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Bリーグ躍進の立役者・大河氏 次の使命は人材育成

2020/6/23 3:00
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7月に就任する島田新チェアマン(左)と並んで笑顔を見せる大河氏(10日)=共同

7月に就任する島田新チェアマン(左)と並んで笑顔を見せる大河氏(10日)=共同

バスケットボール男子Bリーグの成長を主導してきた大河正明チェアマン(62)が6月末で退任する。常務理事などを務めたJリーグと合わせ、プロリーグの運営を10年以上経験。心震わせるスポーツの素晴らしさや興行としての可能性に加え、ガバナンス(統治)の重要性も実感してきたという。7月からはびわこ成蹊スポーツ大副学長と大阪成蹊大スポーツイノベーション研究所所長に就任。「これまでの知見を生かし、還元したい」と人材育成などに力を発揮するつもりだ。

京都市出身の大河氏は三菱銀行(現三菱UFJ銀行)在職中にJリーグに出向経験があり、2010年に退行してJリーグ入り。バスケット界の改革に携わっていた川淵三郎氏に請われて16年秋のBリーグ開幕に向けた実務を担い、そのままトップに就いた。

成果の一つがJリーグ時代の13年に始まったクラブライセンス制度だ。リーグが財務や施設の基準を毎年審査し、条件を満たせなければ降格の可能性もある仕組み。「クラブの健全経営のためであり、条件を満たすクラブをつくれば、リーグの質も上がる」。そんな理念のもと、同制度をBリーグでも採用したことが、結果的に新型コロナウイルスの直撃からクラブを救うことになる。

Bリーグには大企業の後ろ盾がないクラブも多く、約3分の1の試合を行えなかった19~20年シーズンは柱である入場料収入が激減。「制度で財務が安定していなければ(1部と2部の計36クラブのうち)2、3割は行き詰まっていたかも」。まだ油断はできないが、秋の来季開幕を前にクラブが消滅する最悪の事態は回避した。

スポーツビジネスの可能性広げる

5月下旬の退任会見ではチェアマンの仕事について「クラブから付託を受けてリーグの仕組みをつくり、リーグの発展に貢献すること。サラリーマン会社の社長という意味合いが強かった」と総括。銀行出身らしく堅実な経営を進めた一方、エンターテインメント性の追求やデジタル化で新たなスポーツビジネスの可能性を大きく広げた功績も大きい。

若者や女性がアリーナを埋め、開幕初年度から昨季(18~19年シーズン)まで各クラブの入場者数やスポンサー収入は右肩上がりに増加。日本協会などと合わせたバスケット界全体の事業規模を300億円にする目標を2年前倒しで達成した。Bリーグは国内の他の競技団体のみならず、アジア諸国や国際連盟も注目する存在だ。

大河氏はオフィスに理想のアリーナと語るニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンの写真を掲示していた。Bリーグの複数クラブで新アリーナの建設計画が進んでいる(19年11月)

大河氏はオフィスに理想のアリーナと語るニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンの写真を掲示していた。Bリーグの複数クラブで新アリーナの建設計画が進んでいる(19年11月)

さらなる成長を見込み、昨夏には26年に向けた中期計画を発表。メインスポンサーのソフトバンクとの契約更新にもメドがたち、「スムーズにトップの交代をはかることが大事な局面と判断した。『フェーズ2』は新しい人、若い人に引き継いでもらいたいと考えた」と退任を決めた理由を語る。後任はB1(1部)千葉をリーグ随一の人気クラブへと引き上げた島田慎二氏(49)。「強い信念とリーダーシップがある」と期待を寄せる。

事業を成長軌道に乗せられたとの自己評価がある一方、手がつけられなかったのが人材育成だという。新天地となるびわこ成蹊スポーツ大は03年開学。Jリーガーを輩出するサッカーの強豪校であり、体育教員を志望する学生も多い。プロクラブと連携して大学生や社会人への実践的な教育を取り入れるなどし、幅広くスポーツ界に貢献していく青写真を描く。

「スポーツ界に色々言っていきたい」

経済同友会にも席があり、「企業の視線が企業の社会的責任(CSR)からSDGs(国連が15年に採択した持続可能な開発目標)へと移る中、それをどうスポーツと掛け合わせるかが課題になっている」と指摘。新設される大阪成蹊大スポーツイノベーション研究所では、社会とスポーツの新たな関係も模索していきたいという。

「長期政権は権力が集中したり、忖度(そんたく)が働いたりすると感じていた。ガバナンスの欠如はあってはならない。スポーツ界の未成熟さを頭に置いて常に全力疾走してきた」。退任会見ではビジネス界の常識からかけ離れた慣行や組織運営に対する厳しい言葉も出た。

19年6月からバスケットボール界初の日本オリンピック委員会(JOC)理事も務め、他団体の現状を目の当たりにして感じることも多かったようだ。もともとBリーグは2リーグ分裂状態だった日本に業を煮やした国際連盟が制裁を科すという荒療治の末の産物でもある。「全くしがらみなくやれたことが大きい。品格と公平性と透明感を重視してきた」という言葉に特に力を込める。

大河氏のように、複数のプロリーグの幹部を常勤で務めた事例はほとんどない。他団体から要請があれば、組織運営などにも協力していくつもりで、「今後は(外部から)スポーツ界について色々と言っていきたい」とも話す。豊富な経験と実行力を求められ、活躍する場はまだまだありそうだ。

(鱸正人)

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