ディズニー、アトラクションの設定変更 黒人描写で
「スプラッシュ・マウンテン」

【シリコンバレー=佐藤浩実】米ウォルト・ディズニーは25日、テーマパークの人気アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」の設定を変更すると発表した。当初は映画「南部の唄(うた)」をモデルに建設したが、同作品はかねて黒人の歴史に誤解を生むとの指摘があった。米国の2施設で別の映画をモデルに改装を進める。
25日にアトラクションのイメージ図を公開した。丸太のボートを模した乗り物やクライマックスの急流下りはそのままに、2009年公開の映画「プリンセスと魔法のキス」の世界をめぐる内容につくり替える。工期は未定。新型コロナウイルスの影響を見つつ、改装に着手するという。
スプラッシュ・マウンテンは1989年にカリフォルニア州のディズニーランドで開業し、92年には日本のオリエンタルランドが運営する東京ディズニーランドにも造られた。定番のアトラクションが問題視されたのは、建設時にモデルにした「南部の唄」のためだ。
46年公開の同作品では、主人公の黒人男性が白人の少年と楽しそうに交流する。当時の米国では黒人と白人が対等に接することはなく「歴史認識をねじ曲げる」との批判があった。5月に警官の暴行によって黒人のジョージ・フロイドさんが亡くなる事件が起きて以降は、スプラッシュ・マウンテンのテーマの見直しを求める署名運動も起きていた。
ディズニーによれば、計画は黒人差別問題が目立って報じられる前の2019年から進めていたという。3月の株主総会では「南部の唄」についてボブ・アイガー会長が「今の時代にそぐわない」と説明。自社の動画配信サービスで扱わないと明言していた。オリエンタルランドの広報によると「米国で決まったことで、東京ディズニーランドについてはまだ決まっていない。検討を始めている」という。
人種問題をめぐり、古い映画が議論を呼ぶケースは少なくない。黒人差別に対する抗議デモが全米で起きた6月上旬には、米動画配信サービスの「HBOマックス」が1939年公開の映画「風と共に去りぬ」の配信をいったん取りやめた。脚本家のジョン・リドリー氏が「奴隷制を美化している」と指摘したためだ。
同作品は24日に再び配信を始めるにあたり、時代背景やメイド役の黒人女優ハティ・マクダニエルさんがアカデミー賞の授賞式で差別的な扱いを受けたことなどを説明する映像を本編の前につけた。古い作品は制作時の価値観に基づいてつくられており、どこまで、どのように対応するか企業は引き続き判断を迫られることになりそうだ。
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