会計が分かるクイズ 「ニッチ製造業」対決
クイズで学ぶ会計知識(4)

日経マネー連載
日経マネー
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2020/6/25 2:00
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写真はイメージ=PIXTA

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ハードルが高い、難しいというイメージがある会計。しかし、実際のビジネスを念頭に入れて財務諸表を読むと、驚くほど企業の特徴が会計に反映されているのが分かる。SNS(交流サイト)で話題の「大手町のランダムウォーカー」こと福代和也さんが出題する会計クイズを解いて、ビジネスや投資に役立つ企業への理解を深めていこう。

今回のテーマは、

【稼ぎ方は損益計算書に出る(製造業編)】

日本にはニッチだが高いシェアを誇る製造業が少なくない。ただ、単に高シェアだから収益力があるというわけではない。ニッチ製造業の稼ぎ方のポイントを、損益計算書から読み取ろう。

YKKとフジシールインターナショナルは共にニッチ製品大手。営業利益率も製造業としては高いが、稼ぎ方には違いがある。損益計算書にそれが表れているが、AとBはそれぞれどちらか?


YKKとフジシールインターナショナルは高シェア・低単価のニッチ製品を扱うという共通点がある。どちらも営業利益率は同じ8%と製造業としては高めだ。ただ損益計算書を見ると、(1)と(2)で売上原価と販管費の比率が異なるのが分かる。実は、この違いは主力製品以外の「その他」事業に属する「機械部門」の位置付けから来ている。共にその比率は小さいが、両者の稼ぐ力を支える存在だ。その役割はどういうものか。

■Point1 YKKのビジネスモデル

YKKの主力製品はファスナーだ。低単価にもかかわらず利益率が高い理由は、その製造コストの低さにある。YKKの機械事業の大半は自社向けで、生産設備を内製化している。これにより生産設備の仕入れ分だけ原価を抑えている。さらに、製造技術をブラックボックス化できるため、競合企業に対する技術漏洩を防ぐこともできる。

■Point2 フジシールインターナショナルのビジネスモデル

フジシールインターナショナルは、取引先に対しペットボトルのラベルだけでなくそれを巻き付ける包装機械も販売している。こうすることで取引先の利便性は高まり、製品シェアの維持にもつながる。半面、機械自体を低価格で販売するため原価率も膨らみやすい。顧客の確保を重視したビジネスモデルと言えるだろう。

(1)がYKK、(2)がフジシールインターナショナル
YKKもフジシールインターナショナルも、機械という「脇役」が高収益のビジネスモデルを支えている。興味深いのはYKKの販管費比率の高さだ。同社は安価で良質な製品を多く販売することによって得た利益を、取引先と原料の取引先、自社で3等分するという「善の巡環」を社是としている。この際、手厚い給与で社員に報いているため、人件費が多くなっているというわけだ。

●YKKは製造設備を自社で生産。設備の分だけ原価率を抑えられるメリットがある

●製造設備の内製化するYKKのビジネスモデルには、競合への技術流出を防げるというメリットもある

●フジシールインターナショナルはラベルと包装機械を取引先にセット販売。利便性の向上で高シェアの維持を狙う

●本来高単価であるはずの包装機械を安価で販売しているため、フジシールの原価率は高くなる傾向がある

出題者はこの人
福代和也さん


Funda 代表取締役。中央大学専門職大学院修了、PwCあらた有限責任監査法人を経て2018年から現職。会計およびマーケティングに関するコンサル業務をメインに行う。「大手町のランダムウォーカー」としてSNS上で会計クイズを出題中。

共同作成者:久本拓馬

[日経マネー2020年8月号の記事を再構成]

日経マネー 2020年8月号 勝ち組投資家に学ぶ ここからの稼ぎ方&勝負株

著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2020/6/19)
価格 : 780円(税込み)

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