5月の新築マンション発売、82%減 首都圏

2020/6/18 19:11
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首都圏の新築マンション市場が新型コロナウイルスで転換期を迎えている。不動産経済研究所(東京・新宿)が18日に発表した5月の首都圏(1都3県)新築マンション発売戸数は前年同月比82.2%減の393戸と、4月実績をさらに下回った。単月の発売戸数では1973年の調査開始以来で最少の結果だ。

選手村を活用する「HARUMI FLAG」は東京五輪の延期で販売を中止している

選手村を活用する「HARUMI FLAG」は東京五輪の延期で販売を中止している

緊急事態宣言でモデルルームの休止が相次いだことが響いた。2020年全体の発売戸数もバブル崩壊後の1992年以来、28年ぶりの3万戸割れとなりそうだ。

地域別の発売戸数は東京都区部が前年同月比69.9%減だった。このほか都下が89.8%減、神奈川県が83.4%減、埼玉県が91.3%減、千葉県が93.9%減。すべての地域が大幅なマイナスで、686戸だった4月を下回った。同研究所の松田忠司主任研究員は20年通年の発売戸数について「3万戸を下回る可能性が濃厚で、2万戸割れもあり得る」とみる。

1~5月の発売は前年同期比46.7%減の5954戸。6月も前年同月の半分未満の約1000戸とみられ、上半期(1~6月)は92年の実績(1万959戸)を下回り初の1万戸割れの可能性が高い。不動産各社の間では、夏の発売予定を秋にずらす動きもある。

三井不動産レジデンシャルなど10社が東京オリンピック・パラリンピックの選手村を改装して販売するマンション「HARUMI FLAG」(東京・中央)は分譲4145戸のうち940戸を売りに出したが、開催延期を受けて当面は販売活動を中止している。

不動産各社は市場環境や自社の業績、購入検討者の反応をみて発売価格や戸数を決める。5月の平均価格は東京都区部の物件の割合が高く、前年同月比6.4%上昇の6485万円だった。

近年はコロナの流行前から地価や建築コストの上昇で発売価格が高騰し、各社は立地の良い物件に発売を絞る傾向が出ていた。そこにコロナが「追い打ち」をかけ、発売が大きく落ち込んだ。緊急事態宣言が解除された後は営業を再開しているが、同時に案内できる顧客は限られる。各社は外出を控えたい人や遠方に住む人への新たな販売手法を模索している。

三菱地所レジデンスはすべての事業エリアで、対面せずに商談を進める「オンライン接客」を導入している。住友不動産は6月1日から全国すべての約70物件を対象にウェブ上で物件見学から重要事項説明、契約、引き渡しまで非対面で完結することを可能にした。

今後コロナで企業の業績が大幅に悪化すれば消費者のマンション購入意欲はさらに冷え込む。価格が高騰する新築マンション市場を支えてきた富裕層もコロナの「第2波」を懸念して買い控える傾向が続きそうだ。東京カンテイ(東京・品川)の井出武上席主任研究員は「発売戸数の回復はスローペースで長期戦になる」と予想している。

コロナ対応で急速に普及した在宅勤務を商機とする動きも出てきた。三菱地所レジデンスは6月上旬から新築分譲マンション向けに部屋の中に小部屋を設置するプランや、収納スペースをテレワークの空間に無償で変更できるプランの提案を始めた。東京都武蔵野市内やさいたま市、神奈川県鎌倉市、千葉県市川市の物件に導入する予定。

住友不動産も専有部の一部を1~3畳程度の書斎スペース(個室)に変更できる無償のオプションメニューを6月下旬から提示する予定。近郊のファミリー向け物件から始め、反応をみながら対応物件を拡大していく。東急不動産もワーキングスペース付き住戸の用意を検討している。

これまでは職場に近い「都内・都心・駅近立地」の需要が高かった。在宅勤務が定着すれば「テレワークに対応する広い住宅の需要が高まり、郊外立地が見直される可能性がある」(東急不動産)との指摘もある。

実際に三菱地所レジデンスが今冬に販売予定の「ザ・パークハウス新浦安マリンヴィラ」(千葉県浦安市、総戸数528戸)は海の近くに立地し、平均専有面積が96平方メートルと広い。4月にホームページを公開すると、計画を上回る約2000件の資料請求があった。

発売戸数が大きく減る一方で、価格は下がりにくいとの見方が強い。

リーマン・ショック後の09年には首都圏の新築マンション平均価格が前年より5%低下した。資金繰りの厳しい中小の不動産事業者が値引き販売に走り、大手も価格競争に巻き込まれたためだ。当時は首都圏の新築マンションの発売戸数に占める住友不動産や野村不動産などの大手7社の割合は3割程度だった。しかし現在は5割近くを占め、体力のある大手は購入の動きが鈍っても時間をかけて販売する戦略だ。当面は目立った値下げはしないとみられる。

それでも各社の収益を支えるオフィスで面積縮小や入居の様子見が相次げば、大手各社も戦略を見直す可能性がある。

リーマン・ショック時は09年に首都圏のマンション発売戸数や平均価格が下がったものの、翌年には08年の水準まで回復した。一方で今回のコロナ禍はいつごろ収束するのか見通しにくい。

大手各社は値引きを避け、時間をかけて売り切る戦略をどこまで維持できるか。他社の販売動向もにらみながら、難しい判断を迫られている。

(小田浩靖)

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