危険な「アポ電」、詐欺・強盗のダブル被害も

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コラム(社会・くらし)
生活
2020/6/21 2:00
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特殊詐欺の被害に遭った1カ月後、今度は強盗に入られた――。東京都の高齢女性がこんな災難に見舞われた。「あの家に大金がある」との情報が複数の犯罪グループで共有され、立て続けに狙われたとみられる。警察は資産情報の使い回しによる、こうした多重被害の増加を警戒している。

4月18日未明、80代女性が1人で暮らす東京都練馬区の一軒家の掃き出し窓から2人組の男が侵入した。男らは寝ていた女性の口を押さえ金品を奪おうとした。女性が抵抗したため何も取らずに逃走し、女性にもけがはなかった。しかし捜査幹部は「懸念が現実になってしまった」と悔やむ。

この家には3月、おいをかたる特殊詐欺の電話があった。女性は現金300万円をだまし取られており、犯罪グループに電話で資産情報を聞き出されていたとみられる。

その後、女性宅とは無関係の強盗事件で逮捕された男が調べに「『あの家には1千万円ある。300万円は既に取ったから、あと700万円あるはずだ』という情報があった」と明かし、犯罪グループの間で女性の資産情報が出回っている疑いが浮上した。

警視庁は女性宅に強盗犯が送り込まれる危険があるとみて、女性に一時、避難するように勧めた。女性が応じず、自宅にとどまったため、付近に複数の監視カメラを設置するなどして警戒を強めた。女性宅への侵入を防ぐことはできなかったが、カメラの映像から強盗未遂などの容疑で男2人を逮捕し、情報の伝達ルートを調べている。

近年、特殊詐欺とともに資産情報を聞き出す「アポ電(アポイント電話)」を経た強盗の被害が目立つ。実行犯はSNS(交流サイト)で「闇バイト」「タタキ(強盗の隠語)」などのハッシュタグ(検索目印)で集められ、頻繁に離散する。このため、詐欺と強盗の上部組織の実態や関係は解明されていない。

こうした中で捜査機関が警戒するのが、特殊詐欺やアポ電で集められた資産や家族構成などの情報の使い回しの増加だ。特殊詐欺の電話を途中で切って被害を防げたとしても、聞き出された資産情報などを基にして、さらに凶悪な強盗事件に遭う恐れが高まっている。

東京都小平市では2月、80代女性宅に男女が押し入り、現金300万円を奪う事件があった。捜査関係者によると女性は約10年前、息子を装った特殊詐欺の電話に応対したことがあり、詐欺と見破ったものの、会話の中で資産情報を漏らした可能性もあるという。

警察庁によると、アポ電は2019年4月~12月に全国で9万1798件確認された。最多は東京都の2万5558件で、埼玉9242件、千葉7553件と続く。アポ電をきっかけとした強盗事件は17年1件、18年2件、19年11件と増えており、20年は6月12日時点で7件起きている。

防犯対策に詳しい立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「家の固定電話を留守電設定にすることや、自分のことを話さないことがまず重要だ」と指摘。資産情報などを明かしてしまった恐れがある場合は「警察に相談した上で、現金を金融機関に預けたり、家に防犯カメラを設置したりするといった自衛策を進めてほしい」と話した。

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