障害者「外出に不安」 コロナ新常態で配慮求める声

2020/6/25 11:56
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新型コロナウイルスの感染対策が広がったことで、外出に困難を感じる障害者が増えている。マスクで口の動きを隠されて会話を理解しにくく、人との距離も取りづらいという。当事者や支援団体は「コロナ後の新常態にバリアフリーの視点を」と求めている。

遠隔手話通訳システムを使い、画面越しに手話通訳士(左)と会話する聴覚障害者(東京都渋谷区)

「ろう者が安心して出歩きにくくなった」。東京都聴覚障害者連盟の事務局長で、自身も聴覚障害がある越智大輔さん(63)は、新型コロナによって外出のハードルが上がったと訴える。

マスク着用で相手の口元や表情が隠れると意思を読み取りにくく、フェースシールドは光の反射で表情が見えづらくなる。筆談は有効だが、筆談ボードの設置がない店舗や施設が多い。

障害者自身が筆記用具を出して筆談を頼むと、相手がコロナ感染を心配した様子で触りたがらない事例がみられた。複雑な会話が想定される場面は事前に手話通訳の派遣を頼むが、感染リスクを恐れて断られるケースもあった。

こうした事態を打開しようと「遠隔手話通訳」のサービスを導入する動きも出ている。

京都府は6月上旬、タブレット端末やスマートフォンを使って遠隔手話通訳を頼めるサービスの提供を始めた。聴覚障害者が病院の診察時や役所の窓口などでスマホを示すと、画面上の手話通訳者が翻訳し、相手と意思疎通できる仕組みだ。

利用する場合は京都聴覚言語障害者福祉協会(京都市)を通じて申し込み、専用アプリをスマホなどにインストールして希望の日時を選択する。通信料を除いて利用は無料。府はスマホなどを持たない利用者にはタブレット端末を貸し出す。

ただ遠隔手話通訳の役所などでの導入は一部にとどまる。感染「第2波」が懸念される中、越智さんは「発熱してもスムーズに受診できる仕組みを備えてほしい」と話す。

国は「新しい生活様式」として人との距離を1~2メートル離す対策などを求めている。視覚障害者の支援団体「ロゴス点字図書館」(東京・江東)の西田友和館長(43)は「新常態にはバリアフリーの視点がなく、障害を持つ人が取り残されている」と話す。

西田さんによると、多くの視覚障害者が戸惑うのは買い物だ。レジに並ぶ際、前後にスペースを空ける目安となる床の目印が分からない。会計のときは店員に財布ごと渡して支払額を取り出してもらうことが多かったが、最近は接触を避けて「トレーに現金を置いてください」と言われることが増えた。

西田さん自身も視覚障害があり、白杖(はくじょう)や手を使って触覚で周囲を認知する。街中で人にぶつかることもあるが、コロナの拡大後は少し触れただけで怒鳴られることがたびたびあった。「過敏に接触を避ける人が増え、手助けしてくれる人が減った。社会の理解が後退した気がする」とため息をつく。

NPO法人「バリアフリー総合研究所」(石川県白山市)の山田文代理事長は「障害ごとに困難は異なり、健常者に課題が見えづらい。障害者が求める助けを想像してみてほしい」と話す。コロナの影響が長期化する場合に備え「感染症流行下のバリアフリーがどうあるべきか、当事者の声を基に政策などを考える必要がある」と指摘している。

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