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リニア静岡着工、なぜ6月末が期限? 4工程に難関

リニア中央新幹線の静岡工区をめぐる問題で、JR東海の金子慎社長と静岡県の川勝平太知事は6月中にトップ会談に臨む見通しだ。トンネル工事に伴う水資源の影響を憂慮する県に対し、JRは月内に着工できないと「2027年のリニア開業は難しい」という。背景には工区のトンネル掘削が4つの工程に分かれ長期にわたる事情がある。

「順調に進んでも、27年の開業にギリギリの工程」。JR東海の金子社長は10日の定例記者会見で改めてこう強調した。開業から逆算して7年間の工期を精緻に見積もるのは、それだけ今回のトンネル工事が難しいからだ。

静岡工区を含む南アルプストンネルは全長約25キロ。山岳トンネルでは世界有数の長さで、品川―名古屋間(286キロ)のリニア工区で屈指の難工事とされる。地表面からの深さは最大約1400メートルに達する。

工程が大きく4つと長い道のりなのが、県とJRの交渉をより複雑にしている。トンネルの掘削に向け、まずは準備工事にあたる作業基地(ヤード)の整備をする。第2段階から本体工事として2カ所の非常口を設置。さらに地質などの調査のため、本坑に並行して掘る先進坑に取りかかり、第4段階としてリニアが通る本坑の着工に移る。

この間、工事で生じた湧水を川へ戻す導水路トンネルも建設する。

JR東海は静岡工区について、非常口の設置だけでも「約3年かかる」(金子社長)とみている。4つの工程を計7年で終わらせるには、残り約4年でトンネルの本坑の掘削などを終える必要がある。切迫感が強いスケジュールだ。

南アルプストンネルは3つの工区のうち、長野と山梨は既に着工から4年前後がたち先進坑(こう)や本坑の段階に移りつつある。静岡工区の遅れが際立つ。

仮に27年の開業延期を断念した場合、37年を目指す名古屋―大阪間の開業時期にも遅れが生じかねない。約9兆円を見込む総工費がさらに膨らむ可能性がある。うち3兆円は政府から借り入れた財政投融資でまかなっている。足元は新型コロナウイルス関連の大型補正予算で政府の財政は一段と逼迫している。

JR東海もコロナ禍の出張・観光自粛で、稼ぎ頭の東海道新幹線は4~5月の利用者が9割減少。経済活動は徐々に正常化しているが、目先の収支回復にはなお時間がかかるとみられる。

JR東海と静岡県のトップ会談は「6月24~26日が有力」との見方がある。18日から月末まで断続的に県議会が予定されている。JR東海は23日に株主総会を開くことから、月内でお互いの「空白日程」は24~26日しかないとの指摘につながっている。

会談では準備工事の再開許可を一部でも取り付けられるかが焦点になる。16日、静岡県と大井川流域の10市町首長が開いた会議では「準備工事と本体工事は一体」などとして、工事の再開を認めない方針で一致した。土俵際の駆け引きが続いている。(野口和弘)

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