マスク姿でも顔認証 タブレット型端末で入館スムーズ

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2020/6/19 9:39
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非接触の顔認証・体温測定装置。中国・京東方科技集団(BOE)の日本法人BOEジャパンが5月に発売した(撮影:日経クロステック)

非接触の顔認証・体温測定装置。中国・京東方科技集団(BOE)の日本法人BOEジャパンが5月に発売した(撮影:日経クロステック)

日経クロステック

「ピロン」――。ある平日の朝、スマートフォンに1件のメッセージが届いた。画面には「7時55分登校。体温36.5度。マスク着用」とある。春から小学校に上がった娘の登校通知だ。どうやら、今日も何事もなく学校に着いたらしい。「これで安心して仕事に行けるな」。父親はこうつぶやいて会社に向かった。

娘が通う小学校の出入り口には、タブレット端末のような装置が2台据え付けられている。登校した生徒は順番で端末に顔を向け、カメラ撮影による顔認証で到着を確認する仕組みだ。マスク着用でも顔を認証でき、同時に体温も測定できる。これら一連の機能は全て非接触で完結する──。

非接触の顔認証・体温測定装置を使って実現できる新型コロナウイルスの感染防止策のひとこまだ。

手掛けるのは、液晶パネル世界首位である中国・京東方科技集団(BOE)の日本法人BOEジャパン(東京・港)。既にグローバルで展開中の同装置を日本市場向けに調整し、5月から販売を始めた。学校のほか、公共施設や病院、飲食店から数百台単位の引き合いがあるという。

装置はタブレット端末の上部にカメラを、下部に台座を取り付けた形状をしている。特徴は、99%以上の精度で瞬時に本人かどうかを判別できること。

カメラで顔を撮影し、250カ所ほどの特徴点と最大3万人分の登録データを照合する。顔の下半分をマスクで覆った場合でも、輪郭や顔上部の特徴から登録済みの本人か否かを見分ける。認識アルゴリズムの改良で実現した。

液晶ディスプレーやカメラは一般的な性能のものを採用した。液晶ディスプレーは「IPS」方式で、解像度は800×1280画素、画面サイズは8インチである。上下・左右の視野角がそれぞれ178度と広いのが特徴だ。横から見ても表示画面が認識しやすい。

■パネルやカメラは他社から

BOEは世界首位の液晶パネルメーカーであるが、今回は自社の量産品を使っていない。液晶ディスプレーやカメラなどは、全て中国に拠点を置く協力メーカーから調達する。完成品への組み立てまでを協力メーカーが担う。日本に輸出し、BOEジャパンが日本市場向けのシステムに更新して販売する体制だ。

協力メーカーの比較的安価な量産品を活用することでコストを抑え、開発期間も数割短縮した。価格は10万~15万円で競合他社の半額ほど。その他、専用クラウドの使用料として月額300~500円が必要になるが、合計金額も他社より安価に設定。個人商店や美容院など、導入コストを理由に二の足を踏んでいた顧客層を開拓する。

BOEジャパンの久保島力社長は「データをリアルタイムで収集できる点も強みだ」と話す。例えば、同装置を使用した人物が新型コロナに感染していたとする。顔認証を利用した日時や場所のデータを分析すれば、濃厚接触者の特定に役立てられる。

東京では新たな感染者が連日確認されていることから、「第2次、第3次の感染拡大も考えられ、対応は長期戦になるだろう。同装置の需要はさらに拡大するはず」(久保島氏)と予測する。

BOEジャパンの久保島力社長(撮影:日経クロステック)

BOEジャパンの久保島力社長(撮影:日経クロステック)

今後は、電子決済を手掛ける企業との連携を視野に入れる。コンビニやスーパー、ドラッグストアのレジ端末の横に同装置を設置し、顔認証で料金を支払う。クレジットカードやスマホのアプリとの連携で可能にする。これにより「取得できるデータは膨大なものになる」(久保島社長)。ただ、個人情報やプライバシーに対する課題は残るため、セキュリティー対策を万全にし、消費者に安全性を訴える活動は欠かせない。

■イノベーション事業を拡大

BOEは、製品を売り切る従来のビジネスモデルから、サービスと組み合わせて長期的に稼ぐモデルへの転換を急いでいる。主力のディスプレー事業以外に、スマートシティーや病院運営などにも手を広げ、これら領域の技術や知見を生かして製品やサービスをつくり込む。

「特に注力するのがイノベーション(技術革新)の創出だ」(久保島社長)。クラウドや人工知能(AI)などの技術を組み込み、顧客の課題を解決するサービスを提供していく。BOEジャパンが日本向けに販売を始めた非接触の顔認証・体温計測装置も、グローバルで取り組むイノベーション創出事業の一環である。

(日経クロステック 窪野薫)

[日経クロステック 2020年6月17日掲載]

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