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NATOの亀裂一段と トランプ氏、駐独米軍削減計画

メルケル独首相(左)は米国での対面でのG7サミットに出席しない意向を示し、トランプ米大統領が激高したとされる=AP

【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領が15日表明したドイツ駐留米軍の大幅削減は北大西洋条約機構(NATO)の亀裂を一段と深めるものだ。11月の大統領選に向けて安全保障当局者の十分な議論を経ず、欧州の同盟国に根回した形跡も乏しい。米国の一方的な決定はNATO分断を図るロシアを利する。

「ドイツが金を払わないのに米国がなぜ(駐留を)続ける必要があるのか」。トランプ氏は15日、ドイツが軍事費支出を国内総生産(GDP)の2%以上に増やすNATOの目標に達していないと非難し、ドイツに駐留する米軍の縮小計画を明らかにした。規模を2万5000人と現在から3割程度減らす。欧州ではドイツに最も多くの米兵が駐留し、東欧や中東での戦闘に備えた後方支援の役割も担ってきた。

トランプ氏はこれまでも同盟国の軍事負担不足を理由に米軍駐留の縮小をちらつかせてきたが、具体的な計画に踏み込むのは今回が初めてとみられる。

6月に米国で開催を計画していた対面での主要7カ国首脳会議(G7サミット)にはメルケル独首相が欠席する意向を示し、トランプ氏が激高したとされる。ドイツのロシア産ガスの購入や対独貿易赤字にもトランプ氏は不満を漏らしてきた。米国防総省でNATOを担当したイアン・ブルゼズィンスキー氏は米軍削減に関し「メルケル氏に対する政治的な仕返しのように見える」と指摘する。

NATO関係者は削減計画について「欧州内での再配置の余地があるかを注視している」と指摘する。トランプ氏は2019年夏にポーランドでの米軍駐留を1000人増やすことで合意した。ポーランドは駐留経費の大半を負担するとした。十分な負担をする国とそうでない国でメリハリを利かせるのがトランプ流だ。同関係者は「駐独削減を受けて欧州内で米軍誘致を目指す国が出る可能性がある」とみる。

仮に米軍の一部が欧州にとどまっても共同防衛を軸にしたNATO結束の揺らぎは2つの点で隠せない。

一つがドイツに十分な根回しをした形跡が乏しいことだ。6月上旬に米メディアが駐独米軍の削減計画を報じると、ドイツではメルケル氏の側近が「受け入れがたい」などと米国を公然と批判した。元NATO高官は「この規模の削減計画であればNATO加盟国の了解を事前に得るのは当然だ」と指摘する。

2つ目は削減計画が11月の米大統領選を意識したトランプ氏の成果づくりである点だ。削減計画を主導したとされるグレネル前駐独米大使はトランプ氏の最側近として知られ、大統領選に向けてトランプ陣営入りも噂される。グレネル氏は独メディアのインタビューで、トランプ氏に先立って削減計画の存在を認めた。米メディアによると、駐独米軍の縮小は国防総省高官にとってもサプライズだったという。

米国の歴代政権も大統領再選がかかる選挙直前に欧州米軍の削減を表明してきた。ブッシュ(子)政権は大統領選を3カ月前に控えた04年8月に削減を表明。オバマ前大統領も12年に「アジアシフト」を掲げて欧州駐留を減らす方針を表明した。ともに大統領選に向けて米国の負担削減をアピールすることが狙いの一つだったとされる。

ブルゼズィンスキー氏は米軍縮小がロシアに付けいる隙を生んだと指摘する。ロシアは08年にジョージア、14年にウクライナ領クリミア半島に侵攻した。同氏は「ロシアは米軍縮小を受けて米国の欧州安保へのコミットメントが下がったとみなした」とみる。ロシアはいまや地中海でも影響力を広げる構えを見せる。ロシア外務省の報道官は駐独米軍の縮小の報道について「歓迎する」と語っていた。

米国の駐独規模の縮小は多くの米軍を抱える日本や韓国にも大きな衝撃となる。韓国は駐留経費をめぐる交渉が長期化し、日本はこれから交渉が本格化するからだ。中国への対抗を最優先課題にするトランプ米政権が日韓で駐留規模を減らす可能性は低いとの見方もあるが、大統領選を控えたトランプ氏が一方的に削減に踏み切るリスクは捨てきれない。

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