米デモ、変革けん引役は白人と若者 黒人暴行死1カ月

2020/6/24 8:24
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デモの参加者に白人が多いのが特徴(19日、ニューヨーク)

デモの参加者に白人が多いのが特徴(19日、ニューヨーク)

【ワシントン=中村亮、ニューヨーク=大島有美子】米中西部ミネソタ州で起きた白人警官の暴行による黒人男性の死亡事件から25日で1カ月が経過する。繰り返す黒人差別の悲劇への抗議デモは白人や若者がけん引し、国民に身近なスポーツや音楽界に変革を迫った。差別撤廃に向けた改革を政界に迫るためにはデモの持続性がカギを握る。

5月25日、ミネソタ州で白人警官が黒人男性ジョージ・フロイドさんの首を膝で8分以上にわたって押さえつけ、その後に死亡が確認された。米メディアによると、これまでに全米50州の2000都市以上で抗議デモが起き、現在も続いている。少なくとも200都市で外出禁止令が出され、1968年に起きたキング牧師の暗殺事件以来の規模となった。

今回の大規模デモには2つの特徴がある。一つは白人の参加だ。メリーランド大学のダナ・フィッシャー教授らは6月6日の首都ワシントンでの抗議デモ参加者のうち白人は65%を占め、黒人(15%)を大きく上回ったと分析している。ニューヨークやロサンゼルス、英ロンドンでも同様の傾向が見られた。

教師の白人女性アリッサ・ディジースさん(31)は19日にニューヨークで初めてデモに参加した。「(黒人差別撤廃の)勢いを失わせないように来た」と話す。米国では2014年に起きた白人警官による黒人青年の銃殺事件などを受け、リベラルな白人が人種問題に意識を高めていたとされる。トランプ大統領への反発もあり、デモへの参加が増えたとみられる。

10代で黒人と白人の友人同士が参加するケースも(19日、ニューヨーク)

10代で黒人と白人の友人同士が参加するケースも(19日、ニューヨーク)

スタンフォード大学のダグラス・マクアダム教授は60年代の公民権運動で、白人は主に資金支援の役割を担ったと指摘し「実際のデモへの参加は極めて少なかった」と語る。63年のワシントン大行進は8割程度の参加者が黒人とされる。マクアダム氏は14年の銃殺事件後のデモも「参加者は主に黒人だった」と指摘する。

もう一つの特徴が若者の参加だ。米ピュー・リサーチ・センターによると、18~29歳の13%がデモに参加。30~49歳(7%)や50~64歳(4%)を上回った。フィッシャー教授の調査でもデモ参加者の平均年齢はワシントンで30歳、4人に1人が23歳以下だったという。SNS(交流サイト)も利用して参加が一気に増えた。

人種や世代を超えたデモは社会に変革を迫っている。米人気自動車レース「NASCAR」は6月上旬、南北戦争で奴隷制度存続派の南部州が使った南軍旗のレース会場内での掲揚を禁止した。南部を中心にレースを展開し、白人ファンが8割を占めるNASCARの決断について、ルイビル大学のクレイトン教授は「非常に大きな、真の変化が起きていることの表れ」と評価する。

プロフットボールNFLのコミッショナーも、人種差別や警察の暴力に抗議する選手を支持しなかったことを謝罪した。NFLは黒人選手が7割を占めるが、オーナーや幹部はほとんどが白人だ。これまで抗議運動に距離を置いていた。音楽業界でも人気カントリーグループ「レディ・アンテベラム」が、南北戦争に由来する名前を「レディ A」に改名した。

一方で政治の足取りは鈍い。議会では与野党がそれぞれ独自の警察改革法案を提出。民主党は警官を訴訟から守る免責の範囲を狭める条項を設けるが共和党は反対した。首締め行為についても、民主党が全面禁止を盛り込むのに対し、共和党は禁止しない州に補助金を減らす制度の創設にとどまる。事件が起きたミネソタ州の議会でも与野党が折り合えず、警察改革は棚上げになった。

トランプ氏は20日の南部オクラホマ州での支持者集会で、会場外で起きた黒人差別に対する抗議デモを念頭に「外には悪い人たちがいる」と強調した。抗議デモを「極左」の行動とレッテルを貼りを続ける。共和党系の政治コンサルタントのダグラス・ヘイ氏は「通常は国の結束を求めるものだが(分断を促してきた)トランプ氏には難しい」とみる。

指導者不在の抗議デモが政治をどれだけ変える力があるのか未知数の面がある。デューク大学のレンツ・スミス准教授は「SNSを通して急速に拡大した運動の持続性を見極める必要がある」と指摘する。新型コロナウイルスによる経済閉鎖で時間を持て余した若者がデモに参加したとの見方もある。60年代はキング牧師が絶大な人気を誇る指導者として運動を指揮していた。

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