高まる個人の金投資人気 株高なのになぜ?

日経マネー特集
2020/6/26 2:00
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金を投資対象とする投信や上場投資信託(ETF)への資金流入も続いている

金を投資対象とする投信や上場投資信託(ETF)への資金流入も続いている

個人投資家の間で金に投資する投資信託や純金積立の人気が高まっている。コロナ禍に伴う世界経済や日本の景気の先行き不透明感に加え、金相場の上昇が続いていることが背景にある。ただ、セオリー通りなら株高になれば安全資産とされる金の魅力は薄れ、価格も下落するはずだ。株式相場が上昇基調にある中で、個人の金人気が衰えないのはなぜか。

■金投信への資金流入は高水準続く

「今後も金価格は上がるとみている」。40代の兼業投資家、神無月さん(ハンドルネーム)は金相場の先行きに対して強気だ。

もともと100万円を元手に金(インゴット)に投資し、短期売買で値上がり益を狙うスイングトレードを行っていたが、コロナショック後の金相場の堅調な値動きを見て、元手を150万円に増やした。先高観の強さから、今後は購入した金の一部を長期保有することも検討しているという。米ニューモント・マイニングなど、「金鉱山の権益を持つ個別株の購入も考え始めている」(神無月さん)。

金を投資対象とする投信や上場投資信託(ETF)への資金流入も続く。金投信の三菱UFJ純金ファンド(三菱UFJ国際投信)は、3月の資金流入額が2月の1.9倍に達した。4~5月は流入額がやや衰えたものの、それでも19年の月間平均流入額との比較では2倍前後の水準だ。ETFの純金上場信託(現物国内保管型)の売買高も、コロナ禍が深刻化した2月以降は高水準を維持している。

■純金積立を始める個人も増加

個人の間で根強い人気がある実物の金の積み立て投資も活況だ。田中貴金属工業(東京・千代田)によると、同社の純金積立の5月の新規申込件数は、前年同月比で2.5倍に増えた。「株式投資に対する不安感が根強い中、金投資は安全性が比較的高いという認識が広がっているようだ」(同社)という。

日経マネーが4月から5月にかけてインターネット上で実施した個人投資家調査の結果を見ても、金人気は鮮明だ。「今後運用額を増やしたい資産」として金の実物や金ETFを挙げたのは、投資歴1年未満を除く回答者の7.9%を占めた。国内外の株式や投信を除くと最も多く、不動産投資信託(REIT)を上回る人気ぶりだ。

一般的には株安になると安全資産である金は買われやすくなる。相場が混乱していた3~4月上旬に金投信やETFが人気化したのは、その意味で理解しやすい。しかし、相場が上昇基調に転じてからも、金商品への資金流入は続いている。株高でも金人気が衰えず、しかも金そのものの価格も上昇しているという特異な状況が続く。

■緩和マネーが金相場を押し上げか

個人の金に対する強気姿勢の背景にあるものは何か。前出の個人投資家、神無月さんが指摘するのは、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和だ。「カネ余りで今後はインフレ率が高まるだろう。そうなるとドル安となり、金価格も上がるのではないか」とみる。

緩和マネーが株式だけでなく金にも流れ込んでいるという側面もある。国際指標であるニューヨーク金先物は1トロイオンス1700ドル台後半と、7年半ぶりの高値圏で推移している。

低金利政策で国債利回りが低下することで、国債と比較した時の金の投資妙味が高まっているのもポイントだ。金には国債と違い金利収入がないが、「ゼロ金利政策なら金が代替資産とみなされやすくなる」(神無月さん)との期待は強い。

■リスクヘッジとしての需要が増加

もう一つ大きいのが、株式相場の不透明感の強さだ。4月以降は世界的な株高局面となっているが、それでも米VIX(恐怖指数)は、不安心理が高まった状態とされる20を上回ったままだ。

コロナ禍に伴う景気悪化は深刻で、第2波への懸念はくすぶっている。新型コロナウイルスの感染再拡大への警戒感から、6月11日に米ダウ工業株30種平均株価が1800ドル超下げたのは記憶に新しい。高水準のVIXは、経済のV字回復期待はあるものの、完全なリスクオンにはなれない投資家心理を反映している。リスクヘッジ目的で金が買われやすい環境は続いている。

さらに、金の買い手が年金基金や富裕層などの長期投資家である点も大きい。日本貴金属マーケット協会の池水雄一氏は、「欧米の長期投資家がポートフォリオの一部を金の現物やETFに移しつつある」と指摘する。世界の富裕層に投資助言するプライベートバンク(PB)でも、金の持ち高を増やすことを助言する動きが広がっている。

金相場の上昇局面では利ざやを稼ごうとする短期投資家がけん引することが多いが、今回は様相が異なっている。米ニューヨーク先物市場での投機筋の残高が1年ぶりの低水準となる一方、金ETFで世界最大の「SPDRゴールド・シェア」の金保有残高は昨年末比で約3割増加した。リスクヘッジを目的とした旺盛な金需要を背景に、金の在庫も積み上がっている。

金融緩和と経済の不透明感、そして長期投資家の買いという3つの要因から来る金の先高観は強い。FRBのパウエル議長が将来の利上げに対する極めて強い慎重姿勢を示したこともあり、「(米国でゼロ金利政策の継続が見込まれる)22年末までは、金の上昇局面は続きそう」(池水氏)との見方もある。

こうしたマクロ面での追い風を、日本の個人投資家も敏感に感じ取っていると言えそうだ。日本の場合、金は株式同様にネットでも投資できる上、純金積み立て投資の最低投資金額は数千円と、心理的なハードルも低い。株式市場の「コロナバブル」はやや一服した感があるが、個人投資家の金投資ブームは、当面続きそうな気配だ。

(川路洋助)

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著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/6/19)
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