老後破綻防ぐ年金生活者の家計 計画的取り崩しがカギ
節約について考える(5)

Life is MONEY
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コラム
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2020/6/29 2:00
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写真はイメージ=PIXTA

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今月はLife is MONEYのテーマとして「節約」について取り上げてみました。誰しも人生で避けて通れない課題のひとつですが、いかに前向きに取り組めるかがカギだということがおわかりいただけたかと思います。最後の週は年金生活者の「節約」を取り上げてみたいと思います。年金生活者もまた、節約とともに人生を過ごすのです。

~「基本収支」を意識~

年金生活者の家計には大きな制約条件があります。「収入の急増」が望めないということです。昇格・昇給があったり公的年金額が増額改定したりすることはまずありません。ボーナスも支給されません。むしろマクロ経済スライドが実施されているあいだは、物価上昇率より低い増額改定しかされません。

すなわち、その定期収入でこれから数十年を過ごしていくことになります。65歳の男性なら平均的に19.7年、女性なら24.5年は長生きをしますので「20年、収入は増えない」という、現役時代とは異なるステージで家計を考えることになります。

資産運用でも高いリスクを取る余地がなくなります。短期的な急落があったとき、生活資金に窮すると困るからです。高齢者もある程度はリスクを取っていいのですが、資産の一部で分散投資するなどの配慮が必要で、そうすると期待リターンも低くなってしまいます。

いずれにせよ、高齢者は「定期的な収入」となる公的年金水準をベースに節約を考えることになります。

~日常生活費を「年金収入」に収める意識を~

年金生活に入ったら、貯蓄をあまり考えなくてもかまいません。また、公的年金で生活費が不足していてもかまいません。

年金生活者が考えるべきは「計画的取り崩し」の範囲に家計をコントロールすることです。式で表せば「公的年金収入+計画的取り崩し額=1カ月の支出」であれば問題ありません。

そして「公的年金収入=日常生活費」、「計画的取り崩し額=教養娯楽費、交際費など」に分けられるとなお安心です。

公的年金収入は終身の生活基盤として期待できるので、これと日常生活費がバランスさえしていれば、老後破綻の心配もなくなります。総務省の家計調査などでも、実は日常生活費と公的年金収入はほぼトントンなのです。

私たちが受け取る公的年金収入は、数十年にわたる公的年金加入履歴の反映です。夫婦で働き、夫婦で保険料を納めた結果としての年金額になります。ですから、年金生活の基本、日常生活の水準はそこに合わせていくことを意識し、節約をしてみましょう。

年金生活に入ったばかりの人たちは、現役会社員時代と生活も支出も激変します。「ちょうどいい生活」ができるように、生活を整えていく感覚で節約をしてみるといいでしょう。

~生きがいやゆとりは予算化して管理~

年金生活の節約のもうひとつのカギは「教養・娯楽費」「交際費」といった日常生活費以外のところにあります。

人生100年時代のセカンドライフは長く、飲み食いに困らなければ事足りる、というのはやはり味気ないものです。生きがいやゆとりのためにも少々予算を割いてみたいものです。

一方で、なんでもかんでも無条件に予算化しているといくらお金があっても足りません。「憧れの単車を買いたい、買うなら北海道縦断、いやアメリカ横断の旅をしたい……」なんて夢を膨らませすぎると退職金も1年で底をついてしまうでしょう。

計画的取り崩し、というと難しいようですが、「月平均4万円」を取り崩す、と決めるだけだと思えばそれほどややこしいことはないはずです。

月4万円ということはざっくり年間50万円の取り崩しです。これを25年見積もったとすれば、リタイア時点で1250万円を取り分けておけばよい、ということになります。

さらに計画性を高めるなら「年50万円のうち10万円が旅行予算、4万円が孫へのお祝い、毎月3万円を取り崩す」のように年間での配分をイメージできればなお具体的です。

生きがいやゆとりの予算は「節約」というよりは「コントロール」の感覚で支出のバランスを取っていくといいでしょう。

~無理のない範囲で「使う」なら怖くない~

一時期「年金破綻」か「老後破産」と騒がれました。しかし、2020年に年金積立金が底をつくという主張は誤りで、公的年金は破綻する気配もありません。年金生活者がみんな破産するわけではなく、高齢者の生活保護世帯が何倍にも増えたということもありません(増えるには増えていますが、高齢者世帯全体が増加している)。

ですから、高齢期の家計はあまりおびえる必要はありません。節約というと、何でも我慢する「清貧ライフ」のイメージがありますが、普通に暮らすほとんどの人たちは、公的年金収入と日常生活費をバランスさせ、少しの取り崩しをすることで老後の幸せや満足を探しています。

また、年金生活に入ってからの節約は、新しい世界も開けます。火曜日の朝、東京駅には「オフシーズンの平日2泊旅行」の参加者がたくさんいます。調べてみると驚くほど安いプランで、国内の世界遺産を見物できるのです。シニア割引もいろいろな場所で用意されています。

セカンドライフは、節約を楽しみながらも、リーズナブルで満足度の高い出費にこだわってみたいところです。現役時代には実現できなかった夢も、きっとかなえられるはずです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)

フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp
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