米、同盟強化への影響懸念 イージス計画停止
【ワシントン=永沢毅】米政府は日本の地上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画停止に困惑している。政府当局者は「日本に理由を聞いてほしい」と繰り返し、不快感を示した。北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威は一段と増しており、日米同盟やアジア戦略への影響を懸念する声もある。

米ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員は日本政府の今回の決定に「同盟関係に良い影響を与えるとは思えない」と語った。日本政府はイージス・アショアの配備を北朝鮮の脅威への対策と位置づけてきた。日本も射程に入るミサイル実験を繰り返し、精度向上をはかる北朝鮮に対処する必要性はかつてなく高まっている。
米国は在日米軍基地もその脅威にさらされているとの危機感が強い。日本に早期のプロセス再開や、それがかなわない場合には代替措置を講じるよう求める可能性がある。
米国には対中抑止の観点でも計画の停止は打撃となる。一義的には北朝鮮への対処が配備の理由だが、イージス・アショアが中国の軍拡を意識したものであるのは日米の安全保障関係者には周知の事実だ。
米国はミサイル配備を強化している中国への対抗策として、地上配備型の中距離ミサイルを新たにアジアに配備する方針を固めている。その候補先として日本も浮上していたが、地元自治体の理解が得られなければスムーズに進まない恐れがある。米国のアジア戦略に大きな支障を来すことになりかねない。
防衛装備品の対日輸出を重視しているトランプ大統領が、一段と圧力を強める展開もあり得る。米国の見積もりでは、今回の売却額は関連費用も含めて2基で21億5000万ドル(約2300億円)にのぼる巨額案件だった。
日本が先に100機以上のF35戦闘機の追加購入の決定を余儀なくされたのも、トランプ氏からの強い要請があったからにほかならない。今回の停止は「在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を巡る交渉で日本の立場を弱めかねない」(ホーナン氏)とみる向きも浮上している。