5月の国内粗鋼生産32%減、09年6月以来の減少率
日本鉄鋼連盟(鉄連)は22日、5月の国内粗鋼生産量が前年同月比31.8%減の591万6千トンだったと発表した。新型コロナウイルスの影響で鋼材需要が冷え込んだ。前年同月比で30%以上減るのは、リーマン・ショック後の09年6月(33.6%減)以来となる。鉄鋼業界の苦境は一段と鮮明になっている。

前年割れは3カ月連続。自動車メーカーを中心に製造業の鋼材需要が急減し、各社が減産対応に踏み切っていることが背景にある。
4月までに日本製鉄は関西製鉄所和歌山地区(和歌山市)などで計2基、JFEスチールも1基の高炉を一時休止した。さらに5月は日鉄の東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)の高炉も新たに1基加わった。一時休止が粗鋼生産へ与える影響も本格的に大きくなってきた。
鋼種別では、製造業や建設業など用途が広い普通鋼は前年同月比27.6%減の478万3千トンだった。一方で、自動車部品など製造業向けが大半の特殊鋼は工場の稼働停止などが響き、45.2%減の113万3千トンと減少幅がより大きい結果となった。
徐々に自動車や電機など幅広い産業で生産活動は回復しつつあるが、「消費面の回復が不透明で予断を許さない状況」(鉄鋼大手幹部)とする声は多い。中国の鉄鋼大手の増産も続き、鉄鉱石など原料高も続く。厳しい事業環境の中で、粗鋼生産の低空飛行はしばらく続きそうだ。
(湯前宗太郎)