同性の事実婚、社会通念ない? 地裁判決が議論呼ぶ

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コラム(社会・くらし)
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愛知
2020/6/28 2:00 (2020/6/28 15:37更新)
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同性パートナーの同居生活をめぐって名古屋地裁が示した判断が議論を呼んでいる。パートナーを殺害された男性が被害者遺族として公的給付を求めた訴訟の判決で、同地裁は同性の事実婚=内縁関係は「社会通念上」、認められないとして原告の請求を退けた。

名古屋地裁は同性同士の同居生活を事実婚と認めなかった。

名古屋地裁は同性同士の同居生活を事実婚と認めなかった。

訴訟は2014年に同性パートナー(当時52)を殺害された内山靖英さん(45)が起こした。犯罪被害者遺族への給付金支給を認めなかった愛知県公安委員会の処分取り消しを求めた。

国の給付制度は配偶者だけでなく、事実婚も救済対象に含む。名古屋地裁は6月4日、「同性間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るとの社会通念が形成されていない」として、内山さんとパートナーの内縁関係を認めず、原告敗訴の判決を言い渡した。

性的少数者の法的保護に詳しい早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「当事者の事実婚の意思や実態を踏まえていない。同性というだけで認めないのは、これまでの司法判断の流れから大きく後退している」と話す。

訴状によると、内山さんとパートナーは1994年に交際を始め、20年以上にわたり家計を共にする同居生活を送ってきた。介護のために内山さんの母親と3人で暮らしたこともあった。また、パートナーの殺害を巡る刑事事件の判決は「夫婦同然の関係」と認定している。こうした経緯から原告側はパートナーとの生活を事実婚として認めるよう主張した。

同性のカップルの権利を広く認める流れはこの数年間で強まった。自治体の間では同性パートナーシップの認証制度を設ける動きが広がり、保険や通信の分野では同性のパートナーを配偶者と同じように位置づけるサービスも増えている。

司法判断でも19年9月、宇都宮地裁真岡支部が不貞行為で破局した同性カップルの民事訴訟で「事実婚に準じる関係」と認めた。法務省は同年3月、不法滞在状態だった台湾人男性の国外退去処分を、日本人男性と約25年間同居していることを理由に撤回、在留特別許可を出している。

名古屋地裁判決は「差別や偏見の解消に向けた動きが進んでいるものの、いまだ社会的な議論の途上にあり、(同性の事実婚が)社会通念とは言いがたい」とした。

判決後に記者会見する原告の内山靖英さん(右)と代理人弁護士(6月4日、名古屋市中区)

判決後に記者会見する原告の内山靖英さん(右)と代理人弁護士(6月4日、名古屋市中区)

一方で判決は性的少数者に関する最近の動きや各種世論調査で同性婚への賛成が反対を上回っていることにも言及している。あるベテラン民事裁判官は「公的給付の是非を争う行政訴訟で同性カップルを内縁関係と認めるハードルは高い。今回の判決は将来的に救済される余地を残そうとの狙いもみえる」と話す。

遺族給付金など公的給付の対象は法律上の婚姻関係から事実婚へ適用が拡大してきた経緯がある。元東京高裁判事の升田純・中央大法科大学院教授は「『まだ社会の意見がまとまっていない』と言いたかったのではないか。今は過渡期。今後同性カップルへの理解が広がれば司法判断が変わる可能性はある」という。

「僕たちは男女のパートナーと同じように暮らしてきました。支給が認められないのは非常に残念です」。原告の内山さんは判決を不服として控訴した。弁護団代表の堀江哲史弁護士は「地裁の判決は結論ありき。控訴審では制度趣旨や内縁法理を丁寧に説明し、憲法論も主張していきたい」と話している。

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