造船再編、艦艇でも機運 造船工業会会長「集約必要」

2020/6/17 19:50
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造船業界で再編機運が高まってきた。三菱重工業三井E&Sホールディングス(HD)の艦艇部門を買収する協議を始めた。日本造船工業会(東京・港)の斎藤保会長(IHI取締役)は17日の定例記者会見で、国内首位の今治造船や艦艇に強い三菱重工などが主導する合従連衡について「安定操業のため集約が必要というのは1つの事実だ」と述べた。

造船業界では再編が相次いでいる(日本造船工業会の斎藤会長)

三井E&Sホールディングスは特殊な艦艇に強みを持つ(岡山県玉野市の工場)

国内で護衛艦などの艦艇を手掛けるのは三菱重工業と三井E&Sに加えて川崎重工業、ジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市)の計4社。買収が実現すれば3社に集約される。造船業界での大規模な再編は、JFEホールディングスとIHIの造船事業が統合して生まれたJMUの設立以来となる。

三菱重工業と三井E&Sは年内をめどに最終契約を結び、2021年10月末に買収作業を完了する予定。買収額などの詳細は今後詰める。三井E&Sの唯一の艦艇の生産拠点である玉野艦船工場(岡山県玉野市)は買収後も建造や修繕などの事業を継続する方針。

斎藤会長は「海外マーケットを取り込むのは当然だ」とも語り、政府が進める艦艇の輸出を後押しする考えを示した。

三菱重工は戦車やイージス艦、戦闘機など自衛隊の防衛装備品を手掛け、防衛関連で約4000億円の売上高がある。三井E&Sの艦艇を含む船舶事業の売上高は1151億円。補給艦や海洋観測艦など「戦闘艦」以外の建造や修理に強みを持つのが特徴だ。18年に護衛艦を共同受注したことがきっかけで、今回の再編協議につながった。

政府の20年度の防衛予算は過去最高の5兆3000億円となった。しかし防衛省の入札方法の変更などで艦艇の受注環境はより厳しくなっている。艦艇の入札では赤字になった案件も出ており「最終的に国内の艦艇事業は1社に集約される可能性もある」との見方まで出ている。

造船事業で艦艇と双璧の関係にある商船は船主の発注意欲が鈍り、1~4月の月平均での受注は「ここ数年で最も低い」(斎藤会長)水準だったという。安定操業に必要とされる2年の受注残を下回っている。

背景にあるのは中国や韓国で相次ぐ巨大造船会社の誕生や、韓国政府の造船会社に対する巨額の資金援助だ。斎藤会長は「不公正が起こるとマーケットがゆがむため、しっかりただしていきたい」と述べた。

日本側は韓国を相手取って世界貿易機関(WTO)に提訴しているが、解決策が見つかるかは不透明だ。長期化すれば日本の造船会社にも痛手となる。実際に韓国や中国の造船大手はカタールで大型案件を受注し、日本勢は出遅れている。

日本は2050年に船舶からの温暖化ガス排出量を08年と比べて半減する環境規制などを背景に、自動運航船や環境関連などの技術を磨いて造船業を維持する構えだ。今後は海運会社と造船会社が一体となった新たなビジネスモデルが普及する可能性もあるという。

最近では国内の海運会社が国内の造船会社に発注しているとは限らない。舶用機器メーカーなど造船所の地元に立地する企業群との関係が薄まっているとの指摘もある。日本の造船各社は再編による競争力の向上に加え、取引先との連携強化や新たな事業形態を生み出すことにも知恵を絞る必要がある。

(西岡杏)

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