三菱航空機、体制の大幅縮小を発表 指揮系統も見直し

2020/6/15 18:58
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スペースジェットの開発現場

スペースジェットの開発現場

三菱重工業傘下の三菱航空機(愛知県豊山町)は15日、ジェット旅客機「スペースジェット」の開発体制を大幅に縮小すると正式発表した。国内外で2千人いる同社の従業員を半分程度に減らすことなどが柱だ。カナダの航空機メーカー出身の開発責任者も退任する。度重なる開発計画の遅れや事業環境悪化を受けて体制を縮小するが、事業の継続には暗雲が漂う。

国内の1600人を含む、グループの従業員を半分程度にするほか、設計や営業を行う欧米の拠点を閉鎖。従業員は今後、他の事業部門などに配置転換する。

航空機の開発をとりまとめる運営体制も大きく見直す。最高開発責任者のアレックス・ベラミー氏が6月末で退任。米国で型式証明などの取得に必要な試験拠点の副所長を務める川口泰彦氏が7月1日付でチーフ・エンジニアに就く。

退任する開発責任者のアレックス・ベラミー氏

退任する開発責任者のアレックス・ベラミー氏

退任するベラミー氏はカナダのボンバルディアの出身。三菱航空機は開発強化にむけて18年以降、ベラミー氏をトップとする外国人主導の開発体制を敷いたがわずか2年で修正を迫られた格好となる。

背景にあるのは2つの指揮系統が並立し、意思疎通がスムーズにいかず、開発の遅れに影響してきたことを改善する狙いだ。

スペースジェット(旧MRJ)が事業化されたのが08年。当時の開発の中心はボーイングなど向けの部品を納める名古屋航空宇宙システム製作所(名古屋市)のメンバーだった。しかし、工場側の縄張り意識の強さも背景に本社と開発現場の溝が拡大。そこで18年に宮永俊一会長(当時は社長)がベラミー氏をトップとする体制に見直した。

しかし、外国人主体の推進部隊とは別に19年に就任した泉沢清次社長を中心とする航空機の事業部も残り、結果的に2つの指揮系統となった。外国人技術者は300人程度まで増えたが、日本人開発者との情報共有の不足も露呈するようになった。宮永氏を後ろ盾にする三菱航空機側と、泉沢社長の事業部側は納入延期を巡る認識でもすれ違い、混乱が生じた。

新たに就任する川口氏は技術責任者として、米飛行試験所で現場を統括してきた。「穏健派」と称され、組織融和を進めたい意図も垣間見える。

三菱重工業は21年3月期のスペースジェットの開発費を前期比半減の約600億円に減らすと5月に発表。スペースジェットの納入はこれまで設計変更などが相次いだため6度延期し、現在は21年度以降としている。90席クラスの量産を停止するとともに、北米向けに納入を計画する70席クラスの開発検討も中断した。

足元ではコロナ禍で事業そのものの先行きが見通せない。顧客である航空業界は世界中で旅客需要が蒸発し、収益が大きく悪化する。スペースジェットのこれまでの開発に投じた費用は1兆円近く。巨額の費用を回収するための収益化の時期が遠のく。

「こうした危機下ではトップダウンで意思決定が一本化されない限り、改革は難しいのではないか」。航空業界の関係者は厳しい見方を隠さない。リストラや体制縮小ばかりが打ち出されており、事業の展望は開けていない。中長期的にどういった戦略をとるのが適切かの判断も求められそうだ。

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