5G連合「通信安保」にらむ NTT・NEC提携発表

2020/6/25 20:00 (2020/6/26 5:44更新)
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記者会見で握手するNECの新野隆社長(左)とNTTの澤田純社長(25日)

記者会見で握手するNECの新野隆社長(左)とNTTの澤田純社長(25日)

NTTNECは25日、次世代の通信インフラの共同開発で提携すると発表した。NTTが第三者割当増資を引き受け、NECに4.77%出資する。米中対立の激化で、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)排除の動きは強まる。日本勢はグローバル展開で出遅れたが、両社の通信技術を結集させ海外の通信インフラ大手に挑む。重要性が増すサイバー空間での安全保障が提携を後押しした。

提携の背景にあるのは通信ネットワークを巡る世界の覇権争いだ。米国では中国勢などに通信機器を通じて機密情報などを抜きとられることを警戒する見方がある。当初はファーウェイを排斥する意向を示していなかった英国やカナダも方針を転換。日本で同社の機器を次世代通信規格の「5G」の基地局に採用する通信会社はない。ただ、年2兆円規模の研究開発費を使うファーウェイなどへの対抗軸を作らないと通信網整備が海外頼みになりかねない。

「国内の機器メーカーを世界で戦えるようにするのが主眼だった」。経済産業省幹部は提携の狙いをこう話す。政府も5G整備を巡り、情報漏洩への安全性などの要件を満たす通信機器を税制で優遇し国産活用を促す。

菅義偉官房長官は25日の記者会見で「日本の産業競争力の強化や、次世代通信インフラの安全性が、この日本連合によって確保されることを期待している」と述べた。NTTの澤田純社長も同日のオンライン会見で「(日本などの)経済安全保障に合致している。2社がコアとなり、同じ考えの人たちとビジネスを広げていく」と強調した。

645億円の出資で狙うのは長期の協業だ。両社は5Gだけでなく、その次の6Gの超高速無線、海底ケーブル、宇宙空間など、最先端の通信基盤を共同開発する。

世界の携帯基地局の売上高で首位ファーウェイなど上位3強は約8割のシェアを握り、6位のNECはわずか0.7%だ。ただ、最先端の通信基盤はスマート工場や自動運転などあらゆる新産業の土台になり、市場が拡大する。新型コロナウイルスで在宅勤務などの遠隔作業が増え、安全な通信網は新常態(ニューノーマル)も支える。

世界での普及に向けた課題はコスト競争力だ。ファーウェイは他の大手製品より2~3割安いとされ、新興国で広がる。NTTグループが旗振り役となり100社超で取り組む基地局の「オープン化」がカギを握る。

1社がまとめて機器を納入する垂直統合型が主流だが、複数メーカーでネットワークを作り、コストを抑える。この仕組みで市場を開拓し「2030年に世界シェア20%を目指す」(NECの新野隆社長)という。

海外で本格的に売り込むには技術者の身分を担保する制度が必要との声もあり、政府も後押しする。米欧では情報漏洩の恐れがないと認められた人しか機密性の高い情報を閲覧できなくする「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度が先行。専門家は「5Gのような技術を扱う民間エンジニアもこの資格を求められる例が多い」と語る。経済官庁幹部は「法律に基づく制度整備が急務だ」と話す。

NTTが懸けるのは、あらゆる分野に光技術を取り込む「IOWN(アイオン)」構想だ。30年までに既存の約100倍のデータ伝送容量を持つ通信網の実用化を目指している。NECも光関連技術に力を入れてきた。 NTTは1985年に民営化し、日本電信電話公社から社名を変更した。大量に調達する通信機器をNECや富士通といったメーカーが独占して納入し、安定業績を確保する構図は「電電ファミリー」と呼ばれた。米政府の圧力もあり、米IT(情報技術)企業にも門戸を開いたが、その結果、国内機器メーカーは価格や性能でかなわず存在感がなくなった。

NTT自体も、事業や地域で分割・民営化され、海外に積極展開する環境や体質にならなかった。外交や政治に大きく影響を受けたこともあり、国際競争力を持ち得なかったNTTと、長男格だったNECの資本提携という形で復活した電電ファミリー。その裏には米中対立や、安全な通信網の幅広い普及で出遅れた官民の焦りもにじむ。

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