購入か賃貸か 住まいの選択はどちらに軍配?
20代からのマイホーム考(3)

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2020/6/29 2:00
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写真はイメージ=PIXTA

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「家賃を払うくらいなら、住宅ローンを借りて買ったほうが得だ」。こうしたフレーズは今も昔も変わらず聞かれます。しかし、このフレーズ、必ずしもそうとは限らないということをご存じでしょうか。

■「買ったほうが得」といわれる理由

家賃は払ってしまえば、自分に戻ってくることはありません。住宅ローンは元本と利息を返済しますが、元本部分は借りたお金を返しているだけで、ある意味、返済相当分ずつ、住まいが徐々に自分のものになっていくと考えることができます。結果として購入の場合は、ローンの返済が終われば、住まいはすべて自分のものになりますが、賃貸は手元に財産は残りませんし、家賃の支払いは続きます。

そう考えると、家賃と住宅ローンの返済額が同じならば、確かに、買ったほうがよいと考えるのは無理もない話です。

■本当にそうなのか? 試算してみると

「家賃と返済額が同じ」というと、購入も賃貸も住宅にかかる支払額はともに同じだと考えがちです。しかし、実際は違います。住まいを持つと、固定資産税や修繕費用、マンションなら管理費などの保有コストがかかります。ですから、購入と賃貸を比較する場合、仮に家賃が月額10万円なら、住宅ローン返済額とこれら保有コストの合計が月額10万円として考える必要があります。

さてここで、向こう30年間、家賃10万円を払い続けるか、あるいは、住宅ローン返済額と保有コストをあわせた合計10万円を毎月払う前提で、自己資金600万円を頭金にして、3000万円の新築住宅を買うかで悩んでいるとしましょう。

購入する場合は、金融機関から2400万円を30年返済で借り入れるものとし、元本と利息、保有コストを払っていきます。30年後の住まいの価格は1500万円と想定します(土地価格と建物価格の割合が1対1とすると、一般に国内不動産市場において建物価値は20年程度でゼロになりますので、土地価格が不変であった場合でも、返済が終わるまでに住まいの価格は1500万円まで値下がりすると想定しています)。

この場合、返済までに払った額は家賃と同額でありながら、手元に残った資産は1500万円となります。

一方、賃貸の場合は、同じ期間で家賃を払いつつ、自己資金600万円を運用することが可能です。もし600万円を30年間、3%で運用できたとすれば、30年後は約1500万円になりますから、購入も賃貸もどちらもあまり変わらないということになります。

■どちらが得か誰も答えを持っていない

上記の例え話は、投資理論的には必ずしも正確なものではありませんが、どちらが得かは条件によるということがイメージできるのではないでしょうか。

例えば、30年後に人口の動向や立地の問題などで、住まいの価格が半値以下になってしまうことはないとは言い切れません。一方、他の金融資産で地道に運用できれば、結果的に手元に残る富は賃貸で過ごしたほうが多かったということもあり得るわけです。変動金利で借りていれば、金利が上がれば富は減ります。賃貸を選んで頭金を運用した場合は、運用益がアップするかもしれません。

もちろん、住宅ローンを返済した後は、支出が少なくなるので賃貸より安心という考え方もあります。しかし、将来は空き家が大幅に増える可能性が高く、リーズナブルな家賃で借りられる家が増えるという見方もあります。

このように、購入も賃貸も、どのような前提を置くかによって結果が異なるということがわかっていただけるのではないかと思います。

■結局は「欲しい暮らし」が実現できるかどうかが大事

平成バブル期ごろまでは毎年のように不動産価格が上昇していましたので、住まいを買っても損することはないと信じられていました。ですから「借りるより、買ったほうが得」という考え方が浸透し、今もそうした考え方が根強く残っているのかもしれません。しかし、現在は必ずしもそうではないのです。

そう考えると、購入と賃貸のどちらが得かで頭を悩ませるより、「欲しい暮らし」が何かを明らかにして、それに見合った場所や空間を手に入れるためには、どちらの方法がよいのかを考えることが大事なのではないでしょうか。住まいを買うか、借りるかという話は手段であって、本来の目的ではないのですから。

田中歩(たなか・あゆみ)

1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。
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