点としている場所だ。ウルグアイやアルゼンチンと地理的に近いだけでなく、生活習慣や文化もブラジル北部よりもこの2カ国と似通っているという。「寒冷な気候で、話す言葉もスペイン語に近いなまりがある。人々の気質は内省的で、『トロピカルで陽気』というブラジルの一般的なイメージとは違う」と監督。ウルグアイやアルゼンチンから移住してきた人も多いという。主人公のエルネストも軍事政権時代のウルグアイを離れてきた人物で、隣家の友人はアルゼンチン出身だ。

監督自身が中心メンバーの一人であるポルトアレグレにある映像制作会社カサ・デ・シネマ・デ・ポルトアレグレは現在ではブラジルを代表する制作会社だ。「さまざまな文化が混合したポルトアレグレは私にとってインスピレーションを与えてくれる存在。この映画もこの場所だからこそ作ることができた」と監督は語る。7月18日から東京・シネスイッチ銀座を皮切りに全国順次公開する。

(関原のり子)

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