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画像認識で商品棚を見える化、在庫管理は数分で完了

(更新)

2020年に突如発生した新型コロナウイルス感染症は多くの産業に過大なストレスをかけ、デジタル化加速の触媒となった。ネット通販やソーシャルECチャネルの台頭でシェアを削られている小売店舗もその一つだ。

AI画像認識テクノロジーで小売業向けサービスを展開するシンガポールのユニコーン企業「Trax Technology Solutions」はリテールテックで世界のトップを走る。同社はコンピュータビジョン、機械学習、IoTプラットフォーム、ビッグデータ技術などを通して、メーカーと小売業者にリアルタイムで正確なデータサービスと分析のソリューションを提供する。Traxは2010年に設立され、R&Dセンターはイスラエルと中国にあり、2018年初めに中国市場への参入を正式に発表した。現在中国には50~60社の顧客がおり、グローバルデータベースに蓄積した商品は120億を超えている。

AIを活用した画像認識技術で店舗の在庫管理などを行う(Trax提供)

Trax大中華圏部門の湯勁武総裁は、リテールテックの実装可能性と未来の成長空間について、市場のニーズのほかにポイントが二つあると言う。一つ目は、実店舗で現在使用されているコンピュータビジョンのアルゴリズムは、商品を迅速かつ正確に特定し、データを収集する点で、すでに人間と同レベルになっているということ。二つ目は、産業発展の実現可能性とAIシステムの生産効率の関連だ。AIは小売製品データを収集し、ディープラーニングにより再利用可能なユニバーサルモデルをトレーニングする必要がある。これらはどれも一定のコストが発生する。アルゴリズムの適用により効率が向上し、十分な利益を生み出せるかどうかは、業界の持続可能な開発に影響を与える要因となる。

Trax側の資料によると、飲料、食品、牛乳など商品回転率が高い日用消費財の80%は、地元の小さなスーパーマーケットや従来型小売店で購入されており、店の売上高の半分は陳列棚の商品によるもので、残りはエンド陳列や平台陳列、カットケース陳列などの二次陳列からなる。これらを早急にデジタル化する必要があると指摘する。

リテールテック企業がすべての陳列方式をカバーする場合、特に複雑で小さな店舗シーンにソリューションを提案する場合、二つの問題を解決しなければならない。まず、小さな店舗は狭くて、一見、何の規則性もなく陳列されており、陳列棚にカットケースが併用されるなど、陳列方式も定まっていない。次に、写真の重複排除も必要だ。店舗のレイアウトは狭くて不規則なので、撮影した写真はそのまま使えず、自動認識とセグメンテーション技術によって重複箇所を見つけ排除する必要がある。

スマホのアプリや監視カメラなどを使用して商品のデータを分析する(Trax提供)

Traxには自社開発した小売商品画像認識・検索エンジンがある。そのArgus認識プラットフォームは、画像インテリジェント取得、画像認識、検出、セグメンテーションテクノロジー、データ注釈プラットフォーム、GPUコンピューティングリソースという六つのAI自動化を実装している。Argus認識プラットフォームを使用して、機械が人間の目視によるカウントを代替する。以前は人間が数十分から数時間をかけていた情報収集(在庫管理)作業を、わずか1~2分で完了できる上、精度も高い。Traxによれば、このソリューションを使えば営業効率を3~5倍向上できるという。さらに、Traxはクラウドソーシングサービスも併用しており、三級や四級の地方都市や農村の小さな店舗でも同システムを使った在庫管理サービスを受けられる。

現段階で、TraxはSaaS形式でサービスを提供しており、使用量に応じての課金が主な収入源である。さらに、顧客の個々のニーズに基づいてカスタマイズサービスの開発も行う。この課金モデルの利点は、顧客が一度に多くの資金を投入する必要がないため、顧客の投資リスクを軽減できることだ。

小売AI業界での競争が徐々に白熱化してきた2020年、Traxは自社の方向性を三点定めた。これは今後、業界が発展していく方向性でもあると考えられる。

第一に、全カテゴリー戦略、すなわち全商品のカテゴリー化である。現段階で、Traxは家庭用化学製品、ビール類、飲料、食品、キッズ・ベビー・マタニティ、一般用医薬品および洋酒類を基本全品カバーできている。

第二に、全陳列方式のカバー。前述のとおり、陳列棚の商品が店の売上高の50%を占めるものの、その他の陳列についてもデジタル化する必要がある。Traxには現在、二つのソリューションがある。一つは対面する陳列棚に専用小型カメラを取り付け、店舗が陳列棚を監視および分析できるようにする。取得したデータをメーカーに参照用としてフィードバックすることもできる。陳列棚の商品情報デジタル化のため一部でロボットによる巡回検査も行っているが、ロボット導入のROI(投資利益率)や広範囲の普及が難しいため、Traxは陳列棚のデジタル化では、固定カメラのほうが有望だと見ている。

第三に、使い方や収益の検証方法など、完全で明瞭なAI実装プロセスとメカニズムを顧客に提供する。

湯総裁は、新型コロナウイルス感染症発生後の業界の全体的な傾向について「資本市場はより慎重になる。これは、顧客がサービス事業者を選択する際、サービスの安定性と安全性を偏重し、投資収益率に対しより多くの注意を払うことを意味する」と語った。

「36Kr ジャパン」のサイトはこちら(https://36kr.jp/)

中国語原文はこちら(https://36kr.com/p/715890062833153)

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