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関西小劇場、コロナ禍で新表現探る ネットで幅広げる

文化の風

エイチエムピー・シアターカンパニーがウイングフィールドと配信した「ブカブカジョーシブカジョーシ」の一場面

関西の小劇場がコロナ後の新たな公演のかたちを模索している。感染予防のための客席数制限などで従来通りの公演は採算的に難しい。ライブ配信を軸とした新たな演劇表現で劇団や演劇人たちを巻き込み、次代のステージを生み出そうとしている。

配信体制整備を

大阪・日本橋で2館の小劇場を展開するインディペンデントシアターは公演再開に向け、機材の調達やセッティングなどネット配信の準備を進める。プロデューサーの相内唯史は「とにかく(公演する意欲のある)劇団、演劇人の選択肢を広げたい」と話す。自治体などのガイドラインに従うと、通常75席のところ20~30席しか使えない。客席減による減収を有料配信で補えれば、劇団の「公演実施のハードルは下げられる」。

今や劇場にとってネット配信は必須。演劇の魅力や本質を損ねず、新たな魅力をどう付加するか。最適解への模索は始まったばかり。相内は「劇場はただの上演場所ではなく、人が集まって交流し新たな表現を生み出す場所、表現者のホームだ。上演がない今、劇場がやるべき仕事はむしろ増えている」と話す。7月中旬の劇場再開に向け、多くの劇団の相談にのるなど調整に奔走している。

外部人材と連携

ウイングフィールド(大阪市)はデジタル技術に詳しい人材と連携する。メディアアートなどの分野で活躍するエンジニアの協力の下、短編演劇祭の今夏開催を検討している。演劇は元来アナログ表現。デジタル技術のノウハウは乏しい。異分野の人材との橋渡しで、演劇人が新しい表現に挑戦する機会を用意する。

同劇場は5月下旬「仮想劇場ウイングフィールド」と銘打ち、エイチエムピー・シアターカンパニーの作品を映像配信サイトで上演した。劇場と劇団の映像スタッフが連携。俳優がそれぞれの自宅で演技する姿を合成し、リアルタイムの演技ならではの緊張感をネットでも維持した。

通常公演を上回る視聴者を集め、多くの演劇人から「どうやってつくったのかなど問い合わせや反響があった」(同劇場の橋本匡市)。こうした試みのノウハウを他劇団とも共有し、新たな創作を支援する。

シアターE9京都(京都市)は、劇場空間を使わない作品を支援する新企画「THEATRE E9 Air」を始めた。このほど、公募案から演劇のライブ配信や観客参加型のパフォーマンスなど7作品を選定。第1弾として20、21日に京都の劇団、笑の内閣がテレビ会議システムZoomを使った演劇を配信する。

同劇場の強みは独自の決済システムや劇場自体に多くのファンを持っていること。「Air」ではこうしたファンらに向けた宣伝や制作支援などの対価としてチケット代の2割を劇場が受け取る。「アーティストが単独で新しい表現を発表してもなかなか広がらない。E9を介することで様々な人との接点を作れる」と支配人の蔭山陽太は自信を見せる。

芸術監督のあごうさとしは「劇場としては手間ばかり増え、経営的なメリットはない」と笑う。それでも新たな企画を立ち上げたのは、従来と異なるアプローチが必要な今こそ「舞台芸術の幅が広がっていくのでは」との思いがあるからだ。

「無観客の舞台で演劇は成立するのか」「映像配信は演劇といえるのか」。コロナ禍によって演劇の本質を巡る様々な問いが演劇人に投げかけられた。困難は続くが「従来のような公演が難しいのだから(従来の舞台と客席の関係にこだわらず)劇場を自由な発想で使ってもらいたい」とウイングフィールドの橋本は言う。厳しい経営環境に直面する小劇場こそが新たな表現を生み出す場となる。(佐藤洋輔)

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