中国のAIスタートアップ投資、後期企業にシフト

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コラム(テクノロジー)
2020/6/22 2:00
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 新型コロナウイルスの感染問題を受け、これまで世界中から投資マネーを集めてきた中国の人工知能(AI)スタートアップの資金調達にも影響が出ている。2020年1~3月期の調達件数が3年ぶりの低水準になる一方、投資の中心が成長後期の企業へシフトする傾向がみられた。また、過去5年間のAIの分野別の調達額を分析したところ、「音声・言語・映像分析」関連のAIスタートアップが最も金額が多かった。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

2020年1~3月期の中国のAIスタートアップによる資金調達件数は減少した。新型コロナウイルスの流行がピークに達し、投資の中心がもっと成長後期の段階にある企業に移ったことが響いた。

ウイルスの影響で市場は乱高下したが、中国は新型コロナと闘うためにAIインフラに多額の資金を投じた。アリババ集団や百度(バイドゥ)などのテクノロジー大手は分析ツールやウイルス解析アルゴリズムに一段と磨きをかけ、AIを使った顔認識などを手がけるセンスタイム(香港)は非接触式の体温検知ソフトや、マスクを着用したままでも識別できる生体認証システムを展開した。

中国、新型コロナ対策でAIインフラに投資

中国、新型コロナ対策でAIインフラに投資

今回のリポートでは、中国のAIにおける資金調達トレンド、投資家の注目分野、資金調達額が最も多いAIスタートアップを取り上げる。

■資金調達トレンド

20年1~3月期の中国のAIスタートアップによる資金調達額は前四半期比63%増の5億4500万ドルで、アジアのAI関連の調達額全体の半分近くを占めた。それでもなお、ピーク時の17年7~9月期からは81%減、前年同期比では59%減だった。調達件数は52件で3年ぶりの低水準だった。

調達件数全体に占めるシードステージ(創業間もない段階)のスタートアップの割合は過去最低の13%にとどまり、投資家が後期段階への投資を強化しようとしていることが浮き彫りになった。中期段階のスタートアップによる調達件数も初期段階を上回り、全体の50%を占めた。

20年1~3月期の中国のAIスタートアップによる調達件数は前年同期比31%減
(15年1~3月期から20年1~3月期の中国のAIスタートアップによる資金調達)

20年1~3月期の中国のAIスタートアップによる調達件数は前年同期比31%減
(15年1~3月期から20年1~3月期の中国のAIスタートアップによる資金調達)

■注目分野

過去5年で投資家の関心が最も高かった分野は「音声、自然言語処理(NLP)/自然言語生成(NLG)、コンピュータービジョン(映像から様々な情報を得る技術)」で、調達額は61億ドル、調達件数は163件だった。2位は「金融・保険」の13億ドル、88件、3位は「医療」の5億8500万ドル、102件だった。

投資家の関心が最も高いのは「音声、自然言語処理、コンピュータービジョン」
(15年1~3月期から20年1~3月期に中国で最も調達額が多かったAIの3分野)

投資家の関心が最も高いのは「音声、自然言語処理、コンピュータービジョン」
(15年1~3月期から20年1~3月期に中国で最も調達額が多かったAIの3分野)

米国では最近、プライバシーへの懸念から中国の顔認証・音声認識スタートアップに一段と厳しい視線が注がれている。米政府は19年10月、中国の主要AIスタートアップ数社を安全保障上の問題がある企業を並べた「エンティティー・リスト」に加えた。これにより、各社は米政府の許可を受けなければ米企業から技術を購入できなくなった。

ところが、中国では生体認証を手がけるAIスタートアップに商機が到来している。センスタイムは生体認証システムに加え、4月にはAIを活用したフィンテック分野の製品やサービスを開発するため、中国人民銀行(中央銀行)と提携した。人民銀はデジタル人民元を発行する方針を表明している。

■調達額が最も多いAIスタートアップ

調達額が最も多いAIスタートアップは、動画投稿アプリ「ティックトック(TikTok)」の親会社である北京字節跳動科技(バイトダンス、企業価値1400億ドル)で、累積調達額は31億ドルだった。2位はセンスタイムの26億ドル、3位は18年9月に新規株式公開(IPO)を果たした電気自動車(EV)メーカー、上海蔚来汽車(NIO)の22億ドルだった(IPO直前の資金調達を含む)。

累積調達額トップは企業価値1400億ドルのバイトダンス
(調達額ベースでの中国のスタートアップ上位10社、20年4月20日時点)

累積調達額トップは企業価値1400億ドルのバイトダンス
(調達額ベースでの中国のスタートアップ上位10社、20年4月20日時点)

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