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9時間睡眠や長い昼寝に脳卒中リスク 中国で研究報告

「夜の9時間以上の睡眠」や「90分超の昼寝」、「質の悪い睡眠」は脳卒中リスクを高める可能性が明らかに。(C)Rommel Canlas-123RF
日経Gooday(グッデイ)

「夜に9時間以上寝ること」、「90分を超える昼寝をすること」、そして「睡眠の質が低いこと」は、脳卒中リスクの上昇に関係する――。そんな研究結果が、中国の3万人あまりの中高年を対象に行われた観察研究で示されました。

約3万人を6年追跡し、睡眠時間と脳卒中の関係を分析

これまでにも、短時間睡眠または長時間睡眠が、脳卒中リスクに関係することを示唆した研究はありましたが、それを否定する報告もあり、一貫した結果は得られていませんでした。そこで中国華中科技大学のLue Zhou氏らは、夜間の睡眠時間と昼寝(中国では、成人の昼寝は一般的な習慣のひとつだそうです)、睡眠の質、さらには長期的な睡眠時間の変化と、脳卒中の関係を明らかにしようと考えました。

対象にしたのは、中国の国営自動車メーカーである東風汽車集団の退職者を中心とした「東風-同済コホート」という集団です。今回は、このコホートに登録されている4万人余りの中から、登録時点で冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)があった人、脳卒中(脳梗塞や脳出血)歴があった人、がん患者だった人を除外し、さらに必要な情報がそろっていなかった人を除いた3万1750人(平均年齢61.7歳、男性1万3996人、女性1万7754人)のデータを分析しました。

睡眠時間、昼寝の時間、睡眠の質については、質問票を用いた自己申告式の調査を行いました。睡眠時間は「過去6カ月間、毎日何時ごろに眠りにつき、何時ごろ起きていましたか」と尋ねて、回答に基づいて参加者を、6時間未満、6時間以上7時間未満、7時間以上8時間未満、8時間以上9時間未満、9時間以上に分類しました。

昼寝時間は、「過去6カ月間、昼寝を習慣にしていましたか」と尋ね、「はい」と回答した人には「どのくらいの時間昼寝をしていましたか」と尋ねて、回答に基づいて、0分、1~30分、31~60分、61~90分、90分超に分けました。

睡眠の質は、「過去6カ月間の睡眠の質はどのようでしたか」と尋ねて、「高い」「普通」「低い」に分類しました。

睡眠の特性と脳卒中の関係に影響を及ぼす可能性があるものとして、社会人口学的特性(年齢、性別、学齢)、ライフスタイル要因(喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣)、本人と家族の病歴などの情報を登録時に収集しました。さらに、BMI、収縮期血圧と拡張期血圧、空腹時の血中脂質量、血糖値、肝酵素値、腎機能を示す数値、血球数などを調べ、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの有無も明らかにしました。

分析の結果、夜間の睡眠時間が長い人、または昼寝の時間が長い人は、そうでない人々に比べ、男性、低学歴、喫煙者、飲酒習慣あり、運動不足、といった人の割合が高くなっていました。また、昼寝の時間が長い人には、高血圧、糖尿病、脂質異常症患者が多くいました。

夜9時間以上寝ている人は脳卒中リスクが23%上昇

6.2年の追跡で、1557人が脳卒中を発症していました。

夜間の睡眠時間が7時間以上8時間未満のグループ(8570人)と比較すると、9時間以上のグループ(7580人)では、あらゆる脳卒中のリスクが有意に上昇していました(表1)。共変数を考慮して推定したリスク上昇は23%でした。一方で、睡眠時間が6時間未満と短かったグループ(368人)には、脳卒中リスクの上昇は見られませんでした。

昼寝の時間が1~30分だった人(5167人)と比べると、90分超だった人(2415人)でのみ、あらゆる脳卒中のリスクが25%上昇していました。それ以外の人々(昼寝を全くしない人も含む)には、脳卒中リスクの上昇、低下のいずれも、見られませんでした。

脳卒中のうち、虚血性脳卒中(脳梗塞)について分析しても結果は同様でしたが、出血性脳卒中(脳出血など)には睡眠時間の長短の影響は見られませんでした。

睡眠の質が高い人に比べ低い人では、あらゆる脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中のリスクが有意に高くなっていました。

表1 睡眠の時間や質と脳卒中リスク(抜粋)

(データ出典:Neurology. 2020;94:e345-e356.)

「夜の睡眠9時間以上+睡眠の質が低い」で82%上昇

次に、夜間の睡眠時間、昼寝の時間、睡眠の質の3つを組み合わせて、脳卒中リスクとの関係を調べました。「夜間の睡眠が7時間以上8時間未満で昼寝の時間は1~30分の人」を参照群にすると、「夜間の睡眠が9時間以上で昼寝が90分超の人」ではあらゆる脳卒中のリスクが85%も上昇し、「夜間の睡眠が9時間以上で睡眠の質が低い人」でも82%上昇していました。

さらに、2008~2010年から2013年にかけて、睡眠時間が変化した人の脳卒中リスクを、睡眠時間が7時間超9時間未満から変化しなかった人と比較しました。すると、夜間の睡眠時間が7~9時間の睡眠から9時間以上に延びた人(44%上昇)と、一貫して9時間以上眠っていた人(35%上昇)のあらゆる脳卒中のリスクは高いことが示されました。

今回の研究では、睡眠時間と脳卒中発症の間に因果関係があるかどうかは明らかになっていませんが、中高年者からなる大規模な集団において、夜間の睡眠時間を適切に維持すること、昼寝を長くしすぎないこと、睡眠の質を高めることが、脳卒中予防において重要であることが示唆されました。

論文は、Neurology誌2020年1月28日号に掲載されています[注1]

[注1]Zhou L, et al. Neurology. 2020; 94:e345-e356.

[日経Gooday2020年5月18日付記事を再構成]
大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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