お笑いのマヂカルラブリー 漫才もコントもピンも評価
3月に無観客で実施されたピン芸人日本一決定戦『R-1ぐらんぷり2020』。漫才の『M-1グランプリ』(2017年)、コントの『キングオブコント』(18年)に次いで、R-1でもファイナリスト入りし、唯一の「トリプルファイナリスト」として話題のマヂカルラブリーの野田クリスタルが見事優勝を飾った。今、改めてコンビとしても充実期を迎えている。

アプリの配信もするほどゲームのプログラミングを得意とする野田は、R-1の決勝で自作のゲーム「もも鉄(太ももが鉄のように硬い男てつじ)」と「モンスト(モンモンとするぜ!!ストッキング姉さん)」を実際にプレーしながら実況するネタを披露。視聴者投票で2本のネタが共に得票数1位だったほか、審査員の勝俣州和が「爆発力があった」と絶賛するなど、高い評価を得ての優勝だった。
M-1のときに審査員の上沼恵美子から厳しい評価を受けた経緯があり、優勝時は「えみちゃん、ありがとー!」と絶叫して笑わせた。物おじしないタイプかと思いきや、「本当はチキンハート。いつも心臓バクバクです」と本音を明かす。
結成は07年。当時それぞれのコンビを解散後、共通の知人の紹介で村上から声をかける形でコンビを組んだ。コンビを組んだ翌年には、早くもM-1で準決勝に進出するなど、滑り出しは好調だったという。現在の野田は筋トレをしており、トーク中に上着を脱ぎ捨てて筋肉を見せることもあるが、数年前までは痩せ型で白いタンクトップがトレードマークだった。「タンクトップ時代は、センスを匂わせてた部分があって、いろいろキツくなってきて。それでマッチョになり始めたんですが、ファン激減です」(野田)、「周りの芸人もイジりやすくなって、結果として良かったです」(村上)。
転機が訪れたのは、目標にしていたM-1が5年間の休止を経て再開した15年。勝ち進めるものだと思っていたが、準々決勝で敗退した。「ショックでした。このままだと本当に"終わるぞ"と。それで火が付いて。雑な部分を全部なくして、どんな状況でやってもウケるネタを作ることにしました」(野田)。「はっきりと意識が変わりましたね。16年にはまた準決勝まで進めて、17年は"決勝が見えている"感覚で予選を戦った記憶があります」(村上)。
憧れだったM-1は惜しくも最下位に終わったが、翌年にはキングオブコントで決勝に進んで7位に。野田は「M-1直後はやる気が爆下がりでへこんだんですけど、お笑いとしては最下位って立ち回りやすいんだなと気付いて。そこで切り替えられました」と振り返る。野田は『勇者ああああ~ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組~』(テレビ東京系)でも注目されるようになり、そんな流れの中でのR-1優勝は大きなはずみとなった。
目下の目標は「誰も見たことがないような売れ方ができたら最高」(野田)「情報も何もない、ただのおふざけ番組のMCをやってみたい」(村上)と2人。漫才、コント、ピン芸、ゲームと、様々な方面で結果を残してきたコンビだけに、さらなる活躍が期待できそうだ。
(日経エンタテインメント!6月号の記事を再構成 文/遠藤敏文 写真/中村嘉昭)
[日経MJ2020年6月26日付]
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