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Jリーグ「第2の1993年」 再開後、カギを握るもの
サッカージャーナリスト 大住良之

2020/6/25 3:00
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Jリーグがようやく再開される。

J1とJ2は2月21~23日にかけて第1節を実施しただけで中断され、J3は3月7日に予定されていた開幕が延期されていたJリーグ。J2とJ3は今月27日に、そしてJ1は7月4日に「再スタート」を切る。

最初の2節はすべての試合が無観客(リモートマッチ)だが、政府の指針に基づき、7月10日以降は5000人あるいは収容数の半数のうちどちらか少ない人数まで観客を入れ、8月にはそれを収容数の半数まで上げる方向だ。ただ、大声を上げての応援などを慎むことが求められ、当面は「新しい観戦スタイル」を余儀なくされる。

PCR検査を受けるJ2東京Vの大久保(右)ら(Jリーグ提供)=共同

PCR検査を受けるJ2東京Vの大久保(右)ら(Jリーグ提供)=共同

Jリーグも細心の注意を払った態勢で臨む。試合が感染拡大につながることは絶対避けなければならないと、選手だけでなく監督などチームスタッフ、役員、そしてレフェリーなど関係者全員約3500人のPCR検査を2週に1度実施し、それをリーグが一元的に管理する。専門家の指導に従って作成し、日々更新している詳細な「感染症対応ガイドライン」は、すでに70ページを超え、「石橋をたたく」ような慎重さで迎える「再開」である。

ではどんなリーグになるのか――。

昨年は、横浜F・マリノスがシーズン後半に圧倒的な強さを見せ、15年ぶりの優勝を飾った。オーストラリア人のアンジェ・ポステコグルー監督が2年間かけてつくったチームは徹頭徹尾の攻撃で相手をたたき伏せる。

練習を見守る横浜Mのポステコグルー監督(横浜M提供)=共同

練習を見守る横浜Mのポステコグルー監督(横浜M提供)=共同

ガンバ大阪をホームに迎えた今季第1節は1-2で不覚を取ったが、その4日前のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の第2節、オーストラリアのシドニーFCを迎えた試合では、新加入のFWオナイウをトップに押し立てた布陣で4-0の圧勝。第1節にはアウェーで強豪・全北現代(韓国)に2-1で勝っており、「ポステコグルーのサッカー」がさらに進化していることを示した。

その横浜Mに対抗するのではと期待されるのが、天皇杯で優勝を飾ってクラブ初タイトルを獲得、ACLの出場権もつかんだヴィッセル神戸だ。Jリーグの第1節はJ2から昇格した横浜FCと1-1で引き分けたが、ACLではアウェーで韓国の水原三星を1-0で下し、ホームではマレーシアのジョホールに5-1で圧勝した。

新加入のFWドウグラスが早くもチームになじみ、スピードスター古橋亨梧と組む破壊力抜群の攻撃陣を名手イニエスタが操るのだから、Jリーグ初優勝の可能性も十分ある。親会社によるクラブの損失補填が、プロ野球と同様に非課税になることも認められ、夏にはさらに大物外国人選手がくる可能性も生まれている。

神戸はイニエスタ(左)が破壊力抜群の攻撃陣を操る(ヴィッセル神戸提供)=共同

神戸はイニエスタ(左)が破壊力抜群の攻撃陣を操る(ヴィッセル神戸提供)=共同

だが、こうした「戦力比較」では計り知れないものが今季のJリーグにはある。開幕直後からの4カ月間もの中断。その影響は、チームの置かれた状況によってさまざまであるに違いない。7月4日に万全な状態まで仕上がっていないチームもあるだろう。そしてまた、その4カ月間を埋めるべく組まれた新日程が与える影響も無視はできない。

6月15日に発表された新日程では、7月4日から12月19日までの24回の週末とともに、9回の「ウイークデーマッチ」が挟まり、さらにルヴァンカップのリーグステージが2節、準々決勝から決勝戦などが入る。アジア・サッカー連盟(AFC)が予定どおりの形で残りの試合を行うと宣言したACLが入れば、横浜M、神戸、そしてこの2クラブとともにACLに参加しているFC東京の3クラブは、Jリーグの試合を消化しきれなくなるという事態も考えられる。

5月26日に練習を再開したFC東京。ACLに参加しているクラブはJリーグの試合を消化しきれなくなる恐れも(FC東京提供)=共同

5月26日に練習を再開したFC東京。ACLに参加しているクラブはJリーグの試合を消化しきれなくなる恐れも(FC東京提供)=共同

世界的に認められた今年限りのルールにより、選手交代が5人(従来は3人)に増やされたが、それだけでは間に合わない。今年の過密日程は、「ターンオーバー」、すなわち試合ごとに選手を大幅に入れ替えることを全チームに強要するだろう。主力を休ませることによる戦力ダウンが大きいチームは、安定した成績を残すことができない。チームとしてのコンセプトがどこまで浸透しているか、そこを問われるシーズンでもある。

また、「降格なし」という今季の特別措置が与える影響も無視できないだろう。来年の「勝負」に備え、今季はある程度勝利を犠牲にしても若手に思い切ったチャンスを与えようと考える監督もいるかもしれない。

もう一つ、忘れてならないのは日本代表日程との関連だ。すでにAFCは10月と11月にワールドカップ・アジア2次予選の残り4節を消化することを発表している。さらに日本サッカー協会は9月にも日本代表の活動を行う意向を示している。日本代表の活動期間(9~11月の各月にそれぞれ9日間)にもJリーグは日程を入れており、代表に選ばれるとJリーグを最多5試合欠場することになる。この影響も無視できない。

弱音はかずに百パーセントの力を

だが泣き言は許されない。どんな状況になっても戦い続けるのが今季のJリーグであるという強い覚悟を、選手や監督だけでなく、クラブの代表まであらゆる人がもつ必要がある。

「Jリーグは、1993年のリーグ初年度を思い起こさなければならない」。そう語ったのは、スポーツライターの玉木正之氏である。

93年には、シーズンを通じて週2試合という過密日程のなかで、選手たちは喜々としてプレーし、どの試合でも力を百パーセントを出し尽くし、文字どおりぶっ倒れるまで戦い抜いた。それが理屈抜きにファンを引きつけ、Jリーグという文化を日本に根づかせる礎となった。

2020年シーズンは、玉木氏が言うように、第2のスタート、「第2の1993年」に違いない。選手をはじめJリーグにかかわるすべての人が「Jリーグの成功は自分にかかっている」という意識をもち、弱音をはかずに百パーセントの力を出し尽くすこと――。今回のコロナウイルス禍は、そのチャンスを与えてくれたのかもしれない。そこが20年シーズンの大きな「カギ」になる。

過密日程のなかで、誰も予想できない展開になる可能性は十分ある。しかし短期間の成績に一喜一憂することなく、全身全霊の戦いをファン、サポーターに届け続けることだけに集中してほしいと思う。

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