米最高裁、リベラル寄り判決相次ぐ トランプ氏に痛手

2020/6/19 9:19 (2020/6/19 13:07更新)
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ロバーツ米最高裁長官は判事を痛烈に批判するトランプ大統領に反論する異例の声明を出したことがある=ロイター

ロバーツ米最高裁長官は判事を痛烈に批判するトランプ大統領に反論する異例の声明を出したことがある=ロイター

【ワシントン=中村亮】米連邦最高裁判所でリベラル派の主張を認める判決が相次いでいる。最高裁は政策全般の是非を判断し、判決内容には国民の関心も高い。トランプ大統領は最高裁で支持基盤である保守派の影響力を高めたと成果を訴えてきただけに、痛手となりそうだ。

最高裁は18日、幼少期に親と米国に不法入国した若者の強制送還を猶予する制度「DACA」に関し、撤廃を当面認めない判決を下した。不法移民の保護を訴えるリベラル派の主張に沿ったものだ。オバマ前政権が導入し、これまでに約80万人が保護を受けたとされる。トランプ氏はDACAの対象に犯罪者が紛れているなどと主張し、撤廃を求めていた。

11月の大統領選で民主党の候補指名を固めたバイデン前副大統領は18日、判決を歓迎したうえで大統領就任初日に1100万人の不法移民に市民権を付与する工程表をつくるよう議会に求めるとツイッターで約束した。リベラル派の代表格であるバーニー・サンダース上院議員も「トランプ氏が移民を傷つけるために講じた全てのひどい措置を覆そう」と支持者に訴えた。

他にも最高裁ではリベラル派の主張を認める判決が目立つ。15日には職場でのLGBT(性的少数者)差別は、性別に基づく差別を禁じた連邦法に違反するとの判断を示した。LGBTの権利向上につながる判決だ。5月末には新型コロナウイルスの感染防止を理由に教会での礼拝者の人数を制限することは認められないとする西部カリフォルニア州の教会の訴えを退けた。

いずれの判決でもカギを握ったのはジョン・ロバーツ長官だ。2005年に共和党のブッシュ(子)元大統領に任命されて保守派判事とみられたが、3つの判決ではリベラル派を支持する立場に回った。最高裁判事9人のうち保守派とリベラル派は4人ずつに分かれており、ロバーツ氏の一票が判決の行方を決めるケースが増えてきた。

ロバーツ氏の行動はトランプ氏にとって誤算だ。トランプ氏は18年10月、中道派のアンソニー・ケネディ判事の後任に保守派のブレット・カバノー氏を任命。ロバーツ氏を含む保守派の判事を5人そろえて、最高裁の保守化を進めたと成果を強調してきた。最高裁は個人の銃保有や人工妊娠中絶の是非など日常生活に深く関わるテーマに判断を下し、その動向には国民の関心が極めて高い。

トランプ氏は18日、ツイッターで「最高裁は私のことを嫌いになったように見えないか?」と書きこんで、ロバーツ氏を念頭に不満を漏らした。三権分立が確立した米国で最高裁は政権から独立した立場で判決を下すが、トランプ氏は16年の大統領選の際にも「ロバーツ氏は保守派にとって悪夢だ」と批判したことがある。

トランプ氏の公約実現が滞るリスクも高まる。トランプ氏は保守派に肩入れした政策を打ち出して提訴されても最高裁で勝利して政策を実現してきた。「イスラム圏への偏見だ」と激しい批判を浴びたイスラム諸国などからの入国制限措置は最高裁が支持する判決を下した。トランプ氏が不法移民対策として推進するメキシコとの国境沿いの壁建設の財源に国防費を充てることも最高裁が認めた。

トランプ氏は18日、大統領2期目に向けて最高裁判事候補のリストを9月1日までに公表するとした。最高裁では高齢のクラレンス・トーマスやルース・ギンズバーグ両判事の去就に注目が集まる。判事は終身制だが、退任を決意すれば即座に保守派を起用する構えを見せて支持基盤をつなぎとめる思惑がある。

今後も最高裁では大きな懸案をめぐる判決が相次ぐ見通しだ。トランプ氏の財務や納税記録の開示をめぐる判決が6月中にも下される。民主党はトランプ氏に不正な資金取引などがないか追及している。人工妊娠中絶を困難にする目的だとの批判がある南部ルイジアナ州の制度への判決にも関心が高まっている。

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