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日産、国内2年半ぶりの新車 HV「キックス」への期待

日産自動車は24日、新型のハイブリッド車(HV)「キックス」を30日に発売すると発表した。1カ月前に中期経営計画と巨額の最終赤字を公表した後、国内では初めてとなる新型車の投入だ。日産は反転攻勢に向け、この新型車には3つの期待をかけている。

「電動の走りに加えて(運転支援技術の)プロパイロットも搭載した。価格も(値ごろな)200万円台で、日産の主力のクルマになる」。星野朝子副社長は同日に開いたオンライン発表会で、こんな自信を示した。

披露した多目的スポーツ車(SUV)のキックスは独自技術の「eパワー」を使ったHVだ。これまでeパワーは「ノート」や「セレナ」に導入してきたが、いずれもガソリン車と併売している。キックスはeパワーのHVだけの展開で、日産として初の試みだ。

星野副社長は「日産は電動化と自動運転技術のリーダー役として市場をけん引していく。キックスはその先陣を切る」とも述べた。再起を期す日産はキックスに3つの期待を込めている。

1つは電動車のグローバル展開だ。EVでは「リーフ」で先行する日産だが、電動車の内訳を台数ベースでみればeパワーを搭載したHVの方が圧倒的に多い。これまでは国内販売だけだったが、キックスを手始めにアジアや欧米など海外展開を始める。19日にはHV専用の次世代型電池で中国の電池メーカーと共同開発に向けた検討を始めると発表した。HVなど電動車のグローバル展開を加速させる狙いだ。

2つ目は手薄になっていた人気のSUVの品ぞろえ再強化だ。かつては国内でSUVの車種も豊富だったが「ムラーノ」や「デュアリス」が数年前になくなり「ジューク」も2019年末で生産終了した。頼みの綱である「エクストレイル」も現行車は13年にフルモデルチェンジして以来、変わっていない。一方でトヨタ自動車は「ライズ」や「RAV4」などの人気車種に加え、新型「ハリアー」を今月発売し、「ヤリスクロス」の投入も控えている。

3つ目は日本市場の再活性化だ。5月下旬に発表した中期計画では海外の一部市場から撤退し、日本と北米、中国の3市場に集中すると表明した。ブラジルやメキシコなど海外だけで生産・販売していたキックス(エンジン車)をこのタイミングで日本市場に投入するのは、新たに打ち出した経営方針の象徴といえる。

「このままで、終われるか」。中計や決算の発表を目前に控えた5月中旬、JR渋谷駅にはキックスを大写しにした広告が貼られていた。直後のリストラ策や約6700億円に及ぶ巨額の最終赤字の発表と、キックスによる反転攻勢の決意を暗示したような内容だ。

もちろん現実はそう甘くはない。日産は当面、これまで新型車の開発・投入を後回しにして日本市場を軽視してきたツケを払わされることになるだろう。新型コロナウイルスで市場が大幅に落ち込む中で、日産の販売台数の減少幅は競合他社よりも大きい。今後の苦難は容易に想像できる。

それでも過剰な生産能力の削減など、身をかがめる計画は示した。後はそれを着実に実行しつつ、離れてしまった顧客をもう一度振り返らせる魅力的なクルマを投入し続けられるかが復活へのカギを握る。

(小泉裕之)

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日産自動車が選択を迫られている。
内田誠新社長のもと、業績をどう立て直すのか、筆頭株主である仏ルノーとの関係をどう再構築するのか。

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