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日産、国内2年半ぶり新車 HVで小型SUV市場に挑む

日産自動車が6月30日に国内で発売する新型「キックス」

日産自動車は24日、新型ハイブリッド車(HV)「キックス」を日本で30日に発売すると発表した。軽自動車を除くと国内での新型車投入は2年半ぶり。同社初のHV専用車として電動車戦略の中核を担う。新型コロナウイルスの影響が残るなか、経営再建を占う試金石となる。

「電動技術と自動運転技術で、世界で人気の小型SUV(多目的スポーツ車)市場に満を持して戦いを挑む」。日産の星野朝子副社長はオンラインでの発表会で意気込みを語った。新型キックスの大きな特徴は、独自のHV技術「eパワー」を搭載したHV専用車である点だ。電気自動車(EV)なども含めた電動車を世界で拡販し、2023年度までに販売台数を足元の5倍の100万台に増やす計画を進める。

eパワーはモーターのみで車を動かし、エンジンはモーターを駆動するための電気を発電する機能に特化する。EVのような素早い加速が可能で、通常のHVに比べて静音性も高い。これまでに搭載した「ノート」や「セレナ」はガソリン車との併用で売り出していた。そんな虎の子の技術を小型SUVに搭載し、HVに絞り込んで電動車重視の姿勢を鮮明にする。

新型キックスは小型SUV市場を開拓する世界戦略車でもある。独調査会社スタティスタによると、小型SUVの世界市場は14~19年の5年間で年平均16%伸びた最大の成長分野のひとつ。「マーチ」と同じくタイで生産し、日本に輸入する。タイでは日本に先駆けて5月に発表会を開き、東南アジアなど海外展開を進めるとみられる。

日産は元会長のカルロス・ゴーン被告の指導下で、販売奨励金を使った海外拡張戦略を推し進めてきた。11年度に488万台だった世界販売台数はピーク時の17年度には約2割増の577万台まで伸びた。だがその裏で新車の開発・投入は滞りがちになっていた。

その象徴が国内だ。19年度に国内で発売した新型車はトヨタ自動車ホンダがそれぞれ乗用車を含む6車種、3車種だったのに対し日産は軽自動車の1車種のみだった。日産の国内販売台数は19年度には53万台と、過去10年間で2割弱減った。

国内でのポジションは低下し、14年度以降はトヨタやホンダはおろか、スズキやダイハツ工業を下回る5位が定位置になった。系列販売店からは「2年半も新車を出さないなんて、もはや車メーカーと言えない」などと不満も噴出していた。

「失敗を正しい軌道へ修正し、選択と集中を一切の妥協なく断行する」。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は5月下旬の決算会見で改めて拡大路線との決別に言及。23年度までの新中期経営計画で、年700万台規模に膨れ上がった生産能力を540万台まで減らす方針を示した。

代わりに今後1年半で新型車を世界で12車種投入し、商品ラインアップの魅力を高める。全販売台数のうち電動車の割合を示す「電動化率」を日本では足元の25%から23年度末までに60%に、中国と欧州はそれぞれ23%、50%まで高める。

中国政府は今後、HVを新たに「低燃費車」と位置づけて優遇する方針で、日産にとっても追い風になりそうだ。年内にはSUVのEV「アリア」を投入する。これまで「リーフ」だけだったEVの品ぞろえにSUVが加わる。アリアには高速道路では手放し運転ができる運転支援技術も搭載するもようだ。電動車と並ぶ日産の看板である運転支援技術も新型車に矢継ぎ早に採り入れる。

一方、新型コロナの逆風下での新車投入には懸念も残る。自動車業界団体によると、5月の国内新車販売台数(軽自動車含む)は前年同月比4割減まで落ち込んだ。新車需要が低迷し、日産は7月も国内3工場で生産調整を余儀なくされる。

ライバル車との競争も焦点だ。新型キックスの価格は約280万円から。ある国内販売店の担当者は、HVのSUVで同価格帯の「トヨタの『C-HR』やホンダの『ヴェゼル』と競合しそうだ」と指摘する。

小型SUVはもともと日産が10年に発売した「ジューク」が先駆けだ。初代キックスはその後継車として16年に海外で投入した。だが市場を開きながら、新型車を投入できずに顧客を奪われた。

小型SUVでの存在感を取り戻し、「技術の日産」ブランドを復権できるか。HV専用車の売れ行きは、経営再建の行方を左右しそうだ。

(寺井浩介)

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