福井企業の繊維技術、JAXAの衛星に搭載へ

2020/6/22 18:00
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特殊繊維加工のサカセ・アドテック(福井県坂井市)の技術が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の技術実証衛星に搭載される。JAXAは2022年度の打ち上げを予定しており、同社が開発した太陽電池のパネル展開部材などの採用を決めた。同社は研究開発をさらに進め、宇宙ビジネスの拡大を目指す。

動力を使わずに開くシート状の部材(サカセ・アドテック提供)

動力を使わずに開くシート状の部材(サカセ・アドテック提供)

JAXAは技術実証衛星「革新的衛星技術実証3号機」に搭載する部材や技術を募集した。NTT三菱電機、東京工業大学などの15件の提案を選定し、サカセ・アドテックも入った。JAXAは1号機から公募しており、福井県で採択された企業は初めて。同社は2件の提案にかかわる。

動力を使わずに太陽電池のパネルを開く部材が選ばれた。支柱や織物が元の形状に戻ろうとする復元力を利用し、自動でパネルを広げる。太陽光を受ける面積を増やすことで、発電能力を10倍にできるという。軽くて耐久性に優れるため、地上でもドーム施設の天幕などへの応用を目指す。

もうひとつは小型衛星開発のアクセルスペース(東京・中央)と共同開発した衛星の軌道を変える装置。運用を終えた衛星を大気圏に突入させて燃やす。宇宙ごみの削減に役立つ。同装置も復元力を利用し、小型衛星に搭載しにくい燃料を使わない。サカセ・アドテックはこれから打ち上げられる衛星に搭載し、宇宙空間で正常に作動するか確認する。

同社は繊維を3方向に織り、編み目を竹籠のような六角形にする「三軸織物」の技術を持つ。明治時代に創業し、祖業は衣料品向けの織物生産だった。80年代後半に米国から三軸織りの技術を導入し、現在のサカセ・アドテックを立ちあげた。三軸織物は折り畳んでも、開いたときに折り目が残らず元の形状に戻りやすい。

三軸織物の特長を生かした同社の繊維素材は、スパイクなどのスポーツ用品や建物の内装材、文化財の補修材に使われている。三軸織りは世界でも同社だけの技術という。20年3月期の売上高は約3億円だった。

炭素繊維を三軸に織って樹脂をコーティングした衛星アンテナ用の複合材料も生産している。商用衛星向けでは5~6割の世界シェアを持つ。03年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」、14年の後継機「はやぶさ2」のアンテナにも採用された。

生産・販売と並行して研究開発を進め、JAXAに選ばれた動力なしで部品を動かせるシステムも独自開発した。宇宙関連事業を担当する酒井良次専務は「世界的な通信量の増加に伴い、データをやりとりする小型商業衛星のニーズは高まるはず。高性能化に役立ちたい」と話す。

福井県は宇宙産業の振興に力を入れており、20年度に県民衛星「すいせん」の打ち上げを予定している。サカセ・アドテックは同県の宇宙関連企業の老舗とされる。地道な活動が成果を上げたことで、産業育成への機運がさらに高まりそうだ。(鈴木卓郎)

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