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中洲の屋台、憩いの灯消さぬ 感染対策に店主ら一丸

緊急事態宣言解除から1カ月

客足が戻り始めた中洲の屋台街(福岡市博多区)

「お店決まっとると?」「席空いとるけん、寄っていかん?」。9日、空が赤く染まった福岡市・中洲の屋台街に明かりがともり始めた。この日は串焼きや博多ラーメンなどの屋台9軒が店を開き、店主らが仕事帰りの会社員らに威勢良く呼び込みをかけていた。

「日を追うごとに人出は回復している」。おでんやもつ料理を扱う「中洲十番」の店主、田中博臣さん(47)は慣れた手つきで鍋に火をかけながら笑顔を見せた。

5月14日に福岡県の緊急事態宣言が解除された2日後、約1カ月ぶりに店を再開。当初は1日2~3人だった客も、屋台街全体で100~150人程度まで戻ってきた。田中さんの店はこの日も午後7時台には6人ほどの客が席を埋め、愛知県からの出張者の姿もあった。

営業再開後、店ではカウンターに透明なアクリル板と消毒液を置き、客同士の間隔を空けるため、椅子も15脚から8脚ほどに減らした。カウンターに置きっぱなしだった調味料や食器類も料理の提供に合わせて出すように見直した。

客席の近さや屋外の開放感から出会ってばかりの客同士が意気投合することも多いが、知らない人との料理や飲み物のシェアや握手は禁止に。田中さんは「新型コロナウイルスの影響で屋台は何もできなくなった。だからこそ対策を徹底しないと」と気を引き締めた。

感染が拡大する前、屋台街は外国人客や出張客で大変なにぎわいだった。一帯に出店する19軒の大半が連日満席。1日100人以上の客が入ることも珍しくなく、空席を待つ客が外で列を作り、入店時間を制限する店もあった。その活気が一変した。特有の営業形態も足かせになった。

屋台は、福岡市の条例で午後5時以降しか出店できない。4月14日には県の時短営業要請で、酒類の提供を午後7時、営業を午後8時までに短縮するよう求められた。店によっては開店準備に1時間以上かかり、要請に従えば営業は困難だ。屋台はランチ営業ができないうえ、食品衛生上の観点から県の条例で一般の居酒屋のようなテークアウトや宅配が認められておらず、収入は途絶えた。

「ほかの業界も厳しい状況なのは分かるが、屋台への支援も必要だ」。中洲などの約40店の屋台が加盟する「博多移動飲食業組合」理事も務める田中さんは福岡市役所に何度も足を運び、担当者に窮状を訴えた。市も独自の店舗家賃支援制度に「屋台」の項目を設け、台車の駐車場代や道路の占用料、仕込み場所の賃料が家賃にあたると認めた。

「同業者が足並みをそろえて感染対策に協力する姿勢も大切だ」と考え、要請後も深夜まで営業を続けていた店主らにも休業への協力を呼びかけた。

収入が途絶えた店主を支えようと、6月末までインターネットで寄付を募る「クラウドファンディング」も開始。目標金額を300万円に設定し、集まった資金を各店に均等配分する計画だ。「福岡に帰ったら寄るよ」「屋台の明かりを消さないで」。寄付金とともに地元出身者や常連客から応援のメッセージも寄せられた。

それでも新型コロナ拡大前の繁忙期と比べると客足は鈍く、今も半分近い店が休業したままだ。中洲再生への道は険しいが、田中さんは「売り上げは減ったけど、今は地元の人たちがゆっくり過ごせるようになった。昔ながらの屋台の魅力を伝える努力を続けていきたい」と前を向いた。(北本匠が担当しました)

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