「角取れた」ハリアー、全方位戦略でSUV戦国勝ち抜く

2020/6/17 13:30
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トヨタ自動車は17日、主力SUV(多目的スポーツ車)のハリアーを7年ぶりに全面改良し発売した。極端な凹凸を抑え、角の取れた滑らかな曲線で外装を仕上げた。1997年のデビュー以来、ハリアーだけに使われてきた前方の鷹(タカ)のエンブレムも廃止した。個性を抑える一方、広い顧客層を視野に入れる全方位戦略で「SUV戦国時代」を勝ち抜く。

ハリアーの全面改良は3回目となる。97年に発売し、国内と北米で都市型SUVの市場を開拓した。2013年に発売した3代目ハリアーからは国内専用モデルとしていた。今回の4代目は米国でも「ヴェンザ」の名前で発売する。国内での価格は299万円とした。ガソリンモデルとハイブリッドモデルを用意する。

■SUV淘汰の時代

外観が角張った印象のRAV4とは対照的に、滑らかな曲面で構成した。スポーツカーの代表的なかたちの「クーペ」に近い印象とした。舗装されていないオフロードを力強く走るSUVとは異なり、上品な質感とした。RVA4やランドクルーザーなど同社のSUVのなかでも埋没しないようにしたという。

新車市場はSUV戦国時代の様相だ。2019年の国内新車販売は3年前と比べて微減の519万台だったが、SUVは1割以上伸びた。欧米でもセダン系からSUV系への需要の移行は顕著で、ここ数年はSUVの商品力の強さが新車販売を左右する。

国内でも車両の大きさを問わずSUVの勢いが強い。小型車ではダイハツ工業の「ロッキー」(トヨタ名・ライズ)が好調なほか、スズキのジムニーも18年の全面改良以来、受注残を抱え続ける人気だ。独ポルシェのみならず、伊ランボルギーニ、マセラティなどスポーツカーの代表格の超高級車もSUVを投入するなど、価格帯問わずSUVが街中を走る。

これまでは、既存ブランドでSUVを出せば引き合いがあったが、今後はSUVの淘汰が始まる。ハリアーは都市型SUVとして、洗練されたイメージを再構築する。内装もパノラマルーフに調光機能を初搭載した。鮮明に空が見える状態のほか、障子のように外はみえないもののやわらかな光が通るように外光を調整でき、上質な室内空間を演出するという。

■エンブレムを廃止

SUV戦国時代にもかかわらず捨てたのが、個性をアピールしてきた鷹のエンブレムだ。タカ科の「チュウヒ」を模し、英名から車名の由来ともなった。一般的に自動車の前方のエンブレムはメーカーのブランドが付けられるが、トヨタは個性ある車種には特別なエンブレムを与えてきた。

トヨタでいうと、旗艦セダン「クラウン」の王冠エンブレムや、皇室でもつかわれる高級セダン「センチュリー」の鳳凰(ほうおう)などが有名だ。このほか、現行車では、大型ミニバンの「アルファード」、「ヴェルファイア」、「カローラ」や「ノア」でも個別のエンブレムが使われている。

トヨタは5月から国内に4つある販売チャネルですべての車種の併売を始めた。従来、ハリアーは販売チャネルのひとつ、トヨペット店の売れ筋だった。トヨタは国内自動車大手で最後まで車種別の販売チャネルを維持し、チャネルごとの際立つ製品を投入してきた。

ハリアーは、全車種併売後、全面改良の新型モデルとして投入される初めての車種になる。「従来の販売モデルを一新する意味でもエンブレムをなくした」。あるトヨタ関係者はエンブレム廃止で個性を抑えれば、併売と相まってより多くの顧客に受け入れられる可能性を示唆する。今後、ヴェルファイアやノアなどでもエンブレムは消滅していく見通しだ。

■車種併売の成否占う

細部まで個別車種の個性にこだわり、車種間の競争を促して市場を活性化する――。国内の新車販売台数が右肩上がりのころに重宝された販売手法だ。時代は変わり、国内市場は縮小に転じた。トヨタも国内販売車種を大幅に絞る方針を示している。個別のエンブレムで残るのはクラウン、センチュリー、カローラの3つのみとする方向だ。

個性を削り、角が取れて「丸くなった」ハリアーが幅広い支持を本当に得ることができるのか。ハリアーの売れ行きは今後の国内市場や全車種併売戦略の成否を占う重要な試金石となりそうだ。

(湯沢維久)

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