危機感で「前のめり」 専門家会議、助言のあり方課題

2020/6/24 20:12 (2020/6/25 5:21更新)
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記者会見する新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の(手前から)尾身茂副座長、脇田隆字座長ら(24日、東京・内幸町の日本記者クラブ)=共同

記者会見する新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の(手前から)尾身茂副座長、脇田隆字座長ら(24日、東京・内幸町の日本記者クラブ)=共同

政府が24日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を廃止し、関係閣僚会議の下に新たな組織を設置する方針を示した。専門家会議のメンバーは同日に記者会見し、「あたかも専門家会議が政策を決定しているような印象を与えた」とこれまでの対応を省み、「政府との関係性を明確にする必要がある」と提言した。

同日午後に日本記者クラブで同会議の座長、脇田隆字・国立感染症研究所所長らが「次なる波に備えた専門家助言組織のあり方について」と題した提言を説明した。この中で、国民に危機感が十分伝わらず同会議の情報発信が「前のめり」になったと反省する姿勢も示した。

専門家会議は2月14日、政府の対策本部に対して「新型コロナウイルスの対策について医学的な見地から助言等を行う」ために設置。メンバーは国内流行に備えて2月初めに立ち上がった厚生労働省への助言チームに加わった感染症の専門家が中心となった。

公表した提言によると、2月中旬ごろには「このウイルスの感染拡大と影響が甚大になる」と予測。「新たな感染症による未曽有の事態を目の前にし、我々専門家が果たすべき役割は、政府に助言するだけでなく、感染予防や感染拡大防止に資する対策案も提供すること」と判断したという。

通常、政府の審議会などはこうした積極的な取り組みをしない。そのため政府の了解を得て2月24日に記者会見を開催。「無症状や軽症の人であっても、他の人に感染を広げる例があるなど、感染力と重症度は必ずしも相関していない」とする「見解」を公表した。

この後、3月19日には「状況分析・提言」として総合的な内容に踏み込んだ。「あるとき突然爆発的に患者が急増(オーバーシュート)するという懸念」を指摘。「一定期間の不要不急の外出自粛や移動制限など都市封鎖(ロックダウン)に類する措置に追い込まれる」と警鐘を鳴らした。

提言では、専門家会議が前面に出る対応について「外から見ると、あたかも専門家会議が政策を決定しているような印象を与えていたのではないか」と指摘した。

特に「人との接触を8割減らす10のポイント」「新しい生活様式の実践例」など、生活方法を提示した点は「専門家会議が人々の生活にまで踏み込んだと受け止め、警戒感を高めた人もいた」と分析。「専門家会議の役割に対して本来の役割以上の期待と疑義の両方が生じた」とした。

このため提言では政府の専門家助言組織について「医学や公衆衛生学以外の分野からも様々な領域の知を結集した組織とする必要がある」と求めた。さらに「リスクコミュニケーション(危機時の情報伝達)のあり方をアドバイスできる専門人材を参画させるべきである」とした。政府が設置する新組織にはそうした専門家が入る予定だ。

未知の感染症に対しては、偏見や差別、一人暮らしの高齢者や休業による家庭への影響など、医学以外の社会的課題が生じる。提言では専門家助言組織については「感染症対策に関して起きる諸問題を先取りして議論し、政府の意思決定に資する助言をする専門家も必要」と求めた。

また感染データについて「諸外国のように迅速なデータ公開や研究、論文発表ができず、専門家会議としては対策の根拠となったデータを迅速に公表できなかった」と不十分さを認めた。そのため「国際的にも日本の対策の評価を難しくさせた」と反省した。

今回は「各自治体での個人情報の取り扱いが違うなどの理由でデータの提供、利用、公表の合意を得ることは容易でなかった」という。今後の感染拡大に向けて、厚労省の感染者把握システム(ハーシス)を活用するとともに、国全体のデータヘルス改革を加速させるべきだと提言した。

■発足当初から政府とズレ
 専門家会議は発足当初から政府とのズレがあった。2月24日に発した「これから1、2週間が(感染が)急速に進むか収束できるかの瀬戸際となる」との見解は官邸側と事前調整されていなかった。官邸側は「寝耳に水」との声があがったが、「瀬戸際」との認識を受け入れ、足並みをそろえた。
5月の大型連休以降に緊急事態宣言の対象を段階的に解除する場面にさしかかると、溝が目立つようになった。疫学の専門家が集まった専門家会議は解除に慎重だったが、官邸は経済再開を急いだ。

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