投資初心者3800人、コロナでも「スタート順調」6割
3万5000人調査で見えた個人投資家の今(4)

今回の調査では、今年から投資を始めた人(投資歴6カ月未満で昨年投資実績がない人)が、回答者全体の1割に相当する3777人に上った。本連載の初回で紹介したように、世代では30代が35.2%で最も多かった。20歳未満(1.3%)、20代(20.1%)と合わせると、30代以下の若い層が56.6%と過半を占めた。
今年に投資デビューを果たした回答者たちの多くがコロナショックによる資産価格の暴落で手痛い洗礼を受け、意気消沈しているかと思いきや、予想に反する結果となった。「順調にスタートを切れた」とする回答が6割にも達したのだ。

一方で、暴落で損が出たが、それで「運用の規模を縮小したい」「もうやめたい」と回答した人の合計は1%に満たなかった。残りは「慌てず運用を続けたい」「これからの投資で挽回したい」「もっと積極的に投資していきたい」と前向きな姿勢を示した。グラフにはないが、世代別の内訳を見ると、若い世代ほど順調にスタートを切った人が多く、投資により積極的に取り組んでいる。
ビギナーが抱く4つの典型的な悩み
もっとも、新しいことを始めると、何かにつまずいて思い悩むのが常。今年投資を始めたビギナーたちに、株式投資で抱えている悩みを聞いたところ、初心者ならではの典型的な悩みが浮かび上がってきた。

最も多かったのは、「銘柄の選び方が分からない」という悩みだ。回答者の実に4割がこの悩みを挙げた。銘柄の選び方が分からないから適当に選ぶ。そうして購入した銘柄の価格が下落。それで損を被ったり、塩漬けにしたりしているという声が数多く寄せられた。

2番目に多かった悩みは、「勉強の仕方が分からない」。勉強の仕方が分からないから、知識が身に付かず、投資法や売買のルールも定まらない。その結果、銘柄の選定や売買でミスをして、満足のいく利益を出せなかったり、損失を重ねたりしている状況を嘆く声が散見された。

僅差で3番目に挙がった悩みは、「自分に向いている投資法が分からない」。手掛けている投資法が自分に合っていると実感できず、自信も持てないから、的確な判断を下せず、適切な対応も取れない。そのために成果が出ないまま失敗を続ける悪循環に陥っている。回答に記された20年投資デビュー組の意見からは、こんな苦境も浮き彫りになった。

4番目に多かった悩みは、「周囲に株式投資について話せる相手がいない」。悩みを抱えても、それを打ち明けて相談できる相手がいない。その状況がまたストレスになっている。こうした人がビギナー回答者の3割近くもいた。

投資の初心者が直面する上記の悩みは、どう解消したらいいのだろうか。日経マネーでは、株式投資で1億円を超える資産を築いたスゴ腕の億万投資家たちに取材。今回の個人投資家調査の結果を詳報している20年8月号(発売中)の巻頭特集の中で、彼らから聞いた実体験に基づくアドバイスを紹介している。
ユーチューブの影響が増す
最後に、投資を始めるに当たって影響を受けたメディアや著名人を聞いた結果を紹介しよう。本を挙げた回答が最も多く、16.4%に上った。

具体的な書名で最も多く挙がったのは、米国の投資家ロバート・キヨサキさんのロングセラー『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)。その後には、経済評論家の山崎元さんの著書など、ここ数年にベストセラーになった投資本や投資をテーマにした漫画が名を連ねた。

影響力の点で本に次いで2番目に回答が多かったのが、人気ユーチューバー。動画共有サイトの「ユーチューブ」を視聴する人が大きく増え、ユーチューバーたちの情報発信力が強まっている世情を反映した結果だ。

影響を受けた専門家では、前出の山崎さんや米著名投資家のウォーレン・バフェットさん、元プロ棋士で優待投資家として人気の桐谷広人さんが上位に入った。
一方で意外な結果もあった。これまではツイッターの投資に与える影響力が指摘されてきたが、今回ツイッターを挙げた人は3%にとどまった。
(中野目純一)
個人投資家の運用成績や投資先などを調べるために日経マネーが2007年から毎年実施しているインターネット調査。今年で14回目。調査実施は日経BPコンサルティング。2020年は4月15日~5月6日に実施。有効回答数3万4973。