日本株、米中対立は買いの好機(石金淳)
三菱UFJ国際投信チーフファンドマネジャー

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2020/6/26 2:00
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消費の現場に人出は徐々に戻りつつある(ヨドバシカメラ秋葉原店前)

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世界的に猛威を振るった新型コロナウイルス感染は、米中の一部や南米など国・地域によっては拡大、あるいは再拡大がみられています。ただ、5月以降、コロナ感染の勢いが下火となった国・地域では、経済活動が段階的、もしくは限定的に再開されてきました。株式市場に目を転じると、コロナ感染による景気悪化に向けた中央銀行の量的緩和策の拡大や政府の大規模な財政政策等を受けて国内外で株価は既に4月には反騰していましたが、経済活動再開の動きなどを好感し、5月下旬から一段高となりました。

しかし、昨今では、コロナ感染が第2波拡大のリスクをはらみつつも3月の株価急落時ほどのインパクトがなくなってきたのとは逆に、米中対立が香港問題などを巡って再燃し、市場のかく乱要因としてクローズアップされてきました。米中関係は1月の通商面での第1段階の合意以降は小康状態でしたが、中国で発生したコロナ感染が米国でも広がり、米国内で中国に対する責任追及の動きが出るなか、中国が香港の言論の自由等の抑制につながり得る国家安全法制定を決めました。これに対してトランプ米政権が昨年11月に成立した香港人権民主主義法に基づき制裁措置を取る意向を示し、米中対立が先鋭化しています。

米国は、経済発展が進む一方で資本取引自由化や知的財産保護等があまり進まない中国を念頭に、2018年8月に成立したECRA(輸出管理改革法)やFIRRMA(外国投資リスク審査現代化法)等の対中輸出・投資規制の強化を実質的な目的とした法律を定めるなど態度を次第に硬化させています(日本は米国の動きに連動して外為法を改正)。また、17年から昨年にかけてワシントンで筆者が面会した元政府高官、政治アナリスト、同ジャーナリスト等の方々は、ほぼ例外なくトランプ大統領よりも米国議会、中でも共和党より民主党の対中国姿勢が厳しいと述べていたことなども鑑みると、たとえ大統領が交代しても米国の強硬な態度は変わらず、米中対立の長期化は不可避と考えざるを得ません。

米中対立が一段と先鋭化した場合、両国による経済のブロック化(経済活動領域やサプライチェーンの分断)によって、日本経済は甚大な悪影響を受け、株価は大幅な下落を余儀なくされるのでしょうか。

筆者は、部分的な影響は避け得ないものの、中長期的には日本にとってさほどマイナス面は大きくないとみています。貿易を例に挙げると、日本の対中輸出は国別で最大の19%を占めるとはいえGDP(国内総生産)比では2.7%程度にすぎず(19年)、また日本は対中貿易で赤字であり、貿易額が半減したとしても影響は限定的と考えられます。逆に、中国は製品面のみならず工業技術面でも日本に相当依存していると推察されるため、マイナス面は中国のほうがより大きく出るでしょう。

国際技術交流(技術貿易)をみると、日本の対中輸出(特許料等の受取)は4987億円に対して、同輸入(同支払)は130億円にすぎず、日本の圧倒的な受取超過(黒字)となっています(2018年度)。そして、実は今述べた工業技術を含む知的財産権等使用料の国際収支によると、日本の年間受取(輸出)は5.11兆円、同支払(輸入)は2.86兆円で2.25兆円の大幅な黒字となっており(19年)、このことは日本の技術力が世界の工業生産に極めて重要であることを示しています。

例えば、スマートフォンの最終製品では、中国の大手3社で昨年の世界の出荷台数の35%を占めるなど中国製の躍進が目覚ましいのですが、スマートフォンに組み込まれている高性能半導体等は主に台湾で生産され、さらにそれらは日本製のシリコンウエハーや超高純度フッ化水素等が必要不可欠です。

米中対立先鋭化は経済ブロック化等への懸念等を惹起し、それを受けて国内外で株価が一時的に下落することは十分あり得るとみています。しかし、国内には高度な技術力に裏打ちされた他国では代替が利かない製品を生産できる底力を持った企業が少なからずあるので、今後米中対立先鋭化によって株安となった場合は、技術革新や研究開発に熱心な国内企業の株式を中心にバーゲンハントする好機が到来したと考えるべきでしょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。

石金淳(いしがね・きよし)
1988年慶応義塾大学卒業、ユニバーサル証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。2000年にパートナーズ投信(現三菱UFJ国際投信)転籍。16年12月より現職。

[日経ヴェリタス2020年6月28日付]

日経ヴェリタス

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