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1強体制に風穴? 競馬・春のクラシック

2020/6/27 3:00
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日本ダービーを制したコントレイルは2歳時にさほどレース間隔を空けてない一方、前哨戦抜きで皐月賞へ直行した=共同

日本ダービーを制したコントレイルは2歳時にさほどレース間隔を空けてない一方、前哨戦抜きで皐月賞へ直行した=共同

中央競馬は28日の宝塚記念で、上半期の開催が一段落する。既に2歳世代(2018年産)の戦いも始まったが、今なお記憶に新しいのは牡牝のクラシックでの無敗の二冠馬誕生である。桜花賞、オークスをデアリングタクトが制し、皐月賞と日本ダービーはコントレイルが優勝した。両馬とも社台グループ以外の生産。近年は同グループ、特にノーザンファーム(NF)の生産馬が3歳戦を席巻していたが、今年は様相一変。14年ぶりに同グループ生産馬が、春の3歳クラシックで勝ち星を逃した。

父ディープインパクト以来、15年ぶりに無敗の二冠馬となったコントレイルは、ノースヒルズ(NH=北海道新冠町)の生産。NH生産馬は03年にスティルインラブが牝馬三冠を達成。13、14年はキズナとワンアンドオンリーで日本ダービーを連覇。過去20年で春のクラシックを7勝した。本業が馬産以外だった馬主で、生産に参入した人をオーナーブリーダーと呼ぶが、現在の日本では絶滅危惧種に近く、孤塁を守っているのがNHである。

■ノースヒルズ、レース間隔の空け方の妙

コントレイルは昨年9月に阪神で初戦を勝つと、2戦目のG3、東京スポーツ杯2歳ステークス(芝1800メートル)を1分44秒5の破格のレコードで圧勝。3戦目にホープフルステークス(中山芝2000メートル)でG1初制覇を果たした。目を引いたのはその後で、陣営は前哨戦抜きで皐月賞への直行を表明した。

これはNFが近年、多用している手法で、サートゥルナーリアも18年から19年にかけて前哨戦抜きで両G1を制した。こうした手法は、NFが持つ滋賀県の「しがらき」、福島県の「天栄」という2つの充実した調教施設が支えている。NHも鳥取県伯耆町で「大山ヒルズ」という調教施設を運営する。しがらきや天栄と同様、1歳秋以降の育成馬と現役馬の調教の場となっており、800メートルの坂路を持つ。

NF以外にも美浦や栗東の外の調教施設をフルに運用して、G1で結果を出す勢力が現れるか? これが隠れた見どころだったが、結果は前年のサートゥルナーリア以上だった。同馬は昨年の皐月賞優勝後、日本ダービーで断然人気に推されたが、出遅れて4着。だが、今年のコントレイルは皐月賞で、NF生産組のエース格サリオスを半馬身差で抑え、ダービーでは同馬との差を2馬身半に広げて二冠を達成。能力差や相手関係に加え、NFとコントレイル陣営では、手法に微妙な差があった。

近年のNF生産の素質馬は早々にデビューし、レース間隔が長くなる。サートゥルナーリアは初戦が18年6月10日の阪神で、サリオスは昨年6月2日の東京。2戦目までにサートゥルナーリアは約4カ月半、サリオスは約4カ月空いた。コントレイルは初戦が昨年9月15日で、2戦目まで約2カ月。さらに6週の間隔でG1のホープフルステークスに参戦した。年明けの臨戦過程は同じでも、コントレイル陣営は2歳時にさほど間隔を空けず、ダービーが行われる東京も走った。この差は、コントレイルを管理する矢作芳人調教師が、有力厩舎の中でも出走数が多いことと関係しているかもしれない。サートゥルナーリアはダービーで4着に敗れ、昨秋の天皇賞も6着。「東京は苦手」という印象が染みついた感がある。今年のクラシックが無観客で、静かな環境だった点も見逃せないが、G1を中心に施行者が設定した競走体系とずれが生じるほど、間隔を空けるNFの手法は万能なのか。2歳時は「従来型」、3歳時は「NF型」を併用したコントレイル陣営の成功は、今後に一石を投じた。

■「元社台系」の牝馬二冠

オークスを制したデアリングタクトは祖母が社台ファーム生産馬。馬場の高速化にも対応する反応の速さが際立った=共同

オークスを制したデアリングタクトは祖母が社台ファーム生産馬。馬場の高速化にも対応する反応の速さが際立った=共同

無敗の二冠は牡馬なら7頭だが、牝馬は過去に1957年のミスオンワードが唯一だった。ただ、牝馬三冠は今世紀に4頭出ており、無敗で桜花賞を迎える方が難関だった。デアリングタクトは2戦という最短距離で桜花賞出走権を確保し、歴史を塗り替えた。同馬もコントレイル同様、2戦目で一気に注目度が上がった。京都芝1600メートルのエルフィンステークスを1分33秒6のタイムで2着に4馬身差。後にG1を7勝したウオッカの07年の記録を0秒1上回った。桜花賞は大雨で重馬場、オークスは好天と馬場状態は対照的だったが、鮮やかな末脚を発揮したのは同じ。オークスでは前半は他馬の圧迫で位置取りを下げ、直線もなかなか進路が開かなかったが、加速の早さで窮地を脱した。馬場の高速化が目立つ近年の中央の芝では、騎手の指示に応えて瞬時にトップスピードに達する資質が強く要求される。牡牝混合G1で牝馬が活躍する例が多いのも、こうした状況を反映している。デアリングタクトも反応の速さが際立っていた。

同馬は祖母が社台ファーム生産馬で、05年の桜花賞3着、NHKマイルカップ2着のデアリングハート。母デアリングバード(父キングカメハメハ)も社台レースホース所有で、14年7月の1戦(9着)だけで引退。同年10月に商社「ジェイエス」主催の繁殖牝馬セールで長谷川牧場(北海道日高町)に360万円(税抜き)で売却。デアリングタクトは2番目の産駒だった。社台グループは常に海外から良質の繁殖牝馬を導入しており、国内で活躍した牝馬も大半が6歳で牧場に戻る。適度に更新しないと牧場が満杯になるため、相当な血統背景の馬でも手放す。こうした流れは、国産馬の資質を底上げしている。社台グループ生産馬は桜花賞に6頭、オークスに7頭が出ていたが、いわば元の身内に圧倒された形だ。

安田記念は2019、18年の桜花賞馬であるグランアレグリア、アーモンドアイが1、2着。秋にノーザンファーム勢の巻き返しはなるか=共同

安田記念は2019、18年の桜花賞馬であるグランアレグリア、アーモンドアイが1、2着。秋にノーザンファーム勢の巻き返しはなるか=共同

上半期の平地G1競走11戦で、NF生産馬は昨年同時期の半分の4勝。すべて4歳以上で、18、19年のクラシック活躍馬だった。7日の安田記念も19、18年の桜花賞馬であるグランアレグリア、アーモンドアイが1、2着だった。01-19年の春のクラシック76戦(1着同着が1回)で、社台グループは50勝、うちNFは30勝。今年はコントレイル、デアリングタクトという傑出した2頭が出た特異な年だが、両馬を脅かす存在が出ないと、来年も厳しくなる。秋は両馬の無敗の三冠挑戦とともに、社台グループ、特にNF勢の巻き返しが焦点となろう。

(野元賢一)

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