「財政ファイナンスではない」日銀総裁会見要旨

2020/6/16 23:00
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金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日、日銀本店)=代表撮影

金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(16日、日銀本店)=代表撮影

16日の金融政策決定会合後に記者会見した日銀の黒田東彦総裁の会見要旨は以下の通り。

問 会合の決定内容について。

答 長短金利操作のもとでの市場調節方針について現状維持を決定した。長期国債以外の資産の買い入れ方針に関しても現状維持を決定した。上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)は当面、年約12兆円、年約1800億円に相当する増加ペースを上限に積極的な買い入れを行う。

我が国の景気の現状は、新型コロナウイルスの影響により極めて厳しい状態にある。輸出や生産は大幅に減少している。企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は増勢の鈍化が明確。雇用所得環境に弱めの動きが見られ、個人消費は飲食、宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。当面は厳しい状態が続き、感染症の影響が収束していけば経済は改善していく。

問 資金繰り支援特別プログラムの枠を75兆円から110兆円に拡大した。対策は十分か。

答 政府の第2次補正予算で無利子・無担保融資が28兆円拡張されたことなどで110兆円に拡大した。資金繰り支援のため現在のプログラムをしっかり維持する。

問 3月以降の一連の政策の効果は。

答 企業の資金繰りは悪化しているが、資金調達環境は緩和的な状況が維持されている。一連の政策は新型コロナ対応の資金繰り支援特別プログラム、円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、ETFやREITの積極的な買い入れの3つの柱からなる。新しい方策が必要になる可能性もあり、状況に応じて柔軟に考えていく。

問 新型コロナ特別オペが金融機関の貸し出し態度に与える効果は。

答 感触からいうと相当効果がある。対象を中小企業に特定しておらず、貸し出しを増やした金融機関はその分の当座預金に0.1%の付利をする。かなりメリットがあり、金融機関の融資も増えている。

問 20兆円のCP・社債の買い入れ期限は21年3月末としている。

答 CPや社債は(発行が)大幅に増加した後、現在も高水準で発行が続いている。金利が現在のような低位な水準で安定していることは必要だと思う。(購入枠の期限は)必要があればいくらでも延ばせる。

問 物価安定の目標に向け、金融政策の枠組みを点検する考えは。

答 当面、物価安定の目標にむけたモメンタム(勢い)が失われた状態にあるのは事実だ。物価上昇率もマイナスになると見ているが、経済の改善とともにプラスに転じ徐々に上昇率を高めていくと考えられる。2%の物価安定目標は堅持する。経済が持続的な成長路線に戻り物価上昇率が次第に高まっていく状況を実現し、物価安定目標を追求していく。

問 現在の金融システムへの見方は。

答 金融機関は企業の資金繰り支援を非常に積極的に行っており、高く評価すべきだ。金融機関は資本、流動性の両面で相応に強いストレス耐性を備えており、金融システム全体で問題は生じていない。感染症拡大の影響が想定以上に長引いた場合は、金融機関への影響をよく注視していかなければならない。

問 足元の株高は実体経済を反映していないのではないか。

答 市場参加者の多くが、経済活動が再開し先行きの企業収益が改善することを予想しているのだろう。ただ引き続き内外経済の不透明感は強く株式市場ではボラティリティー(変動率)が高めで推移するなど神経質な状態が続いている。

問 日銀の国債保有比率が高まっているが、財政赤字を中銀が埋める「財政ファイナンス」とならないのか。

答 日銀を含めた中銀が国債を大量に買い入れているのは、あくまでも金利を低位で安定させる金融政策のためで、財政ファイナンスではない。(金融政策と財政政策が)協調・連携して行われていることは事実だが、政府や日銀を含めた中銀が独立の立場で政策を決めて実行することになんら矛盾しない。

問 格付け会社が日本国債の見通しを引き下げた。金融政策への影響は。

答 国債が大量に発行され他の政策が変わらなければ、金利は上がっていく。しかし各国とも金利を低位安定させている限り、国債が増えても金利は上がらない。日本にせよ欧米にせよ、格付けで金利が上がっていくという状況にはない。

問 新型コロナの感染再拡大による経済への影響は。

答 (世界)全体としては再拡大ということにはなっていないと思う。一番大きな問題は一部の新興国、途上国で感染の拡大が止まらないことだ。治療薬やワクチンが広く利用可能になることが絶対的に必要だ。

問 米連邦準備理事会(FRB)は少なくとも22年度までゼロ金利を続ける。先に日銀が利上げに踏み切るのは難しいか。

答 正直そうだと思う。あまり断定的なことは言いたくないが、21年度であれ22年度であれ、金利を引き上げる状況からはなかなか遠い気がする。

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